本当の思い3
匠は自宅の窓越しに凛と会話をしていた。パジャマ姿の凛は少し眠そうだ。欠伸をしている。
「なぁ、凛。やっぱり、お前の言う通りだったよ。ちー先輩の転校、止められなかった。結果は変わらないんだな。」
「はぁ」凛は大きなため息をついた。
「何だよ。」
「あなた、そんなことで私を呼び出したの?」
「悪いかよ。」
「悪いわ。」
「お前が言ってたことは間違ってなかった。俺が独りよがりで出しゃばってただけだったんだ。ごめん。」
匠はバツが悪そうな顔をした。
「はぁ……」凛はさらに大きなため息をついた。
「また、ため息ついた。幸せが逃げるぞ。」
「誰の所為だと思っているのかしら?気付いていないのなら謝られても嬉しくない。」
凛はそっぽを向いた。
「気づいていない?何のことだよ?」
「本当に鈍感なのね。自分の気持ちの変化にも気付いていないのなんて。だから、お母さんは居なくなったのよ。」
凛は皮肉めいた言い方をした。
「琴音は関係ないだろ。」
「あなたは結果に囚われすぎている。近衛千里の転校を止められなかったからって、全てが無意味だったの?誰も救われなかったのかしら?」
「でも、俺はちー先輩を」
「あなたはどうだったの!?」凛の口調は少しだけ強くなった。
「えっ?」
「あなたはまだ後悔しているの?全力を尽くした結果じゃないのかしら?何もできなかった過去の自分と同じだと思っているのなら、お母さんが居なくなった真実に直面した時、あなたはまた同じ道を歩む事になるわ。」
匠は少しだけ考えた後、曇りのない顔で凛を見た。
「俺は……俺は、後悔していない。ありがとな、凛」
匠は優しく微笑みかける。
「本当にずるいわ、あなた」




