第二幕 【 集いし者たち、そして新たな日常 】
第二幕
第四章 【 集いし者たち、そして新たな日常 】
新王国の立国から一ヶ月。辺境の地は、かつての王国が持っていた以上の技術と、活気に満ちあふれていた。
俺の国『アルカディア』には、噂を聞きつけた者たちが次々と訪れていた。
「……ここが、最強の国と噂のアルカディアか」
門前に現れたのは、ボロボロの鎧を纏った一人の女騎士だった。かつて王国で『失敗作』として追放された、超重量武器を操る狂戦士だ。
彼女は疲れ果てていたが、その眼差しにはまだ戦いを求める火が灯っている。
「歓迎しよう。だが、俺の国では『役立たず』なんて言葉は存在しない。……あなたのその、制御しきれない魔力を俺が変換してやる」
俺が彼女の肩に手を置くと、その身体を覆っていた禍々(まがまが)しい呪いの魔力が、黄金のオーラへと変換された。彼女の武器は一瞬で軽くなり、しかし破壊力は以前の十倍へと跳ね上がる。
「な、なんてこと……。身体が、軽い……!」
彼女は驚愕に目を見開き、俺の前に跪いた。
こうして、個性的な仲間が一人、また一人と増えていく。
一方で、滅びた王国の残党が隣国へと逃げ込み、俺の存在を「危険な魔王」として吹聴しているという報せも届いていた。
「魔王か。……悪くない肩書きだな」
俺は地図の上で、次の防衛線を引く。王国との決着はついた。次は、世界そのものと向き合う戦いが始まる。
第五章 【 進軍する隣国と、見えざる要塞 】
アルカディアの急速な繁栄は、隣国『ガルガディア帝国』の強欲な皇帝の耳にも届いていた。
「辺境の荒くれ者が、魔石を産み出し、城を築いただと? ……その資源、すべて我ら帝国のものだ」
帝国は、王国を滅ぼした「得体の知れない力」を恐れるどころか、それを自らのものにしようと、精鋭三万の軍勢を差し向けた。
アルカディアの領土へと続く唯一の道に、帝国の重装歩兵隊が黒い波となって押し寄せる。
城の監視塔からその光景を眺めていた俺の隣で、狂戦士の彼女――新しく加わったルナが、愛用の大剣を握りしめながら問う。
「アーロン様、敵は三万。正面からの激突は避けるべきです。迎撃の準備を……」
「いや、迎え撃つ必要はない」
俺は城壁の淵に立ち、帝国の軍勢へ向かってゆっくりと右手を突き出した。
彼らが侵入しようとしているのは、俺が意図的に設計した「地質変換区画」だ。
「【全属性変換】――『平原』を『流砂(泥沼)』へ」
ゴオオオオオッ! と地鳴りが響く。
数万の兵が踏みしめていた固い大地が、一瞬にして底なしの泥沼へと変貌した。整列していた帝国の陣形は崩壊し、重装甲の兵士たちは自らの重みで泥の中に沈み込んでいく。
「な、なんだ!? 地面が……!?」
指揮官の怒号が響くが、届かない。さらに俺は追撃の手を緩めない。
「続けて、『冷気』を『氷結』へ」
泥沼に閉じ込められた兵士たちの足元が、猛烈な勢いで凍りついていく。動けなくなった帝国軍は、もはや戦う意思すら砕かれ、ただその場に立ち尽くすしかなかった。
「これが、俺の国の『防衛』だ。物理的な兵器も、無謀な数も、ここでは何の意味もなさない」
たった一人の魔法で、帝国の精鋭部隊は完全に無力化された。
逃げ惑う兵士たちの背中を見下ろしながら、俺は冷徹に告げる。
「さて、次の手を用意するか。……次は、ただじゃ帰さんぞ」
アルカディアの威名は、こうして大陸全土に轟くことになる。
だが、この戦いの裏で、不穏な影が動き出していることには、まだ誰も気づいていなかった。




