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第9話「臨界の反転(エネルギー・リバース)」

第7部 vs EL GORDO 編

「了解。

 S-オムニス経由の

 超量子リンク、

 完全同期完了。」


シルヴィア軍の艦群から

放たれる高精度な

位相制御パラメータが、

吾郎軍の青い防衛網と

美しく重なり合う。


両軍勢が一体となった

強靭な包囲網は、

El Gordoが築こうとする

巨大要塞の周囲を、

まるで

不可視の罠のように

静かに、かつ確実に

締め上げていった。



その頃、

総旗艦に座す

覇王レグナは、

静まり返ったブリッジで

両機のAI副官から

差し出される

最新の作戦ログを

見下ろしていた。


「……レグナ様。

 吾郎軍ならびに

 シルヴィア軍より、

 敵の新陣形に対する

 逆迎撃作戦の立案データが

 届いております。」


AI・rℓ が可視化された

立体ログを提示し、

AI・rr が続いて

言葉を重ねる。


「両軍の

『ITS α』および

『ITS ε』は完全同調。

 敵の重力収束砲の

 チャージ完了と同時に、

 内部からの

 位相逆流爆破を

 執行する構えです。」


レグナは短く頷いた。



後方絶対拠点

「フェニックス銀河団」の

中枢に坐す聖王アーロンの

厳かな威厳と、

アルカディア本国の聖宮で

セレスティアの澄んだ守護。


その

揺るぎない基盤に支えられ、

前線のレグナ総帥、

そして両軍の

司令官たちが仕掛ける

次なる一撃は、

El Gordoの命運を

完全に断つための

静かなる処刑の

カウントダウンを

始めていた——。



セクター・アルファ-9の

外縁宙域。


El Gordo(エル・ゴルド)

本隊が構築した

超巨大重力収束砲。


数千隻の大型艦艇が

重力固定アンカーによって

連結され、

その中心部には

星系を破壊するほどの

暗黒のエネルギーが

不気味な渦を巻いて

収束しつつあった。



「……敵(EL GORDO側)

 要塞砲、

 エネルギー充填率

 98.7%に到達。

 発射シークエンスの

 最終段階に入ります。」


吾郎軍・統合参謀本部。


『ITα-1』が、

カウントダウンのログを

0.0001秒単位で更新する。


『ASα-1』は、

実務ラインの実行コードを

送信した。


「敵砲身軸線

 および

 エネルギー偏向ノードの

 完全特定完了。……

『ITS α』および

『ITS ε』による

 位相逆流干渉

(リバース・フェーズ)

 シークエンスを起動。」


同刻、シルヴィア軍・

『超弩級戦艦アスガルド ε 』

司令室。


「『ITS ε』、

 吾郎軍の『ITS α』と

 量子同期率100%に達す。

 位相干渉格子の重畳(ちょうじょう)を

 完了いたしました。」


AI副官の報告を受け、

シルヴィアは命じた。


「放て。

 敵の傲慢が生み出した

 エネルギーを、

 そのまま自らの

 破滅へと還(かえ)すのです。」


「了解。

 位相逆流パルス、一斉照射!」




El Gordo中央本陣・要塞要衝。


「重力収束砲、充填完了! 

 ターゲット、

 吾郎軍およびレグナ本隊……

 撃てぇ指示を——!」


本隊司令官ギガルの叫びが

響き渡るより速く、

吾郎軍とシルヴィア軍の

『ITS』網を通じて送出された

超高密度の位相歪曲パルスが、

敵の要塞砲の

中心核(コア)を直接貫いた。


次の瞬間、

放たれるはずだった

凄絶な重力波が、

ノードの歪みによって

逆流(リバース)。


圧縮された

膨大なエネルギーは、

砲身として連結されていた

数千隻の艦艇へと

一気に伝散・

爆発的に自爆を誘発した。


閃光もなく、音もない。


広大な宙域を

埋め尽くしていた

El Gordoの巨大要塞砲は、

自(みずか)らが溜(た)め込んだ

破滅の質量によって

内側から崩壊し、

暗黒のひずみの中へと

丸ごと

削り取られるように消滅した。



吾郎軍・

『超弩級戦艦アスガルドα』

司令室。


「……敵超巨大要塞砲、

 内部崩壊を完璧に確認。

 関連艦艇およそ4,000隻の

 全滅・消失を

 確認いたしました。」


専属副官が

ホログラム盤の

戦況ログを更新し、

吾郎へ一礼した。


吾郎は腕を組み、

眼鏡の奥の眼差しを

静かに光らせたまま、

落ち着いた

響きのある声で応じた。


「大質量のエネルギーを

 一点に集めれば、

 それだけ

 内部の歪みは脆(もろ)くなる。

『ITS α』と『ITS ε』の

 正確無比な

 連動演算の勝利だな。……

 敵の主力構造は

 これで完全に崩壊した。」



同刻、

全軍統率の要たる

覇王レグナの総旗艦。


「……レグナ様。

 吾郎軍および

 シルヴィア軍による

 位相逆流干渉の完遂、

 ならびに

 敵要塞砲の全滅を確認。

 S-オムニス経由の

 最新ログが入りました。」


左副官役のAI・rℓが、

空中へ提示した

美しく青い立体戦果ログを

滑らかに点滅させ、

右副官役のAI・rrが

続いて言葉を重ねる。


「El Gordo本隊の

 組織的戦闘能力は

 極限まで低下。

 我が方の被害、皆無です。」


戦術図を見下ろす

覇王レグナの厳かな顔容に、

揺るぎない確信が宿る。


「うむ。

 吾郎とシルヴィアの機能美、

 実に見事であった。……

 もはや敵に

 抗(あらが)う術(すべ)なし。

 残存勢力の収拾に入れ。」



後方絶対拠点

「フェニックス銀河団」にて

厳(おごそ)かな威厳をたたえて

見守る聖王アーロン。


そして

アルカディア本国の「聖宮」にて

澄んだ声をもって

国の絶対なる守護を維持する

総司令官セレスティア。


後顧の憂いなき

完璧なる指揮系統のもと、

聖国軍の放つ

圧倒的な合理性と機能美は、

El Gordoの野望を

完全に打ち砕き、

宙域に

絶対の秩序を

もたらそうとしていた——。

本日 19:30 に投稿します。

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