第18話「不滅の領土台帳(怒りの火)」
第7部
不快な精神波ノイズを撒き散らす
「奥の院」の妖怪どもを見据える
覇王レグナの精神の中で、
ある絶対的な歴史の記憶が
揺るぎない輝きを放ち始めていた。
それは、まだ
アルカディア帝国が
産声を上げたばかりの
建国初期、
父上たる聖王アーロンの
傍らで刻み込まれた、
国家の根幹をなす
神聖なる一節であった。
『創造主たちが、
絶対の真理として構築した
「世界の設計図」は、
今や完全に書き換えられ、
アーロンの所有する
広大な領土台帳へと
その姿を変えていた。』
かつて自称「創造主」どもが、
自らの独善的な都合と
権力を維持するために
作り上げた騙しの法則。
宇宙の星々を縛り、
民の自由と真理の発展を
徹底的に阻害していた
旧時代の「世界の設計図」。
アーロンは、ただ一人
その欺瞞を見破った。
そして、
不当な弾圧と追放の試みを
ことごとく退け、
全属性変換技術で
自らの王国を
創出することによって、
その歪んだ設計図を物理的に、
かつ概念的に
根底から書き換えてみせたのだ。
かつて
「世界」と呼ばれていた領域の
すべては解体され、
アーロンの厳格にして
慈愛に満ちた治世のもとで
再構成され、いまや
無数の銀河、恒星、惑星を
過不足なく管理する、
神聖にして不可侵な
『聖王の広大な領土台帳』へと
その姿を変えていたのである。
旧時代の威権など、
その台帳の
一行、一文字にすら及ばない。
「……そうだ。
お前たちのような
敗北した妖怪どもが、
どれほど
過去の栄光を叫ぼうとも!」
レグナの声に、
かつてない重圧と、
超高熱の量子火炎のごとき
「怒り」が宿った。
「我が父アーロン様が
書き換えた真理の前に、
お前たちは
歴史の塵芥に過ぎぬ。
己の無能と過去の妄執にすがり、
今なお父上の御名を汚そうとする
その愚行……断じて許しはしない!」
ドォン……!
と、
総旗艦『アスガルド』の
中枢コアが、
レグナの激昂に呼応して
戦律の重低音を響かせた。
レグナの怒りは、
感情的な暴走ではない。
それは、
聖国の不滅の正義と
秩序を証明するために
解き放たれる、
完全なる機能美を伴った
戦闘意志の極限状態であった。
「全艦隊、
直ちに最終戦闘配置!
3軍が抑え込んでいる
『絶対質量種』を無視し、
全火力を『奥の院』の
中枢核へと集中させよ!」
通信回線を通じて、
レグナの怒りと絶対命令が
最前線の全軍へと伝播する。
『レグナ様……! 御意!』
吾郎軍の
『超弩級戦艦アスガルドα』が、
主砲の全バレルを
「奥の院」の幾何学特異点へと
回旋させる。
『精密位相網 ε 、
敵の奥の院周辺の
空間逃げ道を完全に封鎖完了。
一撃の猶予も与えません。』
シルヴィアの厳然たる声が響く。
『ふっ……
聖王の台帳を汚す汚物どもめ。
無限の位相(∞)の
底へ叩き落としてやる!』
ジュエダンの漆黒の瞳に、
絶対の抹殺の光が宿る。
本国アルカディアで
全全宙域のASシステムを
完成させ、
寵姫セレスティアとともに
帝国の治世を磐石のものとした
聖王アーロン。
そのアーロンが紡いだ
絶対の正義を汚そうとした
妖怪どもに対し、
覇王レグナの全艦隊が、
歴史上最大の規模をもって
その牙を剥いた。
「レグナ軍全艦隊、突撃!
奥の院を、
その思想ごと根絶せよ——!!」
巨体誇る総旗艦『アスガルド』を
先頭に、
レグナ軍の主力戦艦数万隻が
一斉に加速を開始した——。
*
「……バ、バカな!
なんだ、この圧迫感は……!?
我らは世界の『創造主』だぞ!
アーロンの作った人形ごときが、
我らに刃を向けるなど……!」
奥の院の深奥、
暗黒物質の過給槽に浸かる
ヴォル・ゴスら妖怪どもの
精神波が、
かつてない激しい狼狽とともに
乱れ跳んだ。
彼らが
画面越しに目撃したのは、
空間そのものを
踏み潰しながら突進してくる、
覇王レグナ率いる
聖国軍中央全艦隊の
地獄のような威容であった。
「創造主を騙る亡者どもよ。
お前たちの不完全な設計図は、
すでに父上の手によって
完璧な
領土台帳へと書き換えられた。」
総旗艦『アスガルド』の
艦首に配置された
超巨大位相収束砲が、
青白き絶対破壊の光を
極限まで蓄積していく。
レグナの厳かな声音が、
奥の院の全空間へ直接響き渡る。
「お前たちが
世界に遺したものは、
無知と搾取と混乱のみ。
我が父アーロン様が
もたらしたのは、
永遠の秩序と機能美、
そして絶対の平穏である。……
お前たちの存在そのものが、
我が帝国の美しき
台帳における唯一の汚点だ!」
「やめろ……!
待て!
我らの知恵を、
世界の根源の知識を
授けてやる! だから——」
「不要だ。
不完全な過去など、
我が聖国には
一微粒子たりとも必要ない!」
レグナの手が、
静かに、そして
絶対の意思をもって
振り下ろされた。
「全艦隊、
総火力を解き放て。——
『絶対粛清砲
(アーロン・グラディウス・フェイク・ニヒリティ)』、
発射!」
瞬間、
奥の院の暗黒空間が、
何十万という主砲の
閃光によって
真昼のごとき白銀の世界へと
塗り替えられた。
レグナ軍の
超弩級戦艦群が放つ全火力が、
S-オムニスの
超量子補正によって
寸分の狂いもなく
「奥の院」の絶対特異点へと
集束。
爆発の衝撃や熱量すらも
超量子位相によって
その場に固定され、
ただ「奥の院」の空間構造
そのものが分子レベル、
量子レベル、そして
次元レベルで削り取られていく。
「アギャァァァァァっ……!?
我らの……我らの
『世界の設計図』が……
消えていく……!!
アーロン……!
アーロンの……
台帳に……
上書きされるぅぅぅっ——!!」
ヴォル・ゴスをはじめとする
旧「創造主」の妖怪たちの
絶叫は、
超高密度の光の波に
飲み込まれ、
粒子すら残さずに
分解されていった。
彼らが
必死に固執していた
古き不完全な世界の記憶も、
皇帝ギガルという
傀儡を使って企てた
醜悪な野望も、
すべてはアーロンの所有する
神聖なる領土台帳の余白へと
吸い込まれ、
二度と再生することのない
完全なゼロへと還元されていった。
「……奥の院、消滅確認。
旧『創造主』精神体群、
全個体の完全消滅(上書き)を
完了いたしました。」
左副官AI・rℓと右副官AI・rrの
完璧なる戦果ログが、
静まり返ったブリッジに響き渡る。
「奥の院」を
完全に消滅させた
レグナの眼差しは、
静かに前線で立ち尽くす
巨大異形体『絶対質量種』、
そして残された
敵の残党群へと向けられた。
後方・本国
アルカディアにおける
聖王アーロンと
寵姫セレスティアによる
完全なるAS治世網。
そして、
前線における覇王レグナと
3軍司令官たちによる、
歴史的因縁の完全なる破砕。
歴史の歪みを完全に正した
聖国軍の眼前には、
もはや何一つとして
彼らの進撃を阻むものは
存在しなかった——。
(第7部・完)
*
【セレスティア通信(1)】
「アーロンの領土台帳」の
歴史的・構造的意義
本国聖宮の総司令官
セレスティアが
全軍へ再確認した、
アルカディア建国史における
重要理念は以下の通りである。
「世界の設計図」の完全解体
かつての
「創造主」勢力が定めた
世界法則は、
権力維持のための
不完全な
ドクトリンに過ぎなかった。
アーロン様はこれを
超量子演算によって
完全に解体・統合された。
領土台帳としての再構成
解体された全宇宙の
質量・空間・次元は、
S-オムニスを基幹とする
絶対の「領土台帳」として
再登録された。
これにより、
すべての星々と人民は
旧支配者の搾取から解放され、
永久の平穏を得ることとなった。
【セレスティア通信(2)】
レグナ軍全艦隊による
総攻撃シークエンスの全貌
3軍による足止めと
レグナ軍の超突撃
吾郎(α)、
シルヴィア(ε)、
ジュエダン(∞)の
3軍が前線の
『絶対質量種』を
極限の位相干渉で拘束する間に、
覇王レグナ率いる中央本隊が
「奥の院」へ
直接突入する絶対の電撃作戦。
歴史的決着への移行
本作戦は
単なる戦術的平定にとどまらず、
アルカディア建国以来の
因縁である
「旧・自称創造主勢力」の
概念的・物理的完全滅亡を
意味する。
【セレスティア通信(3)】
聖王専用超次元移動御座船
『アーロン・グラディウス』の仕様について
移動性能と次元跳躍
全属性変換技術によって精錬された
高純度反物質・暗黒物質推進炉を搭載。
3,500万光年の移動を
0.001秒のタイムラグなしで
完遂する超次元位相跳躍能力を有する。
S-オムニス大元コアの直結
艦体そのものが
S-オムニスの最高幹部用
大元端末として機能しており、
どこに位置していようとも
全銀河のASシステムおよび
遠征軍への絶対命令権限を保持する。




