↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/66

第4話 異界への突入、そして最初の神域

アーロンの圧倒的な号令と、それに呼応する

我が子レグナの初声が、超弩級艦アスガルド

の全システムを突き動かした。

アスガルドの巨大な艦体が轟音とともに

次元の裂け目へと突入し、新たな世界を

べるための侵略の幕が、父子二代の絶対的な

覇道とともに切って落とされたのだった。

次元の裂け目――その向こう側に広がる空間は、

アーロンたちが知る宇宙の物理法則も、魔導の

ことわりも、一切が通用しない「混沌こんとんのスープ」の

ような場所だった。

無数の色彩が渦巻き、星々ではなく概念の残骸が

ただようその深淵へ、超弩級艦アスガルドはその巨体

すべり込ませた。船体の外殻をおおう重力シールド

が、異界特有の激しい時空乱流と激突し、すさ

まじい摩擦音と閃光を放ち続ける。


艦橋の中央で、アーロンは玉座の如き艦長席に

深く腰掛けていた。

その腕の中には、生まれたばかりでありながら、

すでにアーロンの思考と完全に同調し、冷徹な

黄金の瞳で外の光景を見据える我が子――皇子おうじ

レグナが抱かれている。彼の小さな身体からは、

この未知の空間の理を解析するかのような静か

な魔力の波動が放たれていた。


「アーロン様、時空跳躍の負荷率、許容範囲内

です。……ですが、この異界の空間構造は、私達

の元の宇宙とは根本的な『数学的定義』が異なっ

ています。通常の航行システムであれば、一瞬で

存在そのものが分解されていたでしょう」


コンソールから離れず、冷徹かつ的確な声音で

状況を分析したのは側近のルナだった。その額

にはわずかに汗がにじんでいるが、彼女の顔に

恐れの色はない。我が帝国の技術とアスガルドの

強度が、未知の異界の環境すらねじ伏せつつある

証拠だ。


「問題ない。どんな理が支配していようと、

この宇宙を統べる俺の言葉の前では、異界の

法則などただの『書き換え可能な粘土』にすぎん」


私は鼻で笑い、冷徹に言い放った。

その隣で、漆黒のドレスを纏いアメジストの瞳を

輝かせる寵妃セレスティアが、優雅な仕草で

一歩前に出た。


「お言葉通りです、我が君主。すでに前方

数光年の宙域にて、この異世界を統括している

現地の『統治機構』……現地民が『神域』と

称する巨大な浮遊大陸群を我が方のセンサーが

捕捉しました。彼らは私たちの侵入を察知し、

すでに迎撃の準備に入っています」


セレスティアが宙に展開したホログラムの映像

には、雲海の上にそびえ立つ、黄金と白亜で

彩られた巨大な神殿群が映し出されていた。

それはかつてアーロンたちがこの宇宙で打ち

砕いた星間連合や旧神たちの宮殿をさらに神々(こうごう)

しく、そして傲慢にしたような、圧倒的な

威圧感を放つ神聖都市だった。


「神域、か。……地上を追放された俺を『無能』

と切り捨てた連中や、星々の海で傲慢に君臨して

いた旧神どもと、何一つ変わりはしないな。

自分たちの築いたおりこそが絶対だと信じ込んでいる、

哀れな井の中の蛙だ」


私は立ち上がり、レグナを片手でしっかりと

抱えながら、艦橋の最前部へと歩みを進めた。

私の腕の中で、レグナは小さな手を軽く握り

しめ、まるで父の意思に呼応するかのように、

その瞳の黄金の輝きを一段と強めた。彼の中

にはすでに膨大な帝王学と、あらゆる理を

変換する力が完全に定着している。

言葉はなくとも、我が子もまた、あの傲慢な

神々を我が領土の石材へと変える気満々だった。


「ルナ、セレスティア。全砲門を開け。あの

神域に向かって、我が帝国の挨拶代わりの

一撃を叩き込む」


「ハッ……! 全艦、主砲エネルギー充填じゅうてん完了。

出力、最大値に固定します」


「我が君主の御心のままに。あの異界の神々の

尊大な鼻をへし折り、すべての理をあなたの

足元にひれ伏させましょう」


二人の忠実なる側近の美しい声が艦橋に響き渡る。

アスガルドの艦首コアが、これまでにないほどの

眩い黄金色の光を帯びて巨大に膨れ上がった。

異世界の空気を一瞬で焼き尽くすほどの超高密度

な魔力エネルギーが、空間そのものを震わせる。


「――全軍に通達する。これより、この異界の

最初の神域を我が帝国の領土へと書き換える!」


アーロンの号令とともに、アスガルドの主砲

から放たれた極太の黄金の光線が、次元の壁を

突き破り、異界の神域へと一直線に突き進んだ。


轟音すら響かない静寂の中、黄金の光線が神域の

中心にある巨大な神殿群を直撃した瞬間、世界の

色が真っ白に塗り替わった。

異界の神々が何万年もかけて構築し、絶対の法

として君臨させていた神聖なる結界は、我が

【全属性変換】の圧倒的な理の前になすすべも

なく粉々に砕け散り、その構造のすべてがみる

みるうちに黄金色の美しい大理石や、我が帝国

の栄光を讃える巨大なモニュメントへとその

性質を変化させていく。


「なっ……馬鹿な……!? 我々の神聖なる理が、

一瞬で別の物質に書き換えられていくだと……!?

この侵略者はい一体何者だ……っ!」


神域の最奥から放たれていた、世界を震わせる

ような神々の威圧的な思念波は、恐怖に満ちた

絶叫へと変わり、やがて完全に押し黙った。

抵抗の意思そのものが、我が帝国の領土パーツ

へと書き換えられたのだ。


「お見事です、我が君主アーロン様。神域の

制圧率、瞬時に100%を達成しました。

現地住民および神々の残存戦力は、

すべて宮殿の装飾品へと変換完了しています」


セレスティアが完璧な挙措で一礼し、冷徹な

美しさを湛えた笑みを向ける。

アーロンの腕の中で、レグナもまた小さく

頷くように微動し、初めての異界制圧を

冷ややかに見届けていた。


「これが異界の神々の実態か。……笑わせるな」


アーロンは冷徹な笑みを浮かべ、眼下に広がる

新たな我が領土を見下ろした。

追放された無能だった男が、星々の海を統べ、

そしてついに次元の壁を越えて異界の神々をも

ひれ伏させた瞬間だった。


「だが、これはまだ始まりにすぎない。あの

神域の奥には、さらに多くの『別の理』を持つ

強大な世界が連なっている。……行くぞ、ルナ、

セレスティア、そしてレグナ。すべての異世界が

我が足元にひれ伏すまで、我が覇道の進撃は

絶対に止まらない!」

最初の神域が黄金の大理石とアーロン帝国の

モニュメントへと書き換えられた。

超弩級艦アスガルドは、異界のさらに深い領域

――無数の世界が複雑に絡み合う「多層次元回廊」

へとその巨体を滑り込ませていた。外の世界を

覆うのは、かつての宇宙の星々とは異なり、

流体のようにうねる概念の海と、異質な神々の

魔力が織りなす禍々しいオーロラだった。


明日も 07:30 に、投稿します。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。