第15話「聖王の帰還と真の絶対全域網(アルカディア・ASネットワーク)」
第7部
「『ITS ε』は
敵の超質量崩壊波の波形を
完全に相殺・固定。
『ITS ∞』が
その固定された歪みを
折り畳み、内側から
消滅させます。……放ちなさい!」
シルヴィア軍の放つ
青白き精密位相格子が、
敵の『超質量崩壊防壁』の
表面に接した瞬間、
凶暴な重力波動が
ピタリと凍りついたように
その運動を停止した。
そこへ、
ジュエダン軍の放つ
漆黒の無限位相パルスが
寸分の狂いもなく直撃する。
「相殺(ε)」から
「収束・無力化(∞)」への
完全なる二重連動——。
敵首脳陣が
絶対の切り札と信じた
超質量崩壊の空間は、
一滴のエネルギーすら
周囲へ漏らすことなく、
ただの平穏な通常空間へと
復元され、
要塞都市を直接守る
防衛壁は跡形もなく霧散した。
「……敵の二重崩壊作戦、
完全無効化を確認。
要塞都市の防衛能力、
ゼロ%へ低下いたしました」
『ASε-1』と『AS∞-1』の
合成音声が、
完璧な戦果ログを
同時に出力する。
同刻、
覇王レグナの総旗艦。
「……レグナ様。
ジュエダン軍および
シルヴィア軍による
二重位相連携作戦の
完遂を確認。
敵の最終防衛策は
完全に瓦解いたしました。」
左副官役のAI・rℓが
青の戦果図を
空中へ旋回させ、
右副官役のAI・rrが
厳粛な音律で言葉を重ねる。
「要塞都市の
中枢を取り囲む防衛網、
完全に消滅。
残すは
中枢への直進のみです。」
戦術図を見下ろす
覇王レグナの厳かな顔容に、
揺るぎない絶対の威厳が宿る。
「ジュエダンと
シルヴィアの連携……
まさに絶妙なる機能美。
敵がどれほど
巧妙な抵抗を試みようとも、
我が聖国の
幾何学的秩序の前には
足掻きすら許されぬ」
後方絶対拠点・
フェニックス銀河団の
聖王アーロンが維持する
無限の後詰と、
本国・アルカディア帝国の
セレスティアによる
揺るぎない全領域の治世。
完璧なるバックアップのもと、
聖国軍の最後の一撃が、
いまや裸同然となった
El Gordoの要塞都市へと
向けられようとしていた——。
*
ジュエダン軍と
シルヴィア軍による
二重位相攻撃
『インフィニティ・クロス』
によって、
El Gordo
要塞都市の最終防衛網は
完全に瓦解した。
包囲網の完成により、
前線が
完璧な制圧体制下の
小康状態に
入ったことを確認した
聖王アーロンは、
次なる国家シークエンスへと
動き出した。
「レグナよ。
前線の包囲維持、ならびに
フェニックス銀河団の
後方監督権限を一時
お前に委任する。
S-オムニス経由での統制に
寸分の狂いもない。……
余はこれより、
アルカディア本国へと帰還する。」
『……御意、父上。
フェニックス銀河団の経営
並びに前線包囲の全権、
引き受けました。
ご安心して
本国へお戻りください。』
覇王レグナの
厳かな承諾を受け、
アーロンは
本国帰還のための
新たなる乗り物の造営を
命じた。
全属性変換プラントの
限界駆動によって
瞬時に建造されたのは、
聖王専用超次元移動御座船——
『超弩級御座艦
アーロン・グラディウス。』
漆黒と深紅の装甲を纏い、
艦身そのものが
S-オムニスの
大元コアと一体化した
その巨大船は、
光速や次元の壁すら
軽々と超越する
絶対的な威容を誇る。
アーロンを乗せた
『アーロン・グラディウス』は、
3,500万光年の星海を
一瞬の次元跳躍で切り拓き、
アルカディア帝国の中心たる
「聖宮」へと舞い戻った。
聖宮の広大な玉座の間。
アーロンを迎えたのは、
全帝国の支配と治世を
一心に担い続けてきた
総司令官セレスティアであった。
「……お帰りなさいませ、
アーロン様。
前線の平定、ならびに
フェニックス銀河団の
完璧なる後方経営……
実に見事でございました。」
凛としながらも
心からの情愛をたたえた
セレスティアの出迎えに、
アーロンは深く頷いた。
「うむ。
セレスティア、
お前が本国を守り、
全領土の統治に
専念してくれたおかげで、
余も後顧の憂いなく
動くことができた。」
アーロンは
セレスティアの手を取り、
玉座の
ホログラムコンソールへと
向かった。
「……だが、
本国アルカディア
および我が手がけた
すべての征服宙域の守護を、
セレスティア、
お前ひとりの負担に
頼り続けるわけにはいかぬ。
今ここで、
フェニックス銀河団に施した
【絶対防衛・
治世衛星網(ASシステム)】を、
アルカディア帝国全域へと
完全移植・設置する。」
アーロンの命を受け、
『アーロン・グラディウス』の
S-オムニスと、
聖宮の中枢システムが直結。
直後、
アルカディア本国
および帝国の支配下にある
全銀河・
全恒星・
全惑星の天空に、
膨大な光の粒子が集積した。
AS-1(銀河級アーロン衛星):
アルカディア帝国の
全銀河中心宙域に展開。
AS-2(恒星級アーロン衛星):
全銀河内の
すべての恒星周回軌道に
漏れなく配置。
AS-3(惑星級アーロン衛星):
すべての惑星の
空を覆うように配備。
その静止軌道の背後には、
絶対の守護を担う
主力戦艦数十隻と
駆逐艦群が潜行する。
帝国の全人民が
空を見上げれば、
そこには
フェニックス銀河団と同じく、
神々しいアーロンの姿があった。
末端の駆逐艦一隻に至るまで
S-オムニスが搭載され、
本国のセレスティア、
そしてアーロンの手元と
0.0000秒の遅延もなく
完全同期される。
「……これで、
アルカディア帝国の
すべての領土、
すべての民の安全は
永遠に担保された。
セレスティア、
お前が統治に専念
するための真の絶対防壁だ。」
「……アーロン様。
臣民を代表し、
この絶対の守護に
心より感謝申し上げます。」
本国アルカディア、
そしてフェニックス銀河団。
二つの絶対拠点が
同一の不落の
AS防衛網で結ばれたことで、
帝国の支配構造は
神話の域へと達した。
後方の万全なる
帰還と補強を終え、
聖国軍はいよいよ
El Gordoの
悪人首脳陣に対する
「最終処分」の執行へと
向かうのだった——。
本日 19:30 に投稿します。
【セレスティア通信】
シルヴィア軍(ε)と
ジュエダン軍(∞)の
複合運用ドクトリン
本国聖宮の総司令官
セレスティアが統括する、
二大軍勢による
複合戦術の解析結果は
以下の通りである。
機能の相互補完
(精密固定 × 空間収束)
シルヴィア軍(ε)が持つ
高精度な
「位相干渉・相殺(ITS ε)」
によって
敵の不確定な重力波形を
寸分違わず固定・拘束し、
そこへジュエダン軍(∞)の
「空間折り畳み・極限圧縮(ITS ∞)」
を叩き込むことで、
いかなる超質量の兵器であっても
周囲に被害を出さずに無力化する。
巧妙化する
敵兵器に対する即時順応
敵が
自壊覚悟の複合兵器や
暗黒物質の歪みを利用した
防衛策を講じた場合で
あっても、
S-オムニスの
超量子並列演算を
媒介とすることで、
2軍間の作戦立案
および実行は
0.00001秒の遅延もなく
一体として機能する。




