魔力を極めたその先へ
二人はマナ村を出てから数日間ベリター王国の王都を目指しながら旅を続けていた。近くにある村に泊まったりしているとウルトの人気がうかがえる。
「ウルト兄ちゃんだ!戻ってきた!」
村の人たち、特に子どもたちから慕われているようだ。村の人達によると5年ほど前に訪ねてきたウルトは村でみんなの悩み事を解決していたらしい。見返りは存在するかもわからない人の情報だけ。村人は次第にウルトのことを慕うようになり、年に1度ほどこの村にやってきたりして村の手伝いをしているらしい。
この村はアクト村というらしい。鍛冶の村でウルトはこの村で何種類かの武器を作ってもらったらしい。だけど今回来たときに持っている中剣はこの村に来たときから持っていたものでこの村の鍛冶師でもその技術がわからないほど精密な技術で作られたものらしい。
〜1日目〜
魔力量は術式を使うことで伸びる、特に苦手な基礎術式を使うことで魔力量が飛躍的に伸びる。基礎術式の内エリスは水の基礎術式を得意としていて逆に草の基礎術式が苦手である。基礎術式は三竦みの状態にあり水→火→草→水...のようになっていて、それと同じように大抵の人は水の術式を使うのが得意なら草の術式は苦手と使用者の得意不得意も同じように現れる。というわけで、エリスは毎日草の術式を使って魔力量を増やすトレーニングを始めた。草の術式は基本的に自然に干渉するもので、使うと近くの植物を好きなように成長させたりすることができる。苦手な人は通常程度のサイズにしか成長させられないがある文献には禁断の果実のある森に聳え立つ大木を作ったのも草の術式とも書かれているほど差が出る。魔力量が多くても数を成長させられるだけで大きさは慣れない限り大きくすることはできない。エリスは現時点で魔力量も少なく最低限しか基礎術式を使えないため毎日花を一本ずつ成長させることから始めてみた。
<基礎術式・木〜樹木の育成〜>
初めてだからか一本花を咲かせるだけで魔力がなくなってしまった。
〜10日目〜
毎日続けていたお陰で花を10本はほど成長させられるようになった。イメージで言うとMPが10から20になった感じ、エリスは使う魔力量を効率的に使うことが上手になったらしく魔力量が多くなくても基礎術式を多く発動することができるようになった。
気がつけば2ヶ月が経過していた。エリスはそこら辺に生えている雑草ですら少し大きめの大木くらいに成長させられるようになっていた。ちなみに苦手な基礎術式でも練習することで克服せせることができる。
「そういえばウルトは魔力量ってどのくらいあるんですか?」
「量がどのくらいかあらわすのは難しいけど僕は小さい頃から魔力を鍛えていたからとにかく大量に植物を成長させられるよ。」<基礎術式・木〜樹木の育成〜>
ウルトは地面に手をつき周囲の植物に術式をを使うと周りの雑草があっという間に樹木のように成長し手足のように動き出す。
「はぁー。私との圧倒的さを感じる。」
「大丈夫だよエリス。君も鍛えればこのくらい使えるようになるよきっと!」
「はい。頑張ります。」
村では魔力の特訓と同時に手伝いをしている。エリスは村で唯一の飲食店で看板娘としてお手伝いをしていてとても人気がある。店の制服に身を包み笑顔で働くその姿は村のみんなからとても人気があり毎週のように宴会をしている。ウルトはその間村の警備をしたり子どもたちに稽古をしたりしていた。
ある夜エリスの手伝う飲食店での宴会中ウルトの姿が見えないことにエリスが気がつく。
「村長さん。ウルトはどこですか?」
「ウルトくんなら毎日この時間村の近くにある湖に行ってるよ。何をしているかは知らないけどちょうどいい晩御飯を持っていってあげてくれないかい?」
「わかりました。ありがとうございます。」
村の近くの湖、ホタルが多く生息していて夜にとてもきれいな景色を見る事ができる。エリスは湖に行くとウルトは上裸になってあぐらをかいた状態で湖のそばに座っていた。周囲に風が集まっているウルトが少し浮いて髪の色が青黒くなった。「「この前話していた固有術式の本来の力なのかな。」」そのままウルトのことを見ていると周囲に青黒い稲妻が走る少し激しくなるとウルトはすごい汗を掻き髪の色がもとに戻り。近くの木からタオルを取り汗を拭い独り言を呟いている。
「はぁはぁ。やっぱり...はきついか。もうすこし...。やば。」
「そろそろ出てきたら?エリス。」
「気づいてたんですか?」
「ごめんね。本当は最初から気づいてたんだけど少し集中したくてね。ところでさっきの独り言ってきこえてたかな?」
「独り言は少しだけでちゃんとは聞こえてないんですけど、ごめんなさい盗み見るような感じになっちゃって。」
「聞こえてなかったなら大丈夫だよ。それより何か用事かな?」
「ああ、はい。村長さんから晩御飯の差し入れです。」
「そうかありがとう。」
2人は一緒に食べはじめ少し詳しくウルトの術式について聞いた。
「実は闇の力を行使しようとすると暴走してしまうんだよ。前みたいに少しの闇の行使なら大丈夫なんだけどちゃんと使おうとすると体内の魔力効率が悪くなって魔力が稲妻となって放出されたりしちゃうことがあるんだよ。だから慣れない固有術式の練習をしているんだ。村のみんなには言ってあるけどいつ暴走するかわからないから明日からはできるだけこの時間ここに来ないように気をつけてね。」
その日2人は他愛もない話をして食事をしていたがエリスにはウルトの固有術式のことが頭から離れず話の内容は頭に入って来なかった。
そんな平穏な日々が続いたある日、ベリター王国から騎士団が送られてきた。村の人達はウルトとエリスの事情を知っていたためすぐに2人を隠し村を出る準備をさせ足止めしている間に村を出る手筈になっていた。村の反対側から出たいが村は一直線の大通りを基本に作られているため泊まらせてもらっている家を出るわけにはいけない。ウルトはあることに気がついたようでエリスに対して小さな声で喋りかける。
「エリス、チャンスかも知れないぞ。あの騎士団の団長、相当な魔力量だ。成長したエリスの基礎術式を試すいい機会かもしれないぞ。」
「でも、もし成長しすぎて殺してしまったりしたらどうしたらいいか。」
「すごく自信がついたようだねエリス。だけど相手は騎士団長だ。それにあの魔力量なら多分ギリギリ負けけてしまうかもしれない。危ないと判断したら僕が相手するからやってみないかい?」
「わかったわ。やってみる。」
エリスは少し派手に家の中から登場してみた。
「私の名前はエリスあなた達が探していたのは私のことでしょう。さあかかってきなさい。」<基礎術式・木〜樹木の育成〜>
エリスはここに来てからずっと基礎術式を練習していたおかげで魔力の使い方が上達していた。騎士団の団長と思われる人以外はエリスの魔力によってすぐに制圧されてしまう。
「やるな小娘、エリスと言ったな。基礎術式のみでは私には勝てないぞ。こちらはバイヤが休養中で仕事が増えて気が立ってるんださっさと捉えるから大人しくしていろよ。」
騎士団長が抜いたのは刀であった。エリスは〜樹木の育成〜で団長に攻撃を仕掛ける。
<固有術式〜属性付与〜>団長は固有術式を発動する。刀身に基礎術式の属性を付与する。火の基礎術式が付与されエリスの伸ばした植物を火の刀身で軽々と焼き切っていく。
「固有術式での即興エンチャント!?基礎術式だけで勝てるかしら。」<基礎術式・水〜水の恵み〜>
次は水の基礎術式で団長に攻撃を仕掛けるがまたも固有術式で防がれる。更に団長は基礎術式の斬撃を飛ばしたりしてきた。相性のいい基礎術式で防ごうとするも威力が高すぎて防ぎ切ることができず吹き飛ばされてしまう。
「流石に限界かな...。」
エリスはボロボロになってもまだ戦い続けようとしているが策が思いつかないのか近づくことができず後退りしているようだ。
<固有術式・闇〜暗黒の壁〜>
エリスと団長の間に青黒く巨大な壁が現れた。ウルトの闇の壁だ。相手のものとは桁違いのサイズと質量だ。
「大丈夫か?エリス。まだやりたそうにに見えるが、まぁ今日はここまで。あとは俺に任せろ。」
後ろから現れたウルトは固有術式を発動して口調が変わり左の目の色が青黒く変化している。斬撃を解除したウルトは団長に対して攻撃を仕掛ける。相変わらずの速度に団長はバイヤにの時とは違い辛うじだが反応している。後ろの方に跳んだウルトは空中で術式を発動する<固有術式・闇〜月玉・連〜>複数の闇の玉を団長に向かって放つ。
「団長さんその虚空に触れると体ごと消失しちまうぜ。」
団長は焦った顔でいくつかの月玉を避けたが一つだけ直撃しそうになる。
「エンチャントされた刀なら防げるだろー!」
団長は火のエンチャントをした斬撃で月玉を防ごうとしている。刀はボロボロになってしまいエンチャントも切れてしまった。
「なるほど。エンチャントされた武器に対して月玉を使うと威力が多少だが落ちちゃうんだな、それとも連射したから威力が落ちたのか?ま、いつかわかることか。ためしに<収束〜月玉>」
今までになく小さなサイズの月玉であった。ウルトの人差し指から放たれた月玉は団長の両手を貫き刀が持てなくなった。ウルトの瞳が元に戻る。
「君ベリター王国の騎士団長だよね?君たちの目的は何?」
「私はベリター王国、第一騎士団長ベイス。目的はそこの女エリスの排除だ。なぜ消そうとしているかは知らん。」
「じゃあマナ村を地図から消したのは?」
「マナ村を地図から消した?!何の話だ?」
「約4ヶ月前、エリスの故郷、マナ村が何者かによって破壊された。跡地落ちていた紙にはベリター王国がマナ村を破壊する作戦を立てていたことが書いてあったんだけどな。」
「私達はマナ村を王国のものにしようとはしていたが消そうとしていたことはないぞ。」
「わかった。今回はこっちは見逃してあげるよ。君は王国に戻って戦闘不能にされ逃げられたとでも報告することだね。それとこの村に手を出したら...。そう伝えるように。エリス、この人たちが出ていったら2日後に出発するよ。」
ベリター王国の騎士団が帰ってからの2日間アクト村では毎日宴会をしていた。
「皆さんこの度は僕達が迷惑をかけてしまって申し訳なかった。今日と明日しかないが全部僕からのおごりだ。たのしんでくれ!」
宴会のさなかエリスはウルトにまたも固有術式にいついて聞いていた。
「エリス、さっきの騎士団長ベイスは嘘をついてはいなかった。もしかしたら村の破壊はベリター王国ではないのかもしれない。」
「…ウルトの固有術式は本当に闇を操る物なんですか?ちょっと応用が効きすぎていたりしませんか?」
「そこまで気づいてたのかすごいねエリスは。確かにこの闇を扱うものは本当の固有術式ではないよ。だけど今は本当のことを話すことはできない。もう少しだけ待っててくれないか。
少し話は変わるんだけどエリスが狙われる理由ってわかるかい?」
「わかりません。珍しい血筋というわけでもないし固有術式を持っている訳でもないので。」
「バレてしまったから明かすけど固有術式の能力の中で真偽を確かめる物、固有術式を見破る物があるんだけど、エリス、君固有術式を持っているよ。まだ発現してないみたいで能力まではわからないんだけどね。」
「えぇ?!私に固有術式?!本当ですか?嬉しい!」
「きっとこの旅の何処かで発現するさ!」
エリスの固有術式があると判明し次に目指すのは固有術式の解放そして更に最初の禁断の果実を目指して2人はベリター王国を目指す。
2人は夜中にアクト村をあとにした。村長さんには話をしてあまり盛大な別れにならないようにだ。
<小生成>
「村長さんこれをなくさないようもっていてください。きっといいお守りになりますよ。」
ウルトは村長さんにペンダントを渡すとエリスと一緒に村を出てベリター王国の王都を目指していくのだった。
ウルトとエリスがアクト村に来る数日前
???「わりぃなこの村で一番いい鍛冶師は誰だ?」
謎の大きな男が一人で旅をしていたようで村を訪れていた。
???「この素材を使って三節棍作ってもらいてぇんだが」
その男は大金とともに三節棍の材料を持ってきて村一番の鍛冶師に三節棍を作らせ、完成するとすぐに村をあとにするのだった。




