第2部 第二幕【 新しい世界、新しい玉座 】 第2章 星間同盟の首都、沈黙す
シリウス星間同盟の特使が我が宮殿の「永遠の石像」へと姿を変えてからわずか数時間後、超弩級艦アスガルドを中心とする我が帝国の全艦隊は、隣接する未知の銀河圏――シリウス星間同盟の本拠地である星系『プロキオン』の宙域へとワープアウトした。
ビューポートの向側に広がっていたのは、何重もの重力シールドと、数千隻に及ぶ超大型戦艦で構成された鉄壁の防衛要塞群だった。先ほどの特使が誇っていた通り、この銀河における科学力と軍事力は、かつての星間連合を遥かに凌駕するレベルに達している。
「――全艦、戦闘態勢を解除せよ。我々に敵は存在しない」
艦長席に深く腰掛けたまま、私は冷徹にそう命じた。
ルナが冷ややかな笑みを浮かべ、セレスティアが完璧な挙措でコンソールを叩く。彼女の指先から放たれた量子演算の波動は、プロキオン星系の防衛ネットワークに一瞬で侵入し、敵の全艦艇が持つ主砲の安全装置を片端から強制ロックしていった。
「アーロン様、シリウス星間同盟の全総司令艦から緊急通信を受信しています。……彼らはパニックに陥り、我々を『未知の超常存在』として恐慌をきたしています」
セレスティアが夜空の星々のようなアメジストの瞳を細め、完璧なトレース音声で報告する。
ビューポートのスクリーンに、シリウス星間同盟の最高元帥だという男の顔が映し出された。その顔は恐怖と困惑に歪み、震える声で何かを叫んでいるが、もはや言葉の意味すら聞き取る価値はない。
「無駄な叫びだな。……この銀河のすべてが、俺の領土台帳に登録される運命からは逃れられん」
私は立ち上がり、右手を真っ直ぐに前方へ突き出した。
掌のなかで激しく渦巻く【全属性変換】の黄金の輝きが、アスガルドの全艦首コアへと直結する。
「【全属性変換】――『シリウス星間同盟の全防衛艦隊および首都星系』を『我が帝国の新しき大庭園』へ書き換える!」
バリバリバリッ! と、宇宙空間そのものが青白い光から眩い黄金色の奔流へと一変した。
数千隻の超大型戦艦は一隻残らずその形状を失い、プロキオン星系を取り囲む美しく剪定された巨大な「宇宙庭園の彫刻や植え込み」へと性質変化していく。さらに、敵の首都星系そのものが、我が帝国の圧倒的な統治下を示す純白の神殿群へと完全に再構築された。
抵抗の光は一瞬でかき消され、宇宙の静寂のなかには、ただ我が帝国の絶対的な支配の気配だけが残された。
「お見事です、我が君主アーロン様。シリウス星間同盟の制圧率、100%を達成しました」
寵妃セレスティアが深く一礼し、側近ルナが私に忠誠の杯を差し出す。
星々の海を統べる覇道の第二幕は、こうして一切の綻びもなく、我が帝国の完全勝利をもって幕を閉じたのだった。
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