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第13話:最外縁への凱歌と鋼鉄の汽笛

第8部

『……感謝いたします、

 セレスティア総司令官。

 苛烈な平定戦の中で、

 明日の希望を見失いかけていた

 最果ての開拓民たちにとって、

 アーロン様とセレスティア様の訪れ、

 そして

 ルネサンスの光は何よりの

 救いとなります。

 α 軍、

 全力を挙げて

 文化の受け入れと

 啓蒙活動を推進いたします!』


三者三様の熱い意志を確認し、

セレスティアは満足そうに目を細めた。


「頼もしい返答です。……

 ルナ、エレーナ。

 直ちに聖宮儀典省および

 親衛直属護衛旅団を動員し、

 各銀河団の受入局と連携して

 巡幸計画の策定に入りなさい。」


「御意!!」


聖王(アーロン)と

総司令官セレスティアによる銀河巡幸、

そして

全宇宙を包み込む

新たなるルネサンスの芽吹き——。


行政と軍事の実務層が

一斉に動き出し、

聖国アルカディアは、

人々の魂を救う至高の文化浸透期へと

足を踏み出すのだった。


◇


アルカディア本国の

最上層に位置する「天鏡の間」。


その白銀の床面中央に

浮かび上がる全宇宙星図の前に、

総司令官セレスティアは

凛とした佇まいで立っていた。


左右には第一副官ルナ、

第二副官エレーナが控えている。


「セレスティア様」


ルナが口を開いた。


「聖王アーロン様による

 各銀河団へのご巡幸にあたり、

 全宙域の後方統括を任された

 覇王レグナ様より、

 専用超弩級艦『アスガルド』の

 防衛配置完了、ならびに

 レグナ様の ITS の

 巡幸航路開設のご連絡が入りました。」


エレーナも琥珀色の瞳を輝かせ、

腰の戦術端末を滑らかに操作する。


「フェニックス銀河団の覇王レグナ様が

『アスガルド』と『ITS』という

 絶対の盾と跳躍網を

 全開にしてくださっています!

 本国および全宇宙の基盤は完璧です。

 本国中央S-オムニス-Central、

 ならびに総旗艦の

 左副官AI-rℓ、右副官AI-rrによる

 全ノードの同期も完了いたしました。

 セレスティア様、アーロン様のお越しです!」


天鏡の間の重厚な側扉が滑らかに開き、

漆黒と白銀の礼装を纏った

聖王(アーロン)が静かな歩調で姿を現した。


アーロンが歩み寄ると、

セレスティアは優雅に歩み寄り、

深々と一礼を捧げた。


「アーロン様。

 最外縁にて不条理を刈り取り、

 臣民を守り抜く吾郎司令官の

 α 銀河団をはじめ、

 各銀河団における

 ルネサンス啓蒙活動の視察……

 レグナ様のご協力のもと、

 完璧に整いました。」


アーロンは力強く深く頷き、

天鏡の間から

発進ドックの最深部へと向かった。


そこに鎮座するのは、

アーロン自らが艦長席に着座する、

絶対なる専用旗艦——

『アーロン・グラディウス』、

そしてその絶対的な巡幸を支える

専用の新移動システムである。


『アーロン・グラディウス』に

直列実装された

『S-オムニス-A』の操作卓にて

専属の『副官-A1』が

滑らかに数値を更新し、

新移動システムを統括する

『S-オムニス-A・Navi』の

『副官-A2』と

超量子同期を完結させていく。


「アーロン様、セレスティア様。

 アーロン・グラディウスおよび

 新移動システムの機関全開。

 S-オムニス-A、

 S-オムニス-A・Naviともに正常稼働。

 レグナ様の ITS との

 次元同期シークエンスへと移行します。

 最初の目的地、α 銀河団へ座標を固定。」


『副官-A1』の冷静な報告を受け、

アーロンとセレスティアが

『アーロン・グラディウス』のブリッジに立つ。


「アーロン・グラディウス、出撃!……ITS、接続!」


アーロンの静かな下命が下されたその瞬間——


フェニックス銀河団で

超弩級艦『アスガルド』の

艦長席に座す覇王レグナの手により、

多宇宙間跳躍システム『ITS』が全開作動した。


宇宙空間の物理法則を揺るがす、

奇妙な地鳴りが全宙域に轟く。


空間の歪みを強引に引き裂きながら、

重力方程式すら完全に無視して

『アーロン・グラディウス』と

新移動システムの眼前に現れたのは、

重厚な鋼鉄の装甲を纏った怪異なる列車——

「多宇宙間インターバース・

 テレポーテーション・システム(ITS)」

であった。


ゴトン、と重厚な車輪が回転を開始する。


その軸受けと踏面が擦(こす)れ合うたびに、

次元の狭間(はざま)から微(かす)かな汽笛の音と、

香ばしくもどこか懐かしい

石炭の燃える匂いが溢(あふ)れ出してきた。


それは

数億光年の暗黒の宇宙空間に

立ち込める霊的な霧を、

瞬く間に鋭く切り裂いていく。


プシューッ……!!


重厚な鋼鉄の扉が音を立てて開き、

専用旗艦『アーロン・グラディウス』

および新移動システムを

その異次元の車輪の位相の渦の中へと

包み込んでいった。


レグナの操る ITS の

絶対的な空間穿孔能力によって、

最外縁たる α 銀河団への

途方無い距離が

一瞬の跳躍へと変換されていく。

本日 19:30 に投稿します。

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