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第23話「フェニックスの神臨と新なる不滅の鉄壁」(後編)

第6部

ホログラムのアーロンは

満足そうに肯くと、

自らの座艦の艦長席へと

深く腰掛けた。


『これより、

 我も直ちに

 フェニックス銀河団へと

 跳躍する。

 吾郎、シルヴィア、

 ジュエダンたちの待つ

 現場にて合流し、

 戦局のすべてを掌握するぞ』


「御意!

 フェニックスの地にて

 お待ちしております!」


通信が静かに遮断される。


アーロンの乗る旗艦と、

新たに創出された

S-オムニス搭載の親征艦隊が、

光の渦となって

時空の跳躍を開始した。


フェニックス銀河団という

広大な要衝を舞台に、

聖国の全威光が

集結しようとしていた。


漆黒の宇宙に、

圧倒的な高密度質量と

超巨大ブラックホールの

重力波が脈動する

フェニックス銀河団。


その中央集結宙域において、

吾郎、シルヴィア、

ジュエダンの三人は、

旗艦のブリッジで

息をのむような

緊張感の中にいた。


「吾郎……

 10万分の1単位の

 計算の狂い、

 さらに広がっているのでは

 ないかしら?」


アスガルド ε の

ホログラム越しに、

シルヴィアが

可憐な眉をひそめて

問いかける。


吾郎は

眼鏡のつるを指で押さえ、

ITS α の

メインコンソールに

次々と浮かび上がる

異常数値を

苦々しく見つめていた。


「ああ、その通りだ。

 俺たちの

 双艦のセンサーが捉えている

 空間座標と、

 ITS α が演算する

 物理法則の間に、

 決定的な『乖離(かいり)』が

 生じ始めている。

 単なる重力波の乱れじゃない。

 まるで何者かが、

 このフェニックス宙域の

 空間そのものを

 意図的に捻じ曲げ、

 現実の数値を

 書き換えているかのような……」


「そんな不条理なことが……!

 私たちの

 防衛陣形や重力制御も、

 数値そのものを

 狂わされてしまえば、

 正常に機能しなくなって

 しまいます!」


アスガルド ∞ から届く

ジュエダンの声にも、

隠しきれない焦燥が

混じっていた。


三人が

それぞれの戦場で

経験を積み、

自信を持って

集結させたこの要衝で、

彼らの知略や防御の前提を

揺るがす不気味な影——

『El Gordo』の歪曲の策士・

ギガルの手が、

着実に伸ばされていたのだ。


「俺たちがいくら

 補正計算を入れても、

 敵の歪曲速度に追いつかない。

 このままでは、

 本格的な侵攻が始まった瞬間、

 俺たちの艦隊は

 互いの位置を見失い、

 陣形が瓦解(がかい)する……!」


吾郎の額から一筋の冷や汗が

伝い落ちた、その時であった。


宙域全体の空間が、

まるで

巨大な鐘が鳴り響いたかのように

重厚に振動した。


『——全機、畏(おそ)れよ。

 聖王陛下の御臨幸(ごりんこう)である』


厳(おごそか)かなアナウンスが

三艦の全回線に

響きわたると同時に、

フェニックス銀河団の

漆黒の時空が、

眩(まばゆ)いばかりの

純白と黄金の光となって

大きく裂けた。


光の裂け目から姿を現したのは、

聖王アーロンの乗る神聖旗艦。


そして、

その背後に従うのは、

幾千、幾万の輝きを放つ

超巨大艦隊であった。


「あ……アーロン様……!」


「聖王陛下……!」


三人が言葉を失って

感涙を浮かべ、

画面越しに深く膝(ひざ)を折る。


アーロンの威風堂々たる姿が、

三人の双艦(アスガルド α、ε、∞)の

ブリッジに

ホログラムとなって降臨した。


その瞳には、

弟子たちの困惑と

焦燥のすべてを見通した

深遠な慈愛と、

絶対の自信が宿っていた。


「吾郎、シルヴィア、ジュエダンよ。

 よく耐えた。

 10万分の1の歪み……

 ギガルが仕掛けた

 不条理な空間変調に、

 よくぞ気づき、

 陣形を維持し続けたな」


アーロンの朗々とした声が、

焦る三人の心を

穏やかに静めていく。


「アーロン様、

 申し訳ございません。

 私たちの計算と知能、

 そして

 防衛技術をもってしても、

 この空間の歪みを

 根本から抑え込むことが

 できず……」


頭を下げる吾郎に対し、

アーロンは優しく首を振った。

明朝 7:30 に投稿します。


【星屑と覇道の叙事詩】


「ルナ&エレーナ賛歌」


~双翼の忠臣と鉄壁の後詰め~


教壇の静寂(しじま)を抜け、


星屑の海原へと飛び立つ超弩級の影


圧倒的な武力と忠義を胸に、


主の背中を守り抜く双翼の女官たち


荒野の風を切り裂き、


旧貴族の残党を


無慈悲に圧倒する黒き閃光――



荒れる海 越えてたどり着く 岸辺にて

君と見上げる 星の輝き



どんなに険しい


辺境の戦場であっても、


二人が布陣を敷けば


退路は断たれる


皇子レグナの行く手を阻む敵は、


聖王への忠誠の前に塵(ちり)と消える


主の覇道を支える影となり、


決して揺らがない絶対の盾となる――


見えぬ糸 結ぶ絆の 強さよは

離るる日とて 恐るるはなし



ルナの鋭い観察眼と、


エレーナの


揺るぎない剣技が交差する


アーロンが


王宮の玉座から送る


黄金の光球の導きに従い、


二人は進軍する


主のために、そして帝国のために――


その忠誠は


星々の瞬きよりも永遠に尊い――



【聖国ルネッサスの夜明け】


聖国ルネッサスの講堂に


響き渡る、


若き生徒たちの瑞々(みずみず)しい声


過去の戦乱の記憶を学び、


自分たちの言葉で


未来を紡ぎ出す少女と少年たち


薔薇(ばら)の香りと


インクの匂いが混ざり合う学舎(まなびや)に、


新しい時代の息吹が満ちる――


咲き誇る 花の命の はかなさよ

ふたりで生きる 永遠の今



どんなに世界が広がり、


マルチバースの果てへと


次元が広がろうとも


私たちが今ここで交わした約束と、


手を取り合う温もりは変わらない


陛下が切り拓き、


皇子が守る


この平穏な大地で、


私たちは歌い続ける――


新しい 扉の向こう 響く歌

君と共鳴す 未来の調べ



古い神話の物語は終わり、


ここから先は


私たちが描く無数の日常


量子もつれのように


遠く離れても、


心はいつも


一つの真理に結ばれている


すべての生命と星々が


祝福に包まれる、


終わらない


平和の歌を響かせよう――


道すじの 果てに待つのは 楽園ぞ

汝とともに 夢の続きへ

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