第1話「北方宙域の遭遇戦」
第7部 vs EL GORDO 編
フェニックス銀河団から
3,500万光年出張った
絶対前線遮断ライン——
その最北端に位置する
「北方宙域
(セクター・アルファ-北方)」。
暗黒の
星間物質が渦巻く
極寒の空間にて、
前線実行艦隊(FLα部)の
無人哨戒機が
異常な空間歪曲波紋を
捉えた。
「……警報。
北方宙域・座標NX-092にて、
次元穿孔反応を検知。
El Gordo
北方突撃先鋒艦隊、
計500隻が出現」
前線指揮艦の艦橋で、
有機無機ハイブリッドAI
『FLα-1』の
平坦な合成音声が響く。
「敵艦隊、全周に
高出力重力装甲を
展開しつつ加速。
我が方の哨戒線を
力押しで突破する構え。……
直ちにITα部へ報告。
『北方宙域にて
El Gordo先鋒群と遭遇。
即時戦闘行動への移行
およびS-オムニスの
戦術展開コードの承認を要請』」
量子通信は0.001秒で
吾郎軍・統合参謀本部へ届いた。
吾郎軍・統合参謀本部。
「……FLα-1からの
遭遇報告および
戦術申請を受信」
超量子演算参謀部のAI
『ITα-1』が、
S-オムニスを全速駆動
させながら
最適解を即座に叩き出す。
「敵の重力装甲は
正面突破を狙う
極太の突撃陣形。
正面からの相殺では
全エネルギーを摩耗する。
S-オムニスの最適解は
【アルファ-
北方集束照射作戦】。
敵の推進軸のみを歪曲させ、
自壊を誘発する」
実務運用参謀部長の
『ASα-1』が
重厚な駆動音とともに報告。
「よし。
ただちに司令官専属副官へ
暗号伝達。
吾郎司令官の決裁を仰ぐ」
吾郎軍・
旗艦『アスガルドα』司令室。
「司令官!
統合参謀本部
(ASα部・ITα部)より
緊急報告です!」
専属副官が
暗号端末を可視化し、
吾郎へ提示する。
「北方宙域にて
El Gordo先鋒500隻と遭遇!
敵の強行突撃に対し、
ITα部およびS-オムニスより
【アルファ-北方集束照射作戦】
の
即時承認が申請されています!」
吾郎は腕を組み黙考。
ホログラム上に展開された
北方宙域の立体戦術図を
見つめた。
敵の突撃ベクトル、
S-オムニスが弾き出した
0.0001秒単位の照射ポイントが
青い光線となって示されている。
「敵の勢いを利用して
自爆させるか。
……うむ。 合理的だ」
吾郎は命じた。
「【アルファ-北方集束照射作戦】
を承認する。
FLα-1に戦闘開始を指示。……」
「ハッ! 直ちに伝達いたします!」
北方宙域。
「司令官より作戦承認下達!
FLα-1、
S-オムニス北方集束コード展開!」
FLα-1の号令とともに、
潜伏していた
100隻の無人駆逐艦から、
高密度の位相歪曲レーザーが
一斉に照射された。
狙いは
敵艦隊の前面ではなく、
推進機関が位置する
極小の空間点。
「な……なに!?
空間が……歪む……!?」
El Gordo先鋒旗艦の艦長が
叫んだ瞬間には、
すでに遅かった。
自誇する
強力な重力推進波が、
S-オムニスの計算通りに
180度屈折し、
自艦隊の装甲を
内側から引きちぎったのだ。
突撃のエネルギーを
そのまま
破壊孔へと変換された
El Gordoの500隻は、
一発の実体弾を
撃ち込まれることもなく、
次々と
空間の歪みに呑まれて
自壊・爆沈していった。
「……敵先鋒艦隊、
89%の消滅を確認。
残存勢力、
後方へ反転・離脱を開始」
FLα-1は
一切の情感を交えずに
ログを更新する。
「ITα部およびASα部へ連絡。
『北方宙域の遭遇戦、
第一段階完了。
敵先鋒を撃破。
戦闘状況ログを送信』」
中央総旗艦
『アスガルド』・総司令室。
「……レグナ様。
吾郎軍より
北方宙域における遭遇戦の
即時報告が入りました」
左副官役のAI・rℓ(ロボット)が
S-オムニス経由の最新ログを
美しく提示し、
右副官役のAI・rrが
続いて言葉を重ねる。
「吾郎司令官の即断と
S-オムニスの集束演算により、
敵先鋒500隻を
最小限のエネルギーで
全滅・後退させました。
我が方に被害なし、です」
艦長席に座す総司令官レグナは、
峻烈な瞳で戦況図を見つめ、
静かに頷いた。
「見事だ。
新システムによる報告と
S-オムニスの連携……
El Gordoとの
決戦の火蓋を切るに相応しい
一勝である」
レグナの声が、
全軍の統合指揮網へと
静かに響き渡っていった——。
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本日 19:30 に投稿します。
【セレスティア通信】
参謀部(AS部・IT部)の
略語解説と指揮連絡体制
吾郎軍の参謀各部
(アルファ系列)の
名称と、
その組織的役割について。
■ 参謀部の略称と正式名称
ASα部
(アズガルド・ストラテジーα部 /
Asgard Strategy Div. α)
正式名称:
アズガルド実務運用参謀部
役割:
艦隊の陣形維持、
展開制御、
実務運用の指揮を担当。
現場の物理的な運用・
行動を統制する
「実務派」のAI参謀機構。
ITα部
(アイティエス・テクノロジーα部 /
ITS-Technology Div. α)
正式名称:
超量子情報演算参謀部(ITSα部)
役割:
超量子知能「S-オムニス」の
データ管理、
空間歪曲解析、
戦術演算コードの策定を担当。
膨大なデータを
ミリ秒単位で処理する
「頭脳派」のAI参謀機構。
FLα部
(フロントラインα部 /
Frontline Div. α)
正式名称:
前線実行艦隊部
役割:
最前線
(セクター・アルファ-9等)で
哨戒・
遮断・
戦闘行動を
直接実行する
無人駆逐艦群
および先鋒旗艦のAI機構。
■ 聖国軍における
「指揮・伝達体系
(チェーン・オブ・コマンド)」
現場(FLα)で発生した事象は、
ミリ秒単位で
「情報(ITα)」と
「実務(ASα)」の双方へ伝達され、
S-オムニスによる最適解とともに
司令官へ上申される。
司令官の決裁は
即座に
参謀部を経て
現場へと送られ、
さらに
その戦闘成果は
最高統括
(覇王・レグナ総帥)
へ至るまで、
即時共有される。




