第6話「覇王レグナの業火」
第7部 vs EL GORDO 編
「ギガル閣下、
このままでは
後続の
第2・第3陣形まで
干渉に巻き込まれます!」
「全軍、一時後退!
セクター・アルファ- 9 の
干渉領域から脱出し、
陣形を再構築せよ!」
吾郎軍・統合参謀本部。
「……El Gordo本隊、
後退行動を開始。
全宙域において
空間穿孔反応の減衰を確認。」
『ITα-1』の光彩センサが
一定の周期で青く明滅し、
解析結果を提示する。
実務運用参謀部長の
『ASα-1』は、
人間的な情動を排した
平坦な音声で追認した。
「敵の物理的圧迫行動は
完全に挫折。……
ただちに
戦果ログおよび
空間データを生成し、
可視化コードを送信。」
吾郎軍・
『超弩級戦艦アスガルドα』
司令室。
「司令官。
敵15,000隻の撤退を
確認いたしました。
『二重格子遮断陣』による
防衛戦線は完全に
維持されております。」
専属副官が
静歩で進み出て、
ホログラム端末の
最新戦況を提示した。
吾郎は
落ち着いた声で応じた。
「シルヴィア軍との連携が
見事にハマったな。
『ITS α』と『ITS ε』の
量子同期に
一切の遅延がなかった
証拠だ。……だが、敵は
撤退したとはいえ
戦力を無制限に
投入可能な巨体。
次なる一手はより
偏執的なものになるだろう」
「ただちに
後続警戒態勢へ
移行いたします」
同刻、
覇王レグナの総旗艦。
「……レグナ様。
吾郎軍ならびに
シルヴィア軍の
『二重格子遮断陣』により、
El Gordo本隊15,000隻の
力押しを完全に粉砕。
敵艦隊の後退を
確認いたしました。」
左副官役のAI・rℓが、
S-オムニス経由の
透明感ある最新ログを
美しく空中へ展開し、
右副官役のAI・rrが
続いて言葉を重ねる。
「我が方の被害、皆無。
α系列とε系列の参謀AI群、
ならびに
『ITS α』『ITS ε』の
量子連携は極めて良好です」
戦術図を見下ろしていた
覇王レグナは、
胸の奥から響くような
重みのある声音で頷いた。
「見事な統率だ。
吾郎の緻密なる盤石と、
シルヴィアの
迅速なる後詰……
まさに
我が軍が誇るべき
機能美の体現と言えよう」
レグナの視線は、
遥か後方の
星海へと向けられた。
後方絶対拠点
「フェニックス銀河団」にて
厳かな威厳をもって
鎮座する聖王アーロン。
そして
アルカディア本国の
「聖宮」にて
澄んだ声をもって
全軍の状況を掌握しつつ、
本国の絶対防衛に専念する
セレスティア。
後顧の憂いが
皆無であるからこそ、
前線のレグナ総帥と3軍は、
いかなる巨万の敵であろうとも
揺らぐことなく
支配し続けるのだった——。
セクター・アルファ-9。
El Gordo
本隊の撤退後、
吾郎軍(α系列)の
統合参謀本部
(ASα部・ITα部)が
敵残存通信コードの解読を
進めていた。
その最中、
超量子情報演算参謀部
『ITα-1』が、
常軌を散逸させた
特殊な暗号通信を捕捉する。
「……解析完了。
敵先兵部隊の内部ログより、
かつて聖王アーロン様を
王国より『追放』し、
その愚行ゆえに
自滅・破滅した旧王国の
残党組織を確認。
彼らはEl Gordoへ逃げ込み、
現在も聖王様を
『危険な魔王』と
虚偽の吹聴を重ねつつ、
先兵として前線に
組み込まれている模様。」
実務運用参謀部長の
『ASα-1』は、
一切の感情を挟むことなく
可視化ログを作成し、
即座に
覇王レグナの総旗艦
および吾郎司令官へ
同時打電した。
全軍統率の要たる
覇王レグナの総旗艦。
「……レグナ様。
吾郎軍より、
敵先兵部隊に関する
極めて特殊な
即時報告が入りました」
左副官役のAI・rℓが、
S-オムニス経由で
解析された旧王国残党の
識別ログを
美しく空中へ提示し、
右副官役のAI・rrが
続いて
厳粛な音律で言葉を重ねる。
「かつて
聖王アーロン様を
不当に追放し、
崩壊した旧王国の
残党が
El Gordoに逃走。
アーロン様を
『危険な魔王』と騙り、
敵の先兵として
参戦していることが
判明いたしました。」
報告を聞くや否や、
総旗艦の
重厚なブリッジの空気が
一変した。
思索の座から立ち上がった
覇王レグナの全身から、
圧倒的な圧迫感とともに
烈火のごとき怒りが溢れ出る。
「……うぬ。小賢しい者どもめ」
低く地鳴りのように響く
レグナの声に、
二機のAI副官の光彩が
一瞬静かに明滅した。
「父上を
追放したのみならず、
いまなおその尊厳を
穢すか……!
愚劣なる亡者どもめ、
我が自ら叩き潰してくれる!」
覇王レグナは全軍に向け、
即座に
最前線への直接進出を命じた。
セクター・アルファ-9前線。
『超弩級戦艦アスガルドα』の
ブリッジにいた吾郎のもとへ、
レグナ総帥の直達通信が入る。
「吾郎軍は下がっていよ」
威厳と凄絶な怒りを宿した
レグナの厳かな声に対し、
吾郎は静かに礼を執り、
全艦隊に
後退シークエンスを指示した。
漆黒の宇宙空間を割って、
覇王レグナが座乗する
巨大なる総旗艦と、
それを厳然と固める
3,000隻の主力艦隊が姿を現す。
そのうちの200隻の主力艦が、
戦闘の火蓋を切るべく、
El Gordo先兵部隊の眼前に
泰然と展開された。
主力艦1隻につき100隻、
総勢2万隻におよぶ
高速駆逐艦群が、
200隻の主力艦の左右に従い、
完璧な機能美をもって
全方位展開を完了する。
レグナは全宙域、
および
El Gordo全陣営の
全波線へ向けて、
直接広域通信を開放した。
「全軍に布告する!
かつて、
父・聖王アーロンを
王国から追放し、今も
『危険な魔王』と
吹聴している輩が、
おのれ等の軍に
加わっているという。
聖王・アーロンの子、
覇王・レグナが、
今から父の受けた屈辱を
雪いでみせる。
巻き添えを喰いたくなくば、
とっとと失せろ!!!」
全宇宙を震撼させるごとき
レグナの布告が
轟き渡ると同時に、
レグナは駆逐艦群へ
絶対の攻撃許可を下した。
「全艦、
主砲開放——討ち払え!」
次の瞬間、
主力艦200隻に従う
2万隻の駆逐艦が
一斉に艦砲射撃を開始した。
宇宙空間を
白熱の光流が埋め尽くす。
対消滅光束、
高密度重力波、
そして
位相歪曲砲が束となり、
El Gordoの先兵部隊および
旧王国残党の陣列を
正確無比に貫いた。
回避も、防御も、
悲鳴すら許されない。
先ほどまで目の前で
巨大な陣形を誇っていた
敵艦隊は、
文字通り一瞬にして
跡形もなく消滅した。
広大な
暗黒の宙域に残されたのは、
ただ静かに漂う
無数の宇宙の塵と、
絶大な威厳をもって佇む
覇王レグナの艦隊のみであった——。
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