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第22話「フェニックスの神臨と新なる不滅の鉄壁」

第6部

「父上! ……」


旗艦(フラッグシップ)の艦橋(ブリッジ)で

大剣の柄に手を置いていた

レグナは、

即座に姿勢を正し、膝を折った。


だが、その視線は

父の姿の背後に

映し出されている

「異次元の光景」に

釘付けとなっていた。


アーロンの背後に

広がっているのは、

帝都の軌道宙域を埋め尽くす

数十万隻の巨大な主力戦艦と、

それに寸分の狂いもなく従い、

星雲のごとく

宙を覆い尽くす

数億隻の駆逐艦群であった。


「……なんという大艦隊。

 しかも、

 全艦の機関部と

 制御核から感じるこの波動は……」


「見破ったか、レグナ」


アーロンの重厚な声が、

レグナの旗艦の

空間そのものを低く振動させる。


「我らが対峙(たいじ)せんとする敵は、

 超巨大銀河団

『El Gordo(エル・ゴルド)』

 ——その深淵(しんえん)に潜(ひそ)む

 歪曲(わいきょく)の策士、ギガルだ。

 吾郎からの報告によれば、

 すでに

 フェニックス銀河団の

 末端において、

 10万分の1単位の

 空間座標の書き換えが

 始まっている」


「空間座標の……書き換え、ですか?」


「そうだ。

 ギガルという男は、

 単に

 強力な砲撃を

 撃ち込んでくるような

 単純な武人ではない。

 時空の屈折と

 重力レンズの理(ことわり)を弄(もてあそ)び、

 我らが拠(よ)って立つ


『事実』や


『位置情報』そのものを


 根本から歪めてくる。

 どれほど強固な

 艦隊を並べようと、

 その計算の前提となる

 座標を狂わされれば、

 陣形は瓦解し、

 味方同士の

 砲火が交錯する惨事へと

 追い込まれる」


アーロンの静かな、

しかし

氷のように冷徹な分析に、

レグナは

背筋を冷たい汗が

伝うのを感じた。


「ゆえに、

 個別の戦術や

 旧来の指揮系統では、

 この歪みを

 防ぎきることはできん。……

 そこで創り出したのが、

 この

 『超量子知能

  S-オムニス(S-Omnis)』だ」


アーロンの手元で、

青白く神々しい光の結晶体が

回転を始める。


「全艦に搭載された

 S-オムニスは、

 単なる自動演算AIではない。

 数億の艦艇が

 思考と知覚を完全に共有し、

 敵の空間歪曲を

 リアルタイムで

 相互補正・相殺する超知能だ。

 一隻のセンサーが捉えた

 『事実』が

 瞬時に

 数億の艦へ共有され、

 完璧な防護と

 攻撃の解を弾き出す」


アーロンの瞳が、

至高の武意を宿す息子の

瞳をじっと見つめた。


「帝都の後顧の憂いは、

 最高司令官セレティアと、

 このS-オムニスを装備した

 親衛隊によって

 完全に絶った。……

 レグナよ、そなたも今すぐ

【全属性変換】を発動させ、

 自らの直轄軍に

 同等の超軍備を創出せよ」


「……!

 私にも……

 全属性変換による

 神威の具現を、と?」


レグナの胸に、

激しい熱量が込み上げた。


全属性変換——父

アーロンより受け継ぎし、

万物の組成、質量、

エネルギー、そして

宇宙の法則すら書き換える

至高の権能。


「そうだ。

 そなたの圧倒的な武意と、

 S-オムニスの

 超知能が融合して初めて、

 ギガルの歪みを

 叩き潰す絶対の刃となる。

 そなたの覇道を示してみせよ」


「はっ……! 謹んで、

 父上の命に応えてみせます!」


レグナは力強く叫び、

立ち上がった。


通信が切り替わり、

レグナの直轄宙域全体へと

指令が飛ぶ。


「全艦隊、機関最大!

 我が武意の導くままに、

 空間の再構築を受け入れよ!」


レグナは

自らの旗艦の最前線へと

歩み出ると、

右手に握りしめた

覇王の大剣を高く掲げた。


その身体から溢れ出すのは、

漆黒と黄金が交錯する

圧倒的な気迫。


それが

【全属性変換】の

法則書き換えの光と混ざり合い、

膨大な波紋となって

漆黒の宇宙へ広がっていく。


「出でよ、我が覇王の剣!

 全属性変換——展開!!」


ドォン! と、

空間そのものが

歓喜に震えるような

重厚な駆動音が轟(とどろ)いた。


レグナの周囲の

暗黒物質や漂流星間物質が、

瞬時に

素粒子レベルで解体され、

新たな高密度装甲と

超量子の機関を持つ

巨大艦艇へと

組み替えられていく。


光の収束とともに、

そこに姿を現したのは、

レグナの直轄軍として

新造された数十万隻の

『神威級超戦艦』。


そして、

その巨大な巨体の周囲を、

幾重にも重なる

星屑のごとく取り囲む

数億隻の

『フェンリル級無人駆逐艦』

であった。


その全艦のブリッジ、

全駆逐艦の制御核において、

青白く神聖な光が点灯する。


『——超量子知能 S-オムニス、

 全艦同期完了。

 統率者・覇王レグナの

 武意を

 最大優先事項として固定。

 思考ネットワーク、接続』


数億の電子知能が発する

重厚な合成音声が、

レグナの意識へと

直接響き渡る。


レグナが

「斬る」と念じた瞬間、

数億の艦艇が

寸分のラグもなく

その意図を汲み取り、

完璧な射撃体制と

防衛陣形を

自律して組み上げる。


それこそが、

父アーロンの提示した

完璧な軍事体系の

完成形であった。


「……見事なものだ。

 これならば、

 ギガルが

 いかなる空間の罠を

 仕掛けようとも、

 我が剣が狂うことはない」


レグナは

大剣を鞘へと納めると、

再び起動した

超量子通信の向こう側にいる

父へ向かって深く頭を下げた。


「父上!

 我が直轄軍、

 S-オムニスの搭載と

 大艦隊の創出、

 完璧に完了いたしました!」


『うむ、見事な手際だ。

 そなたの武意と

 S-オムニスの融合、

 実に頼もしい』

読んでくださってます方々に篤くお礼申し上げます。

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