第16話【 鳳凰の静寂と四重奏のアスガルド 】(上)
第6部
レグナの言葉に、
アーロンは穏やかな、
しかし一切の揺らぎがない眼差しを
向けた。
「レグナ。
今回の出陣は、
討伐や破壊が目的ではない。
暴れ狂う嵐の前に立ち、
ただ
絶対的な平定の意思を示す
ためのものだ。……
そして何より、
私が留守にする間、
この聖国の本陣と、
広大な庭園の根幹を守れるのは
そなたしかおらん」
アーロンは歩み寄り、
レグナの力強い肩にそっと手を置いた。
「レグナ、聖国ルネッサスを任せる。
我らが留守中、
いかなる隙も突かせぬよう、
その圧倒的な武と威厳で
この聖宮を固めてくれ」
「……はっ、畏まりました。
聖王様のご命令、しかと。……」
レグナの瞳には
任された重責への誇りと、
父への絶対の信頼が宿っていた。
「安心してご出陣ください、父上。
このレグナがいる限り、
聖宮の落ち葉一枚、
外の蝿一匹
通させはしません。……
三人の成長ぶり、
しっかり確かめて
いらっしゃってください」
「感謝する」
アーロンは深く頷くと、
黄金の外套を翻し、
待機する旗艦アスガルドへと
足を進めた。
【 十六宙域の集結:四重のアスガルド 】
『フェニックス銀河団』の
外縁宙域。
凄まじいX線輻射と
暗黒物質の濃密な嵐が吹き荒れ、
視界のすべてが
狂乱の赤紫に染まる宙域に、
時空を切り裂いて
巨大な影が次々と姿を現した。
まず姿を現したのは、
聖王アーロンが座乗する
至高の旗艦『アスガルド』。
それに続き、左右の虚空から、
それぞれ異なる
独自の輝きと紋様を刻んだ
三隻の超弩級戦艦と、
それらに追従する
三つのITS編成が
次元跳躍を完了させた。
吾郎が駆る、
漆黒の重厚感と
厳格な統治の威厳を纏った
【アスガルドα】および【ITSα】。
シルヴィアが座乗する、
神秘的で澄んだ
精神の波動と優美な光を放つ
【アスガルドε】および【ITSε】。
そして、ジュエダンが率いる、
黄金の極大オーラを
艦体全体に脈動させ、
一切の災禍を打ち砕く
破壊力を秘めた
【アスガルド∞】および【ITS∞】。
本隊の元祖アスガルドと
ITSを含め、
超弩級戦艦4隻、
ITS4編成。
アーロンから
【全属性変換】によって
授けられた至高の双艦が、
初めて一堂に集結した
瞬間であった。
旗艦アスガルドの
広大な全方位モニターに、
各艦の艦橋が
映し出される。
「聖王様。
吾郎、ただいま参上
いたしました。
久方ぶりに身近で
御意を拝せますこと、
至上の喜びにございます」
吾郎は
かつてない凛とした表情で
深く頭を垂れた。
その背後には、
任を預かる
二人の副艦長の姿もある。
「シルヴィアも、お供いたします。
この荒ぶる鳳凰の宙域に、
平和の言葉を届けるために」
シルヴィアは静かに微笑み、
胸に手を当てて礼を尽くした。
「ジュエダン、参りました!
アーロン陛下の御前を汚す
不浄の嵐、
このアスガルド∞(インフィニティ)とともに
一撃で穿ち払っておみせします!」
ジュエダンは
溢れ出る
黄金のオーラを
全身から放ちながら、
力強く叫んだ。
アーロンは
三人の勇姿を見渡し、
深く満足そうに目を細めた。
「皆、よく集まってくれた。……
それぞれの銀河団で
積み重ねてきた治世と研鑽、
その成果が
見事なまでに艦影に表れているな。
これより
『フェニックス銀河団』の
全域へ向けて
威圧進撃を開始する。
刃を抜く必要はない。
ただ、我らの『意思』を示せ」
『御意――!!』
四つの声が重なり合い、
通信回線を揺らした。
【 鳳凰の静寂:圧倒的な平和の圧壊 】
フェニックス銀河団の中央部。
数千の銀河がひしめき合い、
超巨大ブラックホールから噴き出す
メガパーセク級の
プラズマジェットの周囲で、
無数の戦艦群が
入り乱れて光線を交わしていた。
「潰せ!
中心核のエネルギー鉱床は
我が陣営のものだ!」
「退くな!
聖国の名代など恐れるに足らん!
この銀河団の覇者は我らだ!」
明朝 7:30 に投稿します。
【 宇宙小話 】第13話
「木星の月『エウロパ』の海」
「宇宙人はいるのだろうか?」——
誰もが一度は
思い浮かべるこの疑問。
実は、遠い銀河ではなく、
太陽系の中に
生命がひそんでいるかもしれない
場所があるという。
それが、
木星のまわりを回る
氷の星(衛星)「エウロパ」。
エウロパの表面は、
厚さ数キロメートルから
数十キロメートルもの
カチカチの氷で
覆われているらしい。
しかし、
木星の強烈な重力によって
内側が引っ張られたり
緩んだりすることで
摩擦熱が生まれ、
氷の下には
地球の海よりも豊かな
「液体のお湯(海)」が
広がっていると
考えられている。(つづく)




