第三幕 第十四章 【 最後の牙城、そして『鋼の共和国』 】
俺は、聖王国を屈服させた。そして、いよいよ大陸最後にして最大の障害が立ちはだかった。
神々の時代から一切の干渉を拒絶し、超高度な魔導兵器を保有する独立都市国家群――『鋼の共和国』だ。
「アーロン様。共和国の特使から通告が届いています。『我が国の防壁は、いかなる理の書き換えも通さない。これ以上の侵略は、全土の自爆を意味する』と……」
忠臣ルナが、冷や汗を流しながら報告書を読み上げる。
奴らは、システム管理者の残した技術ではなく、人間自身の知恵と魔導工学で自立した、いわば「神のルールなしで生き残った異端の国」だった。だからこそ、俺が示す「絶対的な支配」をも拒絶する気らしい。
「ほぉ~。自爆、ねえ、……」
アーロンは、玉座の肘掛けを指で軽く叩き、不敵に笑う。
奴らが、どれだけ知恵を絞ろうと、この世界に存在する物質と魔力である以上、アーロンの【全属性変換】の射程から逃れることなどできない。
「面白いじゃないか! 彼らのプライドである『鋼の防壁』とやらが、俺の支配の前でどれだけ持つか見てやろう」
アーロンは、中空の要塞『飛空艇』を率いて、鋼の共和国の首都――巨大な鉄の都市の上空へと降り立った。
アーロンの眼下には、無数の魔導砲がこちらを向いている。一触即発の緊張感の中、俺は城壁の最前線へと単身で降り立った。
「アルカディアの王、アーロン! これ以上の接近は宣戦布告とみなす!」
都市の司令官が、拡声器で怒鳴り声を上げる。
アーロンは返事をする代わりに、静かに両手を地面へと下ろした。
「お前たちが築いたその鉄の都市も、自爆装置も、すべて俺の国を飾る『礎』にすぎない」
「撃て~~~ッ!」
司令官の号令と共に、共和国の全魔導砲が一斉に火を噴いた。
要塞が消し飛ぶほどの弾幕が、俺へと殺到する。だが、俺は一歩も引かず、その掌を正面へと突き出した。
「【全属性変換】――『魔導砲撃』を『祝祭の花火』へ。そして、『鋼の防壁』を『我が宮殿の敷石』へ変換する!」
轟音と共に、放たれた無数の砲撃が、俺の目の前で鮮やかな黄金色の光の粒子――花火へとその性質を変え、夜空に散っていく。
加えて、共和国の誇る厚さ数十メートルの鋼鉄の防壁が、まるで砂細工のように崩れ、音を立てて柔らかい大理石へと書き換わった。
鉄の都市全体が、一瞬にして俺の庭園へと姿を変える。
あまりの様変わりに、共和国の兵士たちは武器を取り落とし、ただ呆然と立ち尽くすしかできなかった。
「抵抗する権利すら、お前たちにはない。分かったら、その頭を地面につけろ」
アーロンが冷徹に告げた瞬間、重力そのものが爆発的に増加し、共和国の全軍勢が同時に地面へと叩きつけられた。
大陸最後の牙城は崩れ落ち、ここに、人類の住まうすべての土地が、完全に俺の支配下へと収まった。
大陸の全土がアーロンのものとなり、名実ともに「世界の絶対的支配者」となったアーロンだった。
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