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第15話「賜(たまわ)りし双艦、開拓の地に」

第6部 

銀河団総会の評議会が

軌道に乗り始めた頃、

ジュエダンの元にも、

聖宮から二隻の艦が到着した。


「監督官殿、初めまして。……

 アスガルド ∞(インフィニティ)、

 艦長代理を務めます」


「同じく、ITS ∞(インフィニティ)、

 艦長代理です」


二人の副艦長が、

揃って深く一礼する。


ジュエダンは、

驚きを隠せぬまま、

二隻の艦を見上げた。


「これは……聖王様からか?」


「はい。……

 吾郎様、シルヴィア様にも、

 同様の艦が贈られたと

 伺っております。

 聖王様は、

 ジュエダン様にも、

 同じ心遣いをと」


副艦長の一人が、

書状を差し出した。


開くと、

そこにはアーロンの筆による、

簡潔な言葉が記されていた。


『そなたが当面したような

 大きな危機の時の為にも

 あった方が良かろうと思った。

 骨休めに聖宮へ戻る時にも、

 それぞれのアスガルドなりITSを

 遠慮なく使え。

 その際、担当銀河団は、

 副艦長に任せておけばよかろう』


ジュエダンは、しばし言葉を失い、

静かにその文面を読み返した。


「……この身に、

 そこまでの気遣いを、……」


「はい。……

 ジュエダン様が

 この銀河団に着任されてから、

 片時も休まれずに

 働き詰めであったと、

 聖宮でも案じられておられました」


ジュエダンは、

静かに、しかし深く頭(こうべ)を垂(た)れた。


「……ありがたく、頂戴する」


その時、

輸送統括本部から、

新たな報告が届いた。


「監督官殿。……

 超新星の余波を受けた

 七つの銀河、

 復興計画の第一段階が

 まとまりました」


技師団長が、資料を手に告げる。


「詳細を」


「避難していた民の帰還時期、

 そして、

 受け入れ先の銀河との

 今後の交流をどう続けるか、

 双方の代表による協議が、

 すでに始まっています」


「帰るだけで終わらせるな、

 ということか。……」


「はい。……

 危機を共に乗り越えた縁を、

 一過性のもので

 終わらせたくないと、

 双方から声が上がっています」


ジュエダンは、静かに頷いた。


「良いことだ。……

 この銀河団は、

 そうやって少しずつ、

 一つの家になっていく」


副艦長の一人が、静かに微笑んだ。


「ジュエダン様の蒔(ま)かれた種が、

 あちこちで

 芽吹いているようですね」


「私一人の種ではない。……

 見捨てずにいてくれた、

 聖王様や、

 この銀河団すべての民の種だ」


一方、レグナは、

この報せを

聖宮からの通信で受け取っていた。


「三人とも、艦を受け取ったか。……

 いずれ、揃って

 聖宮に顔を出す日が、

 楽しみだな」


聖宮では、アーロンが、

三人からの報告をまとめて聞き、

静かに目を細めていた。


「吾郎、シルヴィア、ジュエダン。

 ……それぞれの銀河団で、

 それぞれの色を持った実りが、

 育ち始めているか。……」


セレスティアが、静かに微笑んだ。


「三人がそれぞれの艦で、

 いつか揃って

 聖宮に戻ってくる日には、

 盛大な宴を用意いたしましょう」


「ああ。……

 その日を、楽しみにしていよう」


聖宮の空に、今日もまた、

遠い銀河団の方角から、

微かな汽笛の残響が、

静かに届いているような気がした。



【 聖宮の残響と旅立ちの儀 】


かつてない静けさと、

重密な緊張感が

帝都・聖宮を包み込んでいた。


遙(はる)か深(しん)宇宙、

無数の銀河が

苛烈な重力と熱量で交錯する

巨大構造体――

『フェニックス銀河団

(SPT-CL J2344-4243)』。


中心部に位置する

超大質量ブラックホールからは、

膨大なプラズマと

星形成の嵐が吹き荒れ、

その莫大なエネルギーを巡って

無数の銀河国家が

血で血を洗う

泥沼の不毛な抗争に

明け暮れていた。


いかに名代(みょうだい)を遣(つか)わし、

対話を試みようとも、

荒れ狂う

鳳凰(ほうおう)のごとき暴威(ぼうい)は

治(おさ)まる気配を見せない。


これを受け、

聖王アーロンは決断した。


自らが直接現地へ赴(おもむ)き、

荒ぶる銀河団そのものを

鎮(しず)めることを。


聖宮の最上階テラス。


遠征の準備を整えた聖王(アーロン)の前に、

黒銀の甲冑(かっちゅう)を纏(まと)った

覇王(レグナ)が立っていた。


その背には

いつも通りの巨大な大剣が

担がれているが、

その表情には

珍しく微妙な影が差していた。


「父上……

 此度(こたび)は、

 私が聖宮を守るのですか? 

 あそこは

 血気盛んな戦鬼どもの

 巣窟(そうくつ)です。

 私の刃(やいば)を振るうには、

 これ以上ない

 格好の戦場だと思うんですが、……」

本日 19:30 に投稿します。


【 星屑(ほしくず)と覇道の叙事詩 】


「アーロン賛歌(静寂と救済、そして平和の庭園)」


果てしない暗闇のなか、迷い続けた魂よ


失われた世界で、君が灯(とも)した唯一の光


荒野(あれの)を渡る風が止み、いま、永遠の庭園に奇跡が満ちる――



暗やみのなか 光を求めて 彷徨(さまよ)いし


わが身を包む 君の優しさ



冷たい孤独の底で、その微笑みだけが救いだった


誰もが諦めた荒野の果てで、世界は君の手に抱かれ――



荒野(あれの)往(い)く 孤独の果てに見出(みい)だせし


汝(なんじ)の微笑(ほほえみ) 我が救いなり



月影の巫女シルヴィアが目覚め、薔薇を抱く少年・吾郎が微笑む


あらゆる属性が君の意思に従い、すべてが無から満たされていく


安らぎに満ちたこの首都で、私たちの永遠のスローライフが始まる――

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