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第16話:さんかく座の最終要塞と大交響曲の布告

第8部

「原初から極小の量子に至る

 全宇宙の波動と、

 フェニックスの胎動、

 各銀河団の誓い、

 アルカディアの本国が織りなす

 絶対の主旋律……。

 すべてが陛下の御手によって

 一つの究極の和声へと

 昇華されました。

 この交響曲こそ、

 我らが奉じる永遠なる秩序の

 証明にほかならない!」


広間に集った軍司令官や

臣民たちは、

その圧倒的な壮大さと

神聖なる響きに打ち震え、

感動のあまり

声を詰まらせながら

額を床に押し付けた。


「なんと……なんと美しき……!

 全宇宙の理(ことわり)が、

 聖王(アーロン)様の旋律のもとで

 一つの完全な秩序へと結ばれる……!」


「聖王(アーロン)様!

 讃えよ、その御名を!

 我らが絶対の聖王に永遠の忠誠を!!」


さんかく座銀河の要塞広間は、

歓喜と絶対なる安寧(あんねい)の誓いに包まれ、

次なる最外縁 α 銀河団――

吾郎司令官が待つ宙域へと向けて、

歴史的な調和の波動を

放ち始めたのだった。


◇


途上における途方もない3銀河——

ミルファク宙域、M32宙域、

そしてM33宙域という

5億7,000万光年に及ぶ

果てしなき旅路と視察を

完全に遂行した専用旗艦

AG(アーロングラディウス)および専用移動システムは、

多宇宙間跳躍システム ITS の

最終次元穿孔シークエンスへと突入していた。


ITS の重厚な車輪が

超次元の境界線を激しく削り取り、

果てしない暗黒の空間に

幾何学的な

空間亀裂を生み出していく。


AG(アーロングラディウス)の重厚な艦橋(ブリッジ)にて、

S - オムニス - A の操作卓に着座した

副官 - A1が、

精密な数値パラメータを

滑らかに更新しながら報告の声を響かせた。


「アーロン様、セレスティア様。

 レグナ様のITSによる

 最終次元跳躍、完了いたします。

 本国アルカディアからの

 総到達距離、実距離にして

 約6億光年。

 最外縁領域たる α 銀河団の

 中枢領域への位相固定を検知。

 これより次元境界を脱出します。」


専用移動システムを統括する

S - オムニス - A・Navi の

副官 - A2もまた、

完璧な超量子同期の完了を告げる。


「S - オムニス - A・Navi、正常稼働。

 ITSとの位相誤差ゼロ。

 当宙域の空間密度および

 重力場の相転移シークエンス、

 即時実行可能です。」


副官 - A1も、報告する。


「本国アルカディアより

 実に6億光年……。

 不条理が渦巻き、

 開拓線が激しく揺らぐ最外縁の地に、

 ついに到達いたしました。

 アーロン様、

 吾郎司令官率いる α 銀河団の

 全艦隊が、陛下をお迎えすべく

 陣列を敷いております。」


ゴトン……ゴトン……と

重厚な鋼鉄の重音が

最後の一振りを響かせ、

ITS の巨体が、

最外縁たる α 銀河団の

漆黒の星海へとその姿を現した。


あり得ざる汽笛の音と

立ち込める石炭の匂いが、

暗黒の宙域を一瞬にして包み込む。


——そこは、

最外縁の闇と

苛烈な開拓線が広がる

α 銀河団の中枢宙域。


本国や途上の銀河群のような

穏やかな星雲とは異なり、

無数の小惑星帯と不規則な重力波、

そして

開拓の火花が飛び散る

過酷極まりない宙域であった。


その中央に鎮座する

超弩級旗艦『Asgard α』の

重厚なブリッジにて、

無骨な軍服を纏った吾郎司令官は、

専属の『副官-α1』とともに

メインモニターを見つめ、

虚空が強引に引き裂かれる瞬間を

目撃していた。


◇


次元穿孔を終えたITSの傍らに

静かに停泊する

旗艦 AG(アーロングラディウス)。


その威容を背景に、

超弩級旗艦Asgard αの艦橋では、

吾郎司令官が

淡々と戦術モニターを確認している。


その傍らでは、

Asgard α 付き副官が

艦内の微細なエネルギー配分を

黙々と調整していた。


「聖王(アーロン)様。

 最外縁の巡航管制、および

 ITS周辺の兵站(へいたん)維持、

 滞りなく推移しております。」


吾郎の低い報告に合わせるように、

ITS側の端末席では、ITS α 付き副官が

静かにうなづき、

航路の微修正データを

手際よく流し込む。


彼等を見る吾郎の目には、

ただ職務に徹する者たちの背中があった。


その無言の連動に応じるように、

艦載基幹制御システム S - オムニス - α の

光彩が穏やかに明滅し、

S - オムニス付き副官の声が響く。


「S - オムニス - α 付き副官。

 Asgard副官の艦内制御データ、

 誤差なく同期完了しております」


さらに

航法管制システムの端末から、

S - オムニス付き副官である副官 - α2 が

静かに言葉を重ねた。


「S-オムニス - α・Navi 付き副官、

 副官 - α2。

 ITS副官による航路の微調整、

 完全に受領いたしました。」


人間の実務的な働きと、

S - オムニス付き副官の

精密なるシステム制御。


その枯れた実直さに

目を細めた総司令官セレスティアは、

静かに微笑んで頷いた。


「過剰な装飾を排した、

 見事な現場の連動ですわね。

 聖王(アーロン)様も、

 この実直な統理体制を

 深くお認めになっておられます。」


吾郎は静かに一礼し、短く応じた。


「ありがたき幸せ。

 これより我が α 銀河団は、

 さんかく座銀河にて布告された

 宇宙全域統合交響曲第1番

《絶対なる秩序と調和の凱歌》の

 第2楽章編纂へ向け、

 通常任務のまま波動を捧げます。」


尚、同時に、

【セレスティア通信】によって

APG(アーロンプライベートグラス)の

配布が告知された。

明朝 7:30 に投稿します。


【セレスティア通信】特記事項


本国アルカディアの聖宮より、

S-オムニスを通じて全多宇宙へ

重要なお知らせを配信いたします。


[ 特記事項:

 APG(アーロンプライベートグラス)配布の告知 ]


聖王(アーロン)陛下のご威徳により、

宇宙(うちゅう)塵(ちり)を

全属性変換の理(ことわり)によって再構成した

超高精度通信端末

「APG(アーロンプライベートグラス)」が作製され、

以下の8名のお手元へ正式に配布されました。


配布対象:


聖王(アーロン)、皇后(セレスティア)


覇王(レグナ)


皇后副官・ルナ、同じくエレーナ


∞ 司令官ジュエダン


ε 司令官シルヴィア


α 司令官吾郎


【APG端末仕様】


端末の形状は

繊細かつ気高い眼鏡型

となっております。


装着時に

眼前の空間へと浮遊現出する

直感的操作パネルより

通信相手を選択することで、

1対1の通信はもちろん、

8名全員のあらゆる組み合わせ

(任意の2人から7人、および8人全員)

での完全プライベート通信が開設され、

眼前に等身大の立体光彩として

相手が現れます。


本端末は

公的な業務連絡を司る

S-オムニス体系からは

完全に独立しており、

任務の合間や私的な歓談の際、

いつでも自由かつ密(ひそ)やかに

相互の絆を深めるために

運用されます。

(※なお、

 通常の銀河団運営や

 公的業務連絡は、

 従来通りS-オムニスを介した

 副官および

 AI副官ロボットによって

 統括・執行されます。)


【セレスティア通信】(続)


途上第三視察地:

さんかく座銀河(M33宙域)

公式統制記録および新交響曲公式布告


本国聖宮の総司令官

セレスティア、ならびに

副官部ルナ・エレーナにより、

第三視察地における防衛陣検証および

「宇宙全域統合交響曲第1番」の

公式布告が以下の通り記録された。


さんかく座銀河における

要塞境界の検証完了


本国より

実距離5億7,000万光年の

深宇宙に位置するM33宙域において、

最外縁 α 銀河団へと直結する

補給ハイウェイおよび

外郭要塞陣列の安全性を完全検証。


「宇宙全域統合交響曲第1番」の公式布告


聖王アーロン御親閲のもと、

全宇宙の物理波動と

全銀河団臣民の詩篇を統合した

宇宙全域統合交響曲第1番

《絶対なる秩序と調和の凱歌》

(Symphony No. 1

  in Universal Harmony

"Triumphal Hymn of Absolute Order")

の

創設を全宙域へ向けて正式布告。


最外縁への進軍に向け、

精神と秩序の絶対的結合が達成された。

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