第四幕 第十六章 【 神威の反転、あるいは下剋上 】
空を裂いた光の輪郭――使徒から放たれた『初期化』の光線は、触れたすべてのものを無へと還す絶対的な拒絶の輝きだった。
だが、その奔流はアルカディアの領空でピタリと止まる。
「……バカな。下級の被検体が放つ魔力が、創造主の権能を押し返しているだと……?」
使徒の思念波に、初めて明らかな「動揺」の色が混ざった。
当然だ。奴らはこの世界を「管理」してはいたが、この世界で這いつくばり、裏切られ、すべてを奪われた男がどれほどの執念でこの玉座にたどり着いたかを知らない。
「お前たちが上から見下ろしている間に、俺はこの地で王国を滅ぼし、システムを食らい、すべてのルールを俺の言葉に書き換えてきた」
俺は一歩、また一歩と空中へ歩み出る。
足元には魔力が足場を作り、重力さえも俺の支配下に屈している。
「俺の国を『初期化』するだと? 笑わせるな。この世界にあるすべてのエネルギーは、今や俺の支配権の延長線上にある。お前のその神威すらも例外じゃない」
俺は掌をさらに強く握り締めた。
【全属性変換】のスキルが、かつてないほどの激しい光を放つ。使徒の光の輪郭から流れ込む『初期化のプログラム』が、俺の魔力によって強制的に色を変え、黄金の支配の鎖へと変換されていく。
「【全属性変換】――『神の裁き』を『王の枷』へ反転!」
ジャキン、と空中で重い金属音が響いた。
無機質な光の塊だった使徒の四肢に、黄金の鎖が巻き付き、その身柄を地上へと引きずり下ろす。
ゴスッ! と、アルカディアの中央広場に、かつて「絶対者」気取りだった使徒が叩きつけられた。
周囲を取り囲む民たち、そしてエレナやルナといったかつての強者たちが、息を呑んでその光景を見守っている。
「ぐっ……、貴様、何者だ……! 人間ごときが、神の理に届くはずが……!」
使徒が這いつくばりながら、信じられないといった様子で声を震わせる。
俺は玉座から見下ろすように、冷徹に言い放った。
「俺はアルス。かつて無能と切り捨てられ、この世界に捨てられた男だ」
俺は地面にひれ伏す使徒の頭上に、ゆっくりと足を乗せた。
それは、神に対する絶対的な服従の証明。
「だが、いまやこの世界のルールはすべて俺のものだ。お前たちを作った『創造主』がどこにいるのか、今すぐここで吐いてもらおうか」
地上全土を支配した男が、ついに神々の領域へと牙をむく。
使徒の口から漏れ出た「創造主の居場所」のデータが、俺の脳裏にハッキリと焼き付けられた。
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