限界突破の五重奏!愛の魔力が招く絶望の特異点
王都の東門では、空を覆い尽くすほどの魔獣の群れが押し寄せていた。
「もう、絶対に誰も傷つけさせないんだから!」
炎の魔法戦士セーラー・フレアとなったリゼットが、巨大な炎の大剣フレイム・カリバーを軽々と振り回す。
彼女の身体から溢れ出す紅蓮の炎は、これまでの比ではないほどの圧倒的な熱量を持っていた。
「フレイム・サイクロン!」
リゼットが剣を薙ぎ払うと、巨大な炎の竜巻が発生し、数百体の魔獣を一瞬にして灰へと変える。
「すごい……私の力、こんなに強くなってる……!」
リゼット自身も驚くほどの圧倒的なパワーだった。
アルトの起動したオメガ・プロトコルが、彼女の潜在能力を限界まで引き上げているのだ。
西の城壁では、氷の魔法騎士ナイト・ブリザードことクラウディアが双剣を振るっていた。
「ブリザード・ワルツ!」
クラウディアが舞うように剣を振るうたびに、絶対零度の吹雪が吹き荒れる。
迫り来る巨大な魔獣たちは次々と氷の彫像へと変わり、砕け散っていった。
「信じられない出力だわ……!」
クラウディアは自らの手に満ちる魔力の奔流に戦慄を覚えた。
南の避難所前では、癒やしの魔法戦士ヒーリング・エンジェルであるエミリアが祈りを捧げていた。
「セラフィック・シャワー!」
エミリアが聖杖セラフィック・ハーツを掲げると、王都の南半分をすっぽりと覆うほどの巨大な翠色の結界が展開される。
瘴気に当てられて倒れていた市民たちが、次々と顔色を取り戻して立ち上がった。
北の市街地では、闇を駆ける刃シャドウ・ストライダーとなった菖蒲が影の中を飛び回っていた。
「奥義・分身殺法!」
菖蒲の姿が数十体に分かれ、空から降下してくる魔獣の指揮官クラスの首を次々と刎ねていく。
「主殿から賜ったこの力、まさに神業でござる!」
そして王都の中央広場では、恋に焦がれる雷姫エレク・ハートことルージュが宙に浮いていた。
「アルト様から頂いた愛の力、とくと味わうといいですわ!」
ルージュが手にした雷の槍を天に掲げると、空を覆う暗雲から無数の紫電が降り注ぐ。
「エレク・パニッシャー!」
轟音と共に落雷が魔獣の群れを直撃し、焦げた匂いだけを残して敵を消滅させていく。
「ああんっ、アルト様の魔力で身体中が熱いですわ……!」
ルージュは恍惚とした表情で頬を染めながら、次々と雷撃を放ち続けた。
5人の少女たちの圧倒的な力により、王都の防衛線は完璧に維持されていた。
だが、限界を超えた力には必ず代償が存在する。
「……え?」
最初に異変に気づいたのは、魔力の流れに最も敏感なルージュだった。
彼女の身体を満たしていた心地よい魔力の奔流の中に、突如として鋭い痛みが混じったのだ。
「この痛み……アルト様の……?」
ルージュの顔から血の気が引く。
同じ頃、他の4人も自身の魔力に混じる異物感に気づいていた。
「なによこれ……胸の奥が、すごく痛い……!」
リゼットが炎の剣を握りしめながら、胸を押さえてうずくまる。
「レヴィナスの理論は常に完璧だけれど、これは明らかに安全マージンを超えている……!」
クラウディアの騎士としての直感が、この力の異常性を告げていた。
「まさか、彼自身の命を削って私たちに力を……?」
クラウディアの青い瞳が大きく見開かれる。
「アルトさんの優しい心が、悲鳴を上げています……!」
エミリアが涙を浮かべながら、王都の中心へと視線を向けた。
「主殿の気が、消えかかっているのではござらぬか……!」
菖蒲が漆黒の小太刀を握る手を震わせる。
「アルト様が……私のために命を燃やしているというの……!」
ルージュが悲痛な叫びを上げ、王都の中心にある工房へと視線を向けた。
5人の少女たちの脳裏に、出撃前のアルトの血気迫る笑顔がフラッシュバックする。
彼が起動したオメガ・プロトコルとは、プロデューサー自身の命を削るシステムだったのだ。
「嫌っ、アルトォォォォォッ!」
リゼットが魔獣の群れを無視して、工房へ向かって駆け出す。
「戻るわよ、全員!」
クラウディアの号令と共に、5人のヒロインたちは任務を放棄し、愛する少年の元へと全速力で空を駆けた。
王都の中心、アルトの工房。
「ごふっ……!」
僕はメインコンソールの上に突っ伏し、大量の血を吐き出した。
モニターに表示される僕のバイタルデータは、すでに致死領域を赤く点滅して知らせている。
「アルト・フォン・レヴィナス……お前はプロデューサーだろう……!」
僕は震える手でキーボードを叩き、5人のプリズム・チャームへ魔力を送り込み続けた。
「ヒロインたちが輝くためなら、これくらいの代償は安いものだ……」
僕は薄れゆく意識の中で、彼女たちが無事に戦い抜くことだけを祈っていた。
だが、星喰らいの一族の巨大母艦は、5人の少女たちが放つ異常なエネルギーの源泉を正確に捕捉していた。
母艦の下部に巨大なエネルギーが収束し、赤黒い光の球体が膨れ上がっていく。
「主砲のチャージだと……!」
僕は血まみれの視界でモニターの警告表示を睨みつけた。
主砲の照準は、魔力供給の特異点であるこの工房に真っ直ぐ向けられていた。
「やめろ、そっちには撃たせない……!」
僕は残された最後の力を振り絞り、工房の防御システムを最大出力で起動する。
「アルトのところに、とんでもない攻撃が来るわ!」
リゼットがいち早く異常を察知し、絶叫した。
「行かせないわよ……!」
クラウディアが空中に氷の橋を架け、工房へと急降下する。
「アルト様、今すぐお助けしますわ……!」
ルージュが紫電を纏って最速で飛翔する。
だが、彼女たちの祈りが届くよりも早く、巨大母艦の主砲が極太の破壊光線を放った。
轟音と共に王都の空が切り裂かれ、赤黒い閃光が工房へと無慈悲に降り注ぐ。
「アルトォォォォォッ!」
5人の少女たちの悲痛な叫び声が、絶望の爆発音の中に吸い込まれていった。




