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第17話「奥の院の黒幕(歪んだ絶対者たち)」

第7部

El Gordo(エル・ゴルド)

要塞都市の最奥、

通常の幾何学構造を

根底から無視した

超重力歪曲層のさらに深部。


そこには、

外部の自動造船プラントや

過剰な暗黒物質の

爆発的エネルギーすら

微小なノイズに変えてしまう、

不気味なほどの

静寂に包まれた領域――

「奥の院」が存在していた。


要塞都市の

地下深層から現れた超巨大異形戦体

『絶対質量種(マナスター)』を、

吾郎(α)、シルヴィア(ε)、

ジュエダン(∞)の3軍が

完璧な三位一体(トリニティ)

位相陣形をもって

迎撃・抑え込んでいるその最中、

覇王レグナの総旗艦『アスガルド』の

戦術コンソールに、

S-オムニス経由の

最深部透過データが

次々と吐き出されていた。


「……レグナ様。

 奥の院内部の生命反応および

 精神波パターンの照合が

 完了いたしました。」


総旗艦の左副官役AI・rℓが、

ホログラムスクリーン上に

異常な波形を描き出す。


右副官役AI・rrが、

その声音に珍しく歪みを

交えて報告を継いだ。


「皇帝ギガル……あの男は

 単なる傀儡(かいらい)、あるいは

 集金と造船の命令を

 忠実に実行する肉体器官に

 過ぎませんでした。

 ギガルを背後で操り、

 この宙域の暗黒物質を

 不当に濫用(らんよう)させていた真の主体

 ――それは、かつて

 『創造主』を騙(かた)り、

 我らが父上、聖王アーロン様を

 理不尽に排除しようとした

 旧時代の妖怪どもです。」


「……何だと?」


覇王レグナの重厚な声が、

総旗艦の重厚なブリッジを

微(かす)かに震わせた。


透過スクリーンに

映し出されたのは、

肉体を捨て去り、

精神の澱(よど)みを

機械と暗黒物質の

融合槽へと接続した、

醜悪なる存在たちの影であった。

彼らはかつて

世界秩序の絶対的設計者を自称し、

自らの権威と

浅薄な教義に従わぬという

ただそれだけの理由で、

若き日のアーロンを

「異端」として弾圧し、

領域から追放しようと画策した

旧時代の支配者たちの残党であった。


彼らは

自らの破滅と崩壊から

逃げ延びた先である

このEl Gordoの最深部に潜(ひそ)み、

皇帝ギガルという

無知で強欲な傀儡(かいらい)を立てることで、

再び宇宙の裏側から

世界を支配する

野望を温めていたのだ。


『ほう……

 アーロンの作った人形が、

 ここまで辿(たど)り着いたか。』


奥の院の深奥から、

S-オムニスの通信回路に

不当に割り込む形で、

精神波の合成音声が

不快なノイズとともに響き渡る。


妖怪どもの中心に位置する

精神体――かつての最高審問官

『ヴォル・ゴス』の残響であった。


『哀れなレグナよ。

 お前たちが崇(あが)める

 アーロンの支配など、

 我らがかつて定めた

「世界の正当なる幾何学」に対する

 反逆でしかない。

 この宇宙の真理と設計図は、

 最初から我ら「創造主」の

 手の中にあったのだ……!

 ギガルに与えた暗黒物質の力も、

 すべてはお前たちの

 偽りの秩序を破砕するためのもの……』


「黙れ、過ちの残骸が!」


レグナの怒りの一言が、

ヴォル・ゴスの精神波を鋭く遮(さえぎ)った。


『くくく……怒るか。

 だが思い出すがいい、

 アーロンがどれほど

 完璧な世界を築こうと、

 その根底にあるのは

 我らの世界の真理から逃亡した

 過去に過ぎぬということを!』


嘲笑(あざわら)う精神波のノイズが

ブリッジに満ちる。


しかし、

レグナの眼光は

怒りで狂うことなく、

恐ろしいほどの静寂と

超高度な計算速度を伴って、

漆黒の深淵へと向けられていた。


「過ちを認める

 知性すら持たぬ妖怪どもめ……。

 お前たちがどれほど

 古き権威を捏造(ねつぞう)しようと、

 現実は何一つ変わらぬ。」


レグナの脳裏に、

アルカディア建国初期における、

決して消え去ることのない

不滅の記憶が、

鮮烈な光となって甦(よみがえ)っていた――。


*


【セレスティア通信(1)】


「奥の院」における真の支配層


(旧・自称「創造主」勢力)の構造


本国聖宮の総司令官セレスティアが、

S-オムニスの全次元データベースと

照合し確定した、

敵最深部勢力の解析結果は

以下の通りである。


皇帝ギガルの実体


ギガルはEl Gordoの

皇帝を自称していたが、

その実態は「奥の院」の

妖怪どもから与えられた

暗黒物質変換プラントの運用と、

表面的な艦隊指揮を

任されていた代理人に過ぎない。


旧・自称「創造主」グループ


かつて建国前の

旧領域において

絶対的な権力と

宗教的威権を誇り、

真理の探求者であった

アーロン様を

「世界の調和を乱す者」として

排除しようとした支配階級の残党。


肉体の滅亡後、

精神を暗黒物質の過給槽に結合し、

生存を維持していた。



【セレスティア通信(2)】


奥の院の精神干渉に対する

S-オムニスの防護状況


精神波ノイズの即時遮断


敵精神体が発する

狂暴な広域精神干渉波

(旧時代の教義コード)は、

S-オムニスの

量子フィルタによって

0.0001秒で分析・無効化。


前線全軍の精神および

指揮系統への影響は皆無である。


真理の絶対的格差


敵が主張する

「旧世界の設計図」は、

すでに数学的にも

物理的にも完全に破綻した

旧式概念であり、

現在の聖国が展開する

超量子幾何学の前には、

単なる解読不能なバグと

同義である。

本日 19:30 に投稿します。


【セレスティア通信(3)】


アルカディア本国・全領土への

ASシステム完全展開について


治世と防衛の完全自動化


フェニックス銀河団で実証された

「AS-1 / AS-2 / AS-3」の

三層配備構造を、

アルカディア帝国が支配する

全宙域へ一括移植。


局地的な紛争や暴動、

異次元からの侵入は、

現地防衛艦隊とS-オムニスの

自動プロトコルにより

即座に収拾される。


総司令官セレスティアの負担軽減


ASシステムの

全自動防衛・治安維持機能により、

セレスティアは

軍事防衛の局地的対応から

完全に解放され、

帝国の全行政・全領域の

高度な治世と発展に

100%専念することが可能となった。

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