第7話「逆迎撃作戦」
第7部 vs EL GORDO 編
セクター・アルファ-9。
2万隻の駆逐艦による
圧倒的な一斉射撃が残した
細かな宇宙塵が、
漆黒の宙域に静かに拡散していく。
旧王国の残党を呑み込み、
一瞬にして消し去った
覇王レグナの烈火の如き一撃は、
El Gordoの全軍に対して
強烈な威圧を刻み込んだ。
「……敵先兵部隊、完全に消滅。
残存反応ゼロ。戦闘終了を確認」
吾郎軍・統合参謀本部。
超量子情報演算参謀部の
『ITα-1』が、
戦果の
クロージングデータをまとめる。
実務運用参謀部長の
『ASα-1』は、
光彩センサを一定の周期で
明滅させ、
即座に報告書の作成
シークエンスを起動した。
「レグナ様による
旧王国残党の粛清、完遂。……
ただちに
戦果の最終データを可視化し、
後方絶対拠点への
正規報告ルートへ打電する」
吾郎軍・
『超弩級戦艦アスガルドα』
司令室。
「司令官。
レグナ総帥による
敵先兵の殲滅、
および全戦域への
布告データの記録が
完了いたしました。」
専属副官が
ホログラム上の戦闘ログを
整然と提示する。
吾郎は腕を組み、
重みのある
落ち着いた声で応じた。
「レグナ様の怒りは
もっともだ。
父であられる
聖王アーロン様の
尊厳を貶める者どもに、
慈悲の余地などない……。
ITα部、直ちに
後方絶対拠点
『フェニックス銀河団』の聖宮へ、
本件の
正式な報告データを送出せよ。」
「了知いたしました。
報告書、
超量子回線にて転送開始。」
同刻。
3,500万光年の彼方に位置する
後方絶対拠点・
フェニックス銀河団。
比類なき広大さと
厳かな静寂に包まれた
銀河団の中枢首座にて、
聖王アーロンは
静かに玉座に座していた。
吾郎軍からの
正式な報告回線が
開かれるよりコンマ数秒早く、
全空間を網羅する
超量子知能『S-オムニス』の
完全なる同調ネットワークが、
セクター・アルファ- 9 の全容を
アーロンの脳裏へと
完璧に描き出していた。
——レグナが動いたか。
旧王国の残党どもを、
一撃で塵に帰したか。
報告を聞くまでもなく、
息子の怒りと
その圧倒的な武功のすべてを、
『S-オムニス』の
輝くログを通じて
アーロンは余すところなく
把握していた。
「……父の過去を背負い、
我が不当な追放の屈辱を
自らの手で雪いでくれたか」
アーロンが発した厳かな声が、
静謐な空間に
心地よい重みを持って響き渡る。
そこに私情による驕りや
動揺は微塵もない。
ただ絶対的な支配者としての
威厳と、
血族に対する確かな
信頼のみがあった。
そこへ、
アルカディア本国の聖宮にいる
セレスティアから、
同期回線を介した
澄んだ声の通信が重なる。
『アーロン様。
前線より、
吾郎軍および
レグナに関する
戦闘終了の全データを
受信いたしました。
旧王国残党の粛清、
見事にございます。
本国よりの
防衛・支援ラインに
異常なし。
後顧の憂いは一切ありません』
セレスティアの
揺るぎない報告を受け、
アーロンは深く頷いた。
「うむ。
本国は
セレスティアが完璧に守護し、
前線は
レグナと吾郎が鉄槌を下す。
我が聖国の機能美に、
狂いなど生じうるはずもない。」
3,500万光年の距離を超え、
聖王アーロン、寵姫セレスティア、
そして
最前線で猛威を振るう
覇王レグナと吾郎軍が、
S-オムニスの
超量子網によって
完璧にひとつに結ばれる。
敵対するEl Gordoの群れが
どれほど膨れ上がろうとも、
この揺るぎない
絶対秩序の前には、
ただ滅びへの道のみが
残されていた——。
セクター・アルファ-9。
覇王レグナ総帥の怒号と
2万隻の駆逐艦による
一斉射撃が残した
衝撃の余波は、
El Gordoの
中央本陣へ
絶望的な沈黙を
もたらしていた。
旧王国の残党が
文字通り
宇宙の塵と消えた光景は、
数のみを頼みに
進撃してきた敵軍の
士気を完全に砕いていた。
「……敵本陣、
全面的な
全方位後退行動を停止。
各宙域において、
防衛陣形の
再構築および
重力砲の充填
シークエンスを確認」
吾郎軍・統合参謀本部。
超量子情報演算参謀部の
『ITα-1』が、
平坦な合成音声で
敵の
微小な挙動の変化を
拾い上げる。
実務運用参謀部長の
『ASα-1』は、
光彩センサを
一定の周期で点滅させ、
淡々と
実務ラインの
分析結果を出力した。
「敵は
個別の突撃による
力押しを断念。
今度はセクター全域を
要塞化し、
超長距離の
重力収束砲による
一斉飽和攻撃へ
移行する構え。……
ただちに
予測迎撃データを
吾郎司令官へ送信。」
吾郎軍・
『超弩級戦艦アスガルドα』
司令室。
「司令官。
参謀本部
(ASα部・ITα部)より
緊急の
分析データが届きました」
専属副官が
静歩で吾郎に歩み寄り、
ホログラム空間に展開された
敵の要塞化陣形を指し示す。
「El Gordo本隊は、
セクター・アルファ-9の
全外縁に
重力固定アンカーを打設。
全艦艇を連結し、
本星級に匹敵する
超巨大重力収束砲の
構築に入っております。
発射までの
猶予、およそ12標準時。」
吾郎は
重みのある声で応じた。
「数で押せぬと見るや、
今度は
宙域そのものを
要塞に変えて
大質量砲撃で
焼き払う算段か。……
だが、
どれほど巨大な
砲であろうと、
充填プロセスにおける
エネルギーの歪みは隠せない」
吾郎は
落ち着いた眼差しを
戦術図に向け、
明確な下命を下した。
本日 19:30 に投稿します。




