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第14話「無限(インフィニティ)の楔(くさび)」

第7部

セクター・インフィニティ外縁。


El Gordo(エル・ゴルド)の

中枢要塞都市を取り囲む

重力歪曲宙域において、

長らく沈黙を保っていた一角が、

突撃の波動とともに

圧倒的な存在感を現した。


——司令官ジュエダン、

および超弩級戦艦

『アスガルド∞』率いる

無限(∞)軍の出陣である。


「……第∞(インフィニティ)宙域の

 全展開完了。

 敵防衛網の外周ノード、

 すべてのロックを

 確認いたしました。」


ジュエダン軍・統合参謀本部。


超量子情報演算参謀部の

『IT∞-1』が、

無機質な響きで

予測演算データを提示する。


実務運用参謀部長の

『AS∞-1』は、

光彩センサを一定の周期で

明滅させ、

静かな音声で

戦術コードを書き換えた。


「敵は巨万の艦隊を盾に

 要塞の奥底へ

 籠(こ)もっているが、

 その全方位の質量配置は

 我が『ITS ∞』の

 無限位相空間計算の射程内。……

 全艦隊、陣形を

『無限の楔

(インフィニティ・ウェッジ)』へ移行。」


ジュエダン軍・

『超弩級戦艦アスガルド∞』司令室。


漆黒の司令席に

深く腰掛けていた司令官

ジュエダンは、

ゆっくりと眼を開き、

瞳を前方へ向けた。


「……長らく

 前線の静寂を

 楽しませてもらったが、

 そろそろ邪魔な盾を

 根こそぎ刈り取る時間か。」


ジュエダンが

静かに手を挙げる。


その微小なジェスチャーに

完全連動し、

S-オムニスの

超量子回線を介して、

配下の全艦艇が

まるで一糸乱れぬ

巨大な幾何学模様を

描くように駆動した。


「敵の

 自動造船プラントから

 吐き出された数だけの

 艦隊など、

 無限の位相に

 飲み込ませれば

 一瞬で霧散する。

 ITS ∞、

 空間歪曲の特異点を

 敵の防衛網中央に

 直撃させよ。……

 穿(うが)て、無限の楔(くさび)を。」


「了解!

 空間歪曲特異点、

 ジェネレート——!」


『超弩級戦艦アスガルド∞』の

艦首から放たれた

不可視の無限位相パルスは、

空間そのものを

折り畳みながら、

El Gordoが築き上げた

無数の「艦隊の盾」の

中核へと直接突き刺さった。


爆発音すらない。


敵の数千隻に及ぶ

盾の艦隊は、

無限の位相空間に

呑み込まれるように

一瞬で圧縮され、

文字通り無へと帰していった。


同刻、

全軍統率の要たる

覇王レグナの総旗艦。


「……レグナ様。

 ∞(インフィニティ)軍

 司令官ジュエダンによる

『無限の楔』作戦、完遂。

 敵の第一防衛盾宙域に、

 完全に巨大な

 突破孔が穿(うが)たれました。」


AI・rℓが

立体戦果図を

滑らかに点滅させ、

AI・rrが

厳粛な音律で報告を締める。


「吾郎軍、

 シルヴィア軍との

 連携包囲網も、

 これにより

 完全に完成いたします。」


戦術図を見下ろす

覇王レグナの厳かな顔容に、

確信が宿る。


「見事だ、ジュエダン。

 眠っていた無限の牙が、

 ついに

 その切れ味を証明したか。」


後方絶対拠点・

フェニックス銀河団の

聖王アーロンが

築いた無限の補給基盤。


そして、

アルカディア本国の

セレスティアが統(す)べる

全領域の秩序。


完全無欠に整えられた

絶対の布陣のもと、

4軍すべての歯車がかみ合い、

敵首脳陣が巣食う

最奥の要塞都市へと、

最後の包囲網が

音もなく絞り上げられていく——。


ジュエダン軍の

『無限の楔』によって

第一防衛盾が破られた直後、

El Gordo(エル・ゴルド)

統括評議会は

狂乱と焦燥の中で、

手持ちの全リソースを

注ぎ込んだ

土壇場の抗戦作戦を

展開し始めた。


「……警告。

 敵要塞都市の

 中枢プラント群が

 暴走状態へ移行。

 暗黒物質の過剰過給により、

 空間そのものを

 重力崩壊させる

『超質量崩壊防壁

(ダーク・クラッシュ・バリア)』

 を展開!」


ジュエダン軍・

統合参謀本部の『IT∞-1』が、

危険域に達した

空間歪曲ログを即座に更新する。


敵の作戦は

精妙かつ狂気に満ちていた。


自らの要塞都市の周囲を、

自壊すら辞さない

「超質量崩壊空間」で

覆い尽くし、

近づく聖国軍の艦艇を

重力圧縮で粉砕しながら、

その空間の歪みを

レンズとして

無数の重力収束波を

全方位へ

無差別放散させようというのだ。


数のみに頼っていた

従来の無謀な突撃とは

一線を画す、

巧妙かつ壊滅的な

巨大防衛ドクトリンであった。


だが、

この前例のない

巨大な脅威を前にして、

最前線の指揮系統に

動揺は皆無であった。


「参謀部(AS∞部・IT∞部)。

 シルヴィア軍の

『ITS ε』と『ITS ∞』の

 位相演算回路を直結せよ。

 敵の巧妙な策に対し、

 我が軍とシルヴィア軍の

 2重網をもって応じる。」


『超弩級戦艦アスガルド∞』の

司令席にて、

ジュエダンは静かに下命した。


同刻、

側衛宙域に展開する

シルヴィア軍・

『超弩級戦艦アスガルドε』の

司令室。


「了解いたしました、

 ジュエダン司令官。

 ε(エプシロン)の

 精密位相干渉網は、

 すでに

 ∞(インフィニティ)の

 空間圧縮パラメータと

 完全同期に入っています。」


司令官シルヴィアは、

威厳を湛えた声で

配下へ命じた。

読んでくださってます方々に

篤くお礼申し上げます。

ありがとうございます。


ブックマークを登録して頂きまして、

ありがとうございます。


評価ポイントをつけて頂きまして、

ありがとうございます。


リアクション頂きまして、

ありがとうございます。


明朝 7:30 に投稿します。


【セレスティア通信(1)】

ジュエダン軍(∞系列)の

戦術特性について


本国聖宮の総司令官

セレスティアが総括する、

無限(∞)軍の

運用ドクトリンの詳細は

以下の通りである。


無限位相空間制御(ITS ∞)


空間そのものを

数理的に折り畳み、

敵の質量やエネルギーを

局所的に

無効化・圧縮する

固有の戦術体系を持つ。


「無限の楔」陣形


敵がいかに

数のみを頼みに

艦隊の壁(盾)を厚くしようとも、

その防衛密度そのものを

逆手に取り、

一撃で

中核の特異点へ到達して

無力化する極限の

突破力に特化している。


長期沈黙の戦略的意図


あえて

前線の初期段階では

攻勢を控えさせ、

敵が全ての戦力を

深奥の要塞と

「盾の艦隊」に

集約させきった瞬間を

見計らって投入することで、

敵の防衛網を

一度の作戦で

完全に破綻させる

高度な時間差運用が

図られている。

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