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本当の思い2

「話ってなんだ?」

「ちー先輩、俺は後悔してきました。それが嫌だったから頑張りました。でも、やっぱり変わらないんですよね?」

「……そうだな。」

「どうしても、ですか?」

「あぁ……」

匠は唇を噛み締め、悔しそうな顔をした。

「私からも質問していいか?」

「えっ?」

「だめか?」

「いえ、いいですよ。」


千里は屋上を少し歩き、柵の近くまで行った。千里の髪が風でなびいた。

「あの時、私の抑え込んでいた気持ちを吐き出させてくれてありがとな。でも、何で私があの会場に来ているとわかったんだ?揚羽には、私が行くことは言うな、と言ったはずなんだがな。」

「えぇ、言われましたよ。ちー先輩は来ないって。」

「じゃあ、どうしてお前はわかったんだ?」

「信じていたからです。ちー先輩は来てくれるって。」

「なんだそれは?」千里は拍子抜けしている。

「だめですか?」

「いや、だめというか、本当にそれだけか?匠のことだからなんか根拠でもあるんじゃないかって思ったんだが……」


千里の読みは当たっていた。匠がそう思ったのにはある理由があった。


「まぁ、実はそう思ったのには当麻先輩から聞いたことにヒントがあったからなんですけどね。」

「ヒントだと?」

「えぇ、今日の朝、電車に乗る時に揚羽先輩とこんな話をしたんです。『ちー先輩にお土産でも買うんですか?』って。でも、揚羽先輩は『買わない』って断言したんです。」

「それがなんだ?」

「コンクール会場に着いて建物内を散策している時、当麻先輩から昔の話を聞きました。揚羽先輩はどこかに出かけると、必ずちー先輩や当麻先輩にお土産を買っているんだって。雑誌まで持ってきていた揚羽先輩が、東京に来てるのにちー先輩にお土産を買わないなんて変だなって思いました。」

「なるほどな。私が会場に来ることを知っていたから揚羽はお土産を買わないって言った。つまり、私が会場に来ているとお前も思ったわけか。」

「はい。」

「面白いな匠は。お前のそういうの聞いてて飽きないよ。」千里は笑いながら言った。

「でも、そんなのきっかけでしかないですよ。ちー先輩が来ているって信じていたから、いや、本当は居て欲しいっていう願望だったのかもしれない。だから!」

匠が思いの丈をぶつけようとした時だった、千里はジャンプして匠の頭に噛み付いた。

「い、痛い、痛い。」

千里は匠の頭から離れた。

「何なんですか、いきなり。」

「馬鹿者が。お前の気持ちなどお見通しだ。それ以上言うな。耐えられなくなるだろうが。」

千里は後ろを向き、匠に背を向けた。その声は震えているように聞こえた。

「ちー先輩……」


「お前の努力は無駄ではない。きっと、未来は変わる。お前の記憶にこんな物語はあったのか?」


千里の言葉に匠は衝撃を受けた。

「えっ……?今なんて?」

匠は目を見開き動揺を隠せない。


「ふん、この私が気付かないとでも思ったのか?俄かには信じ難いが、お前との会話には色々と不自然な点があったからな。お前は未来の出来事を知っているんだろう?」


静かな時が流れた。唐突に放たれたその言葉は、匠の背負っている見えない重荷を取り除いた。ずっと一人で使命を背負い、後悔と闘っていた。この事に気付いてくれた事がどれだけ匠の救いになったのかは、計り知れない。


匠は驚き、固まっている。自分が涙を流していることにも気が付かずに。

「おい、匠!どうしたのだ?」

「えっ?あっ、まただ。俺、いつからこんな涙脆くなったんだろうな……」匠は涙を拭う。

「辛かったんだろ?お前が何でこんな事になったのか私は知らない。言いたくなければ、それでもいい。でも、一人で背負うな。私はお前の味方だ。」

「ちー先輩、ありがとうございます。」

「もう、日も暮れるな。遅くならない内に帰ろうか。」

夕日は殆ど沈み、遠くの方だけが朱く染まっている。

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