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第3幕 第4話 【月影の巫女と次元を穿つ予言】

「魔王か。……悪くない肩書きだな」

私は微かに笑みを浮かべ、

目の前に広がる深緑の地図の上で、

次の防衛線を引く。

王国との因縁の決着はすでについた。

次は、この宇宙の理そのもの、そして

世界と向き合う壮大な戦いが始まるのだ。

レグナはその背中を頼もしく預け、

我が帝国の次なる進軍の号令を待っていた。

我がアルカディア帝国の開拓の手は、

深緑の超次元から

さらに高次の領域へと伸びていた。

星々が幾重にも重なり合い、

物理法則が独自の周期でうねる

この神秘の宙域において、

私たちは次なる統治の基盤を

築き上げつつあった。


「父上、周辺宙域の魔力同化率、

順調に推移しています。

ですが……北西の古い神殿跡から、

不自然な次元干渉波が

観測されています」

皇子レグナが

冷徹な眼差しで宙図を指し示す。

その表情には、かつて私たちが

通り過ぎてきた数々の死地や、

理不尽に満ちた過去のデジャヴュを

乗り越えてきた者特有の

鋭い覇気が宿っていた。

「ほう……異質な干渉波か。

我が帝国の領域に

勝手に波長を合わせる者がいるとはな」

私は玉座から静かに立ち上がり、

深緑の樹々がおおう神殿の奥深くへと

視線を向けた。


かつて私が王国から理不尽に追放され、

「役立たず」とさげすまれながらも

『死の静寂しじま』の荒野で

世界を書き換えたあの日の記憶が、

ふと脳裏を過る。

あの時も、無から万物を生み出す

【全属性変換】の奇跡のかたわらで、

世界は常に不穏ふおんな予兆をはらんでいた。

そして今、

私たちが築いた新たな庭園の片隅で、

また一つ、世界のことわりから外れた存在が

覚醒しようとしていた。


神殿の最奥、

月の光が直接降り注ぐ祭壇の中央に、

一人の少女が横たわっていた。

彼女の肉体は

月の神気と大地のマナを急速に同化させ、

ただの三日月の満ち欠けの間に、

息をむほどに気高い十代の乙女へと

驚異的な成長を遂げていた。

夜の闇をまと漆黒しっこくの髪と、

銀の血脈がける白磁はくじの肌。

そのたたずまいは、

もはや人間の枠を超えた

神秘の化身そのものだった。


だが、その姫の瞳は

常に地上の営みを超越していた。

彼女は

私たちの足音や存在には目もくれず、

夜ごと、天蓋てんがいつらぬ

星々の裂け目を凝視し続けている。

そして、彼女の唇は

奇妙な独り言をつむぐのだった。

「あの虚空の彼方から、

鉄の巨獣の叫びが聞こえる……」

それは誰にも理解し得ない、

狂気とも予言ともつかない

微熱の歌だった。

彼女が発する言葉の端々に、

この多元宇宙の構造を揺るがす

未知のエネルギーが共鳴している。


「父上、あの少女……ただの

魔力暴走によるものではありません。

彼女のまとう神気は、

私たちがこれまでほふってきた

どの次元の魔獣とも異なる、

もっと根源的な

宇宙の胎動そのものです」

レグナが警戒の色を深め、

愛刀のに手をかけた。

その緊張感は、かつて

王国から逃げ延びた残党が隣国で

私を「危険な魔王」と吹聴ふいちょうし始めた頃の

ピリついた空気によく似ていた。


しかし、私は微動だにせず、

ただ静かにその少女へと歩み寄った。

おびえる必要はない、レグナ。

我が帝国の領土において、

異質な力はすべて我が統治の

いしずえ)に過ぎない」

私が少女の肩にそっと手を置く。

その瞬間、

彼女の身体を狂気のようにめぐっていた

月の神気と大地のマナが、

私の【全属性変換】の理によって

一瞬で調律され、

まばゆい黄金のオーラへと

鮮やかに変換されていった。


「あ……これは……私の魂の震えが、

静まっていく……?」

少女は驚愕にその深い瞳を見開き、

気高い姿のまま私の前に深くひざまづいた。

彼女の口からこぼれていた

狂気の歌は消え去り、

代わりにこの星の未来を

正確に指し示す揺るぎない

予言の力へと昇華されたのだ。


こうして、次なる庭園の深部で

また一人の強力な同志が

我が陣営に加わった。

一方で、私たちが

新たな神話を紡ぎ出す裏側では、

かつての旧王国の残党が

さらに遠くの強大な勢力へとすり寄り、

我が

アルカディア帝国を討ち果たすための

不気味な陰謀を巡らせているという

密偵からの報告が届いていた。


「魔王か、あるいは世界の調停者か……。

どのような肩書きであれ、

私の進む道をはばむというのなら、

星々の果てまで焼き尽くすのみだ」

私は地図の上で新たな防衛線を引きながら、

レグナや新しく加わった者たちと共に、

次なる次元の深淵へと静かに視線を向けた。

帝国の拡大は、

まだ始まったばかりに過ぎない。


©[I・G・ε]All Right Leserved.

我がアルカディア帝国の開拓の手が、

高次の深緑領域からさらに

深淵なる宙域へと伸びていく中、

世界の構造そのものを、根底から

揺るがす異常事態が観測された。

それは、私たちがこれまでに征服し、

我が帝国の庭園へと書き換えてきた

どの次元の法則をも超越する、

未知なる来訪者の予兆だった。


明日も、07:20に、投稿します。

よろしくお願いいたします。

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