↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
128/153

第12話「天の威光(アーロン・サテライト・アンリミテッド)」

第7部


「……これで、

 フェニックス銀河団の

 民の安全は、

 完全に担保された。」


アーロンの手元で光る

S-オムニスのメインコンソールに、

全銀河・全恒星・全惑星の

正常データが青く満ちていく。


アーロンの視線は、

手元のS-オムニスを通じて、

さらに遠方——

El Gordo深部へと進撃する

覇王レグナ、

吾郎軍(α)、

シルヴィア軍(ε)、そして

ジュエダン軍(∞)の

前線戦力へと向けられた。


「セレスティアが

 帝国の全領土の治世に

 専念できるよう、

 我がこの後方を鉄壁となす。

 そして……

 前線で戦うレグナたちへ、

 無制限の補給と

 絶え間なき

 『後詰』を送り続けるのだ。」


「全属性変換」によって

精錬された膨大なダークマターと

反物質エネルギー、

そして補給物資が、

S-オムニスの

超量子転送ラインに乗って

前線基地へと即座に、

かつ途切れることなく

送出され始める。


後方・フェニックス銀河団の

絶対の安定と無限の後詰(ごづめ)。


本国・アルカディア帝国の

セレスティアによる

揺るぎない全領土の支配。


2つの

絶対的な軸が

完全に機能したことで、

前線のレグナ総帥率いる

遠征軍は、

何一つ懸念することなく、

El Gordoの深淵なる闇を

撃ち滅ぼすべく

前進を開始するのだった——。


*


フェニックス銀河団の

片隅に位置する、

ある美しい水と緑の惑星。


だが、

その地表では

平和の秩序が

大きく揺らいでいた。


大陸A、大陸B、大陸C。


それぞれの土地に君臨する

3つの超大国の首脳たちが、

自国の覇権と利権のみを

絶対正義と信じ込み、

周辺の小国や

一般人民に対して

身勝手な要求と

横暴な振る舞いを

繰り返していたのだ。


従わない小国の

民に対しては

容赦のない弾圧や

残虐非道な行いが加えられ、

もはや3大国間の利害対立は

全面戦争へと突入する寸前の

危険水域に達していた。


地表の民が

絶望と恐怖に震えていた

その瞬間——。


星系全体の空間が、

微かな超量子共鳴の

波動とともに揺らいだ。


恒星内の

すべての惑星を守護すべく

配置されていた

『AS-3』の背後。


その高次元位相の

影に潜んでいた主力艦数十隻と、

それに従う数千隻の駆逐艦が、

音もなく一斉に実体化。


それだけではない。


周囲の恒星系を巡る惑星々の

配備戦艦群までもが、

S-オムニスの

超量子転送ネットワークを介して、

一瞬にして

この紛争惑星の頭上へと

群れをなして押し寄せた。


大陸Aの上空、

大陸Bの上空、そして

大陸Cの上空。


文字通り

日食を思わせるほどの

圧倒的な艦影の群れが

太陽の光を遮(さえぎ)り、

地表一帯を

重厚な暗闇へと包み込んでいく。


惑星全土の空を覆い尽くした

無数の戦艦群。


その中心に、

神々しい黄金の光に包まれた

『聖王アーロン』の

巨大な姿が

幻影として投影された。


空を見上げた

3大国の首脳たちと、

地表を埋め尽くす

民衆の眼に、

その圧倒的な威厳が

飛び込んでくる。


——それは

恐怖による支配ではない。


逆らうことすら許されない、

絶対にして究極の

秩序そのものであった。


「自分たちの利害のために

 民を虐(しいた)げ、

 星の平穏を

 踏みにじる愚か者どもめ。」


空間のすべてを

震わせるような、しかし

静謐に満ちたアーロンの声が

惑星全土に響き渡る。


その神々しい御姿と、

上空を埋め尽くす

底知れない軍事力の威圧を

目の当たりにした瞬間、

3大国の首脳たちは

足の震えを抑えきれず、

玉座や執務室の床へと

膝をついた。


武器を構えていた

兵士たちも、

次々と銃器を取り落とし、

地面に

額を擦(す)り付けて平伏する。


戦争の瀬戸際にあった

3大陸の抗争は、

一発の銃弾すら

交えられることなく、

絶対なる者の一瞥(いちべつ)の前に

完全に凍りついたのだった。


地表の民は、

空を覆うアーロンの姿と、

その背後で静かに光る

守護艦隊を見上げながら、

深い安堵と畏敬の念に

包まれてひれ伏した。


フェニックス銀河団の

隅々に至るまで、

聖王アーロンの

慈悲と鉄槌の秩序は、

微塵の狂いもなく

行き渡っていた——。


*


フェニックス銀河団の

片隅にある惑星で起きた

3大陸間の抗争は、

配備されていたAS-3の

防衛艦隊の動員によって、

一瞬にして鎮圧された。


3大国の首脳たちが

恐怖と畏敬(いけい)のあまり平伏した

その一連の光景は、

S-オムニスの

自動防衛プロトコルが

自律的に処理した

結果に過ぎない。


もちろん、

聖王アーロン自身が

その星の小競り合いに

直接手を下したわけではない。


中枢の玉座に座する

アーロンは、手元の

S-オムニスコンソールに

流れてきた

「一惑星の紛争鎮圧完了」の

微小なテキストログを

一瞥(いちべつ)しただけであった。


「……自動防衛網の機能が

 正常に作動したか。

 惑星の民の間の乱れなど、

 ASシステムが

 自ら整えるのは当然のことだ。」


アーロンの関心は、

そんな星々の

日常的な揉め事には

微塵も向いていない。


いま、

彼の瞳に

映し出されているのは、

遥か前方の宙域——

El Gordo(エル・ゴルド)に

潜(ひそ)む未知の深淵と、

そこに挑む

遠征軍の最新動態であった。


「セクター・アルファ- 9 を

 平定したレグナや

 吾郎たちは、

 いよいよEl Gordoの

 真の深部、

 未知の空間歪曲領域へと

 踏み込む。……

 残党どもを束ねていた

 黒幕の正体、

 そしてその奥に隠された

 質量の本質を見極めねばならぬ。」


アーロンの手元で、

S-オムニスの青い光が

複雑な立体軌道を

描きながら明滅する。


フェニックス銀河団の秩序は

ASシステムによって

完璧に自動制御され、

本国・アルカディア帝国の

治世も

総司令官セレスティアによって

完璧に維持されている。


後方の憂いは

完全に断たれていた。


全軍の視線はただ一点、

El Gordoの深奥に潜む巨悪と、

未知なる決戦へと

向けられていた——。

明朝 7:30 に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。