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第12話「数十億の航路」

第6部を

読んでくださってます方々に篤くお礼申し上げます。

ありがとうございます。

ブックマーク登録、ありがとうございます。

評価ポイント、ありがとうございます。

リアクション頂きまして、ありがとうございます。

超新星爆発まで、

残り一月を切っていた。


聖国全域から集められた

輸送船団が、

七つの銀河の避難民を、

次々と受け入れ先の銀河へと

送り出している。


輸送統括本部には、昼夜を問わず、

数百名規模の職員が詰め、

刻々と変わる状況に

対応し続けていた。


ジュエダンは、その中心で、

刻一刻と変わる状況に、

目を通し続けていた。


「監督官殿。……第三避難区画、

 輸送予定より二割遅れています」


輸送を担う技師の一人が、

焦りを滲(にじ)ませて報告する。


ジュエダンは、静かに問うた。


「原因は?」


「受け入れ先の居住区、増設工事が、

 想定より難航しているようです。……

 急ピッチで進めているものの、

 安全基準を満たすには、

 まだ時間が要ります」


「安全を犠牲にはできん。……

 受け入れ先の首長に、

 直接、状況を確認する」


通信の向こうで、

受け入れ先の首長は、

疲労の滲んだ声で答えた。


「監督官殿。……申し訳ない。

 だが、これ以上急げば、

 居住区そのものの強度に、

 不安が残る」


「案じずともよい。……

 安全を最優先にしてください。

 その分の遅れは、

 他の区画で補います」


ジュエダンは、直ちに

輸送計画全体の見直しに着手した。


複数の受け入れ先の進捗(しんちょく)を、

リアルタイムで突き合わせ、

余裕のある区画から、

遅れている区画へと、

輸送資源を

柔軟に振り分けていく。


「第五、第六区画は、

 予定より早く進んでいます。……

 そちらの輸送船を、

 一時的に第三区画へ回せますか」


「可能です。……調整には、

 半日ほどいただければ、……」


「頼みます」


こうした細(こま)かな調整が、

幾度となく積み重ねられていった。


輸送統括本部には、昼夜を問わず、

数百名規模の職員が詰め、

刻々と変わる状況に

対応し続けていた。


ある夜、若い職員の一人が、

疲労(ひろう)困憊(こんぱい)の様子で、

ジュエダンに問いかけた。


「監督官殿は、

 いつお休みになっているのですか?」


「そなたたちが動いている間は、

 私も動く。……それだけのことだ」


「ですが、……。

 監督官殿まで倒れられては、……」


「案ずるな。……

 この程度で倒れるほど、

 柔(やわ)ではない」


ジュエダンの言葉に、職員は、

どこか安心したように、

再び作業へと戻っていった。


夜を徹しての調整会議は、

それから幾日も続いた。


爆発予定の一週間前、

七つの銀河すべての避難が、

ぎりぎりのところで完了した。


輸送統括本部の職員たちの間に、

これまでの疲労を吹き飛ばすような、

静かな喜びが広がっていく。


「監督官殿。……全区画、

 避難完了の報告が届きました」


その報せに、輸送統括本部には、

これまでにない

安堵の空気が広がった。


ジュエダンは、静かに、

しかし深く息をついた。


「よくやった。……

 皆の力があってこそだ」


超新星爆発は、

予測通りの規模で発生した。


だが、その余波を浴びる宙域には、

もはや誰一人残っていなかった。


数週間後、

銀河団総会が再び招集され、

この危機対応の総括(そうかつ)が行われた。


「今回の一件、

 我らの相互支援の仕組みが、

 確かに機能することを、

 証明できました」


ジュエダンの報告に、

かつて

避難民を受け入れた銀河の首長が、

静かに頷いた。


「次に危機が訪れるのが、

 我らの番であっても、

 今度は皆が、

 手を差し伸べてくれるでしょう」


一方、レグナは、

この危機対応の傍(かたわ)ら、

聖国の版図(はんと)拡大の討伐も

並行して続けていた。


「輸送船団の確保、

 間に合ってよかったな」


「レグナ様のご尽力(じんりょく)あってこそです」


「礼はいい。

 ……次も、何かあれば呼べ」


聖宮では、アーロンが、

この総括の報告を受け、

静かに頷いていた。


「数十億の民を、

 一人も欠けさせずに導いたか。

 ……見事なものだ」


セレスティアが、静かに微笑んだ。


「そういえば、この危機の最中、

 避難先で生まれた子供たちの

 名付けに、

 両方の銀河の言葉を組み合わせる

 風習が、

 自然と広まっているそうですわ」


「ほう。……それは、面白い話だ」


「受け入れた側と、

 受け入れられた側、

 双方への感謝を込めて、

 というのが、始まりだったとか。

 ……聖国ルネサンスにも、

 この風習の由来を、

 記録させましょう」


編纂生の一人が、

興味深げに付け加えた。


「聖王様。……

 すでに、幾つかの銀河で、

 似たような名付けの風習が、

 独自に生まれ始めているようです」


「ほう、それは知らなかった。

 ……誰かが定めたわけでもないのに、

 自然とそうなったのか」


「はい。……

 危機を共に乗り越えた記憶が、

 そのまま、次の世代への

 贈り物になっているのかも

 しれません」


「ああ。……仕組みだけでなく、

 そうした小さな習わしもまた、

 この庭園を

 確かに結びつけていくのだろうな」

明朝 7:30 に投稿します。


【星屑と覇道の叙事詩】


 セレスティア賛歌


「月影の巫女(みこ)から聖母への覚醒」


かつて傷つき、


狂戦士の鎧(よろい)に身を包んだ過酷な日々


だが、君の胸の奥底に


眠っていた本当の慈愛が、


今、聖国の空を満たしていく


深緑の生命の樹に抱かれたこの都で、


聖母はすべての魂を


優しく包み込む――



生命の樹 葉末に光る 露のよに

はかなき世にて 君と出逢えり



荒野(あれの)の風が凪(な)ぎ払い、


世界の理(ことわり)が穏(おだ)やかな調和を


取り戻したとしても


あの過酷な日々に


交わした温もりだけは、


永遠に褪(あせ)ることはない


君の教えを乞う若者たちの声が、


新しい時代の夜明けを告げている――



出逢いし日よ 荒野の風は止みぬれど

汝(なんじ)の温もり 今も消えずよ



シルヴィアの澄んだ祈りと、


吾郎の抱く一輪の


赤い薔薇(ばら)が共鳴する


ジュエダンの青空の下、


聖国の講堂に響く


三十一文字の調べ


愛と救済の言葉は、


時空を超えて


すべての生徒たちの胸に


刻まれていく――

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