第四幕 第十八章 【 神の設計図、王の我が儘(まま)】
仄暗い神殿の奥へ足を踏み入れたアーロンの前に広がっていたのは、物質でも魔力でもない。世界そのものの「設計図」が光の糸となって無数に交差する空間だった。
「……」
その中心に、白銀の衣を纏った数多の「創造主」たちが静かに佇んでいる。彼らは個としての肉体を持たず、ただ世界という巨大なプログラムを観測・修正するだけの存在だった。
「観測終了。アーロン。貴殿の存在は我が実験場のバランスを完全に破壊した。よって、ここで例外処理として全データを消去する」
創造主たちの声が重なり合い、空間全体の重力が数千倍に跳ね上がる。
普通の人間であれば、一歩踏み出した瞬間に分子レベルへと分解されるほどのプレッシャーだ。エレーナやルナを連れてこなくて正解だった。ここは、理の根源と、我が覇道をぶつけ合うための王の独壇場なのだから。
「なに! 消去だと? 笑わせるな」
アーロンは冷ややかに鼻で笑い、全身の魔力を解放する。
これまでの戦いで吸収してきた王国、システム、聖王国、鋼の共和国、そして先ほどの使徒の権能。それらすべてが、俺の肉体を核にして黄金の光の奔流へと変わった。
「よいか、お前たちが作り上げたのは、ただの気まぐれな箱庭だ。誰かが理不尽に追放され、誰かが理由もなく踏みにじられる。そんな不完全なプログラムを、俺が許すと思うか?」
俺は右手を虚空へ突き出す。
空間を埋め尽くす光の糸。世界の設計図そのものを、俺の指先が掴んだ。
「【全属性変換】――『神の設計図』を『アルカディアの領土台帳』へ反転する!」
「バリバリバリバリバリ~ッ!」
と、神域全体が凄まじい音を立てて痙攣する。
創造主たちが初めて「驚愕」という概念を揺らめかせた。彼らが絶対の真理として定めていた「世界のルール」が、アーロンの都合のいいように書き換えられていく。
「ば、馬鹿な!……。我々の構築した因果律を、個人のスキルが上書きしているだと!? ……」
「そうだ。これからは、この世界に存在するすべてのルールは、俺の口から発せられる言葉だけで決まる」
アーロンは空間の糸を引きちぎり、創造主たちの中心へと歩み寄った。
神々が創り上げた絶対の秩序は今、一人の「追放された元無能」の手によって、完全なる「個人の所有物」へと成り下がろうとしていた。
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