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第2話「深遠の蠢動(しゅんどう)」

第7部 vs EL GORDO 編

「……北方宙域における

先鋒隊500隻の消失データ、

解析終了」


El Gordo(エル・ゴルド)

中央本陣。


巨大なる

超主星級要塞旗艦の

暗鬱(あんうつ)な作戦室にて、

参謀将校の

震える声が静寂を切り裂いた。


「我が方の強行突撃に対し、

敵は

実弾はおろか

高出力光学兵器すら

使用しておりません。


突撃波の空間座標に対し、

局所的な位相歪曲を

精密に重畳(ちょうじょう)……


結果として、

自陣の推進エネルギーが

内側から

自爆を誘発した模様です。」


重厚な司令座に

深々と腰掛けた

本隊司令官ギガルは、

頬を片手で支えたまま、

眼前に浮かぶ

戦闘ログのホログラムを

鋭い眼光で見つめていた。


「一発の弾丸も撃たずに

500隻を自爆させたか。……

あらかじめ

こちらの推進軸と

エネルギー波長を

極限まで読み切って

いなければ不可能な計算だ。」


ギガルは

低く重みのある声音で呟き、

立ち上がった。


「フェニックス銀河団の

深奥に潜む超演算体……

あるいは、

それを操る司令官の仕業か。

ふん、

前線に出張ってきた

だけのことはある。

だが、

ひとつのセクターに

集中照射を行った

ということは、

それだけ

局所的な演算リソースを

割いたということでもある。」


ギガルは

巨大な星系図上の

「セクター・アルファ-北方」

に隣接する

3つの宙域へ視線を移した。


「東方・西方・中央の

各戦区へ

同時多角侵攻を開始せよ。

いくら

完璧な演算を誇ろうとも、

複数宙域における

同時多発的な歪曲制御

には限界が生じるはずだ。」



同刻、


セクター・アルファ-9

(吾郎軍・統合参謀本部)。


「……El Gordo本隊に動きあり。

東方、西方、および中央の

3宙域において、

計2,000隻規模の

同時空間穿孔反応を検知。」


超量子情報演算参謀部の

『ITα-1』が、

無機質ながら

正確なテンポで

状況変化を報告する。


「S-オムニスによる

予測演算完了。敵は

先の北方宙域における

局所照射パターンを分析し、

処理能力の限界点を

試す目的で

多角同時侵攻を選択した模様。」


実務運用参謀部長の

『ASα-1』は

光学センサの光彩を

一定の周期で点滅

させながら平坦に応答した。


「多角侵攻か。

実務ライン(ASα部)としての

艦隊再配置アルゴリズムは

展開可能。……

ただちに可視化ログを作成し、

司令官専属副官へ伝達せよ。」


「了解。即時伝達」



吾郎軍・

旗艦『アスガルドα』司令室。


「司令官。

統合参謀本部

(ASα部・ITα部)より

緊急の分析データ

および作戦提案が届きました。」


専属副官が静歩で近づき、

ホログラム端末に

3次元戦術図を展開した。


「El Gordo本隊が

東・西・中央の

3宙域へ向けて

同時侵攻を開始。

ITα部ならびにS-オムニスは、

これらを

個別に相殺するのではなく、

空間歪曲格子を

3宙域全体に

多重網状展開する

【三位一体格子遮断陣】の

適用を提案しております。」


吾郎は腕を組み、

眼鏡の奥にある眼差しを

静かに光らせた。


「敵は

こちらの処理能力を

圧迫する狙いか。……

だが、

S-オムニスの並列演算を

浅く見てもらっては困るな。」


吾郎は

確かな自信を湛(たた)えた

落ち着いた声で命じた。


「【三位一体格子遮断陣】の

展開を承認する。

ASα部には

各艦隊の連携補正を

即時実行させよ。

前線のFLα部には、

引きつけてからの

全面歪曲照射を許可する。」


「了解いたしました!」


副官が一礼し、

即座に

司令部回線へ

承認コードを打電する。



同時刻、


後方絶対拠点

「フェニックス銀河団」

においては、

同期された

超AIネットワークを通じて

この多角侵攻のデータが

完璧に可視化されていた。


聖王アーロンが見守る中、

前線の作戦指揮はすべて

吾郎司令官の手に

委(ゆだ)ねられている。


ミリ秒の遅延もなく

連動する参謀AI群と、

人間たる司令官の

揺るぎない決断。


El Gordoの

多角侵攻を迎え撃つべく、

吾郎軍の

巨大な陣形が

静かに動き始めた——。

明朝 7:30 に投稿します。


【星屑と覇道の叙事詩】


「シルヴィア&吾郎賛歌」

(月影の祈りと薔薇の少年)


重圧なる鋼鉄の扉が開き、

次元の霧を

切り裂いて降り立つ二人


プラチナブロンドの


髪を風になびかせ、


一輪の薔薇を抱く吾郎



覚醒を遂げた


月影の巫女


シルヴィアの祈りが、


星見塔の空を包み込む――



慈しむ 君のまなざし 受けるとき

迷いの子羊 救われにけり



傷ついた記憶も、


かつての戦乱の悲しみも、


すべては優しき光の中へ


汽笛の轟音とともに届くのは、


世界を慈しむ静かな愛の調べ


アーロンが護り抜いた


庭園の深部で、


二人の絆は気高く咲き誇る――



救いとは 汝がその手に触れること

我が覇道さえ 色を変うるよ



ITSの車輪が回転し、


次元の狭間から溢(あふ)れ出す


石炭と星の残り香


ジュエダンの広大な大地で、


紛争の火種を鎮(しず)める


清らかな微笑み


弱きを救い、


傷を癒(い)やす二人の姿は、


帝国の慈愛を象徴する光となる――

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