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疑問

「あなたが思い出すのなら、ね」

「なら、こんなとこで話すのはなんだ。人がいないとこに移動しよう」

「あら、何か私に乱暴でもするの?」

「は、はぁ?んな、わけないだろ」

匠は驚いたように言う。言葉の意味もそうだが、大人しそうに見える凛の口からそのような冗談がが出てきたことに驚いていたのだ。

「冗談よ。今の時間は教室なら誰もいないでしょうから、教室にしましょう」


1-3教室


誰いない教室。部活をする生徒の声だけが聞こえてくる。夕日が差し込む教室には、少し重々しい空気が流れていた。

「それで、何が訊きたいのかしら?」

「この前はいっぺんに質問しちまったから、1つずつ質問する。まず、お前は何者だ?流石の俺にもお前が普通の人間じゃないことくらいはわかる」

「それを言ってもどうにもならないわ。言ってもあなたは信じない」

「……いや、信じるよ」

匠は少し考えた後で真っ直ぐと凛のことを見る。

「面白いわ、あなた。そこまで言うなら教えるわ。私は未来から来た篠崎琴音の娘よ。と言っても、厳密には娘になれなかったんだけどね」

「なるほどな……まぁ、そんなこと言われて信じる奴なんかいないわな。」

「だから言ったでしょ?こんなこと言っても仕方が」

「いや、俺は信じる!」

「えっ?どうして……」

凛は目を見開き、驚きを隠せない様子だ。

「だって、俺が今体験してること自体がもう普通じゃない。お前に会ってからおかしなことばかりだ。それに、社会人になって気付いたんだ。もっと、学生生活楽しんどけば良かったなーって。だから、感謝してるよ。」

凛は少し俯き、頬を赤く染める。

「変な人」

「なんか言ったか?」

「何でもないわ。」

「そっか。それじゃ、2つ目の質問だ。どうして俺なんだ?」

「どういう意味かしら?」

「俺は自分が何を忘れているのか分からない。何かが引っかかる。お前が言うように、俺はひと時の記憶を失ってる気がするんだ。でも、何でお前がそれを知っている?それを取り戻させたい理由は何なんだ?」

「知りたいの。私は無限の時の中であなたの記憶を見た。」

「無限の時?」

「さっき言ったでしょ?私は娘になれなかった。生を受けて地球に誕生することが叶わなかったわ。真中凛としての私の魂は無限の時に閉じ込められたの。」

「そんな……お前は生まれてくることができなかったのか」

匠はかけてやる言葉も思いつかない。凛は何も気にしていない様に話を続ける。

「あなたの記憶を見ているとある期間だけすっぽりと抜けていた。何も見えなかったの。次にあなたの記憶を見た時、お母さんはあなたの隣から居なくなっていたわ。その時何があったのか、あなたがどうしてその期間の記憶を失ったのか、私は知りたい。それが理由よ」


スケールが違いすぎる。匠は凛の話に言葉を失う。そんな非現実的な話があるのか。しかし、匠は現に非現実的な体験をしている。一種の認知的不協和状態だ。現実離れした話に頭がついていかない。凛の言葉に嘘は感じられない。しかし、匠の中の常識と反射的に葛藤してしまう。


「なぁ、凛」

「あら、いきなり下の名前で呼ぶのね」

「ダメだったか?」

「別に、構わない……」

柄にもなく照れ臭そうにしている。

「なんだよ。照れ臭そうにして。可愛いとこあるじゃねーか」

「うるさい。もう、下校時刻になるわ。残りはまた今度よ」

教室を出ようとすると、最終下校を告げるチャイムが鳴った。




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