30. 解呪
尋夢はカックリーの家の玄関先に立ち、鍵を鍵穴に差し込むのにさんざん苦労した。
使ってみて初めて分かった——この鍵はあまりにもおかしい。弾丸の形をしており、弾頭が前、薬莢の底縁がキーホルダーに引っかかって、滑って滑って全然差し込めない。
ようやく正しい方法でドアを押し開けると、玄関の灯りがついていることに気づいた。
カックリーが門廊の真ん中に座っていた(椅子はリビングから運んできたものだ)。
彼女は足を組み、両腕を組み、白いニットの袖口は肘関節の上まで捲られ、一節の前腕を露わにしていた。灰白色の逆立った髪は暖かい光の中で普段よりさらに激しい勢いであらゆる方向へ突っ張り、まるで高圧電流をくぐったばかりのようだった。赤い同心円の瞳孔は灯りの中で微かに収縮し、彼の顔にロックオンされ、微動だにしなかった。
「……お前、ここで何をしてるんだ? 」
「小僧、俺がなぜ怒ってるか分かるか? 」
「あんまり気にしてない」
「一:お前は俺を長く待たせすぎた 、腰が痛くなった 。二:お前は恩知らずだ! どうして俺以外の奴と一緒に事件を解決できるんだ?** 」
「何だって? 」
「もう知ってるんだ! 俺に送られてきた副本を見たんだ! どうしてそんなことができるんだ! 俺こそが聖女 だ! 俺こそがお前の相棒 だ! 」
「うんふん~~~ 」
「その『うんふん』は何だよ! 」
「うんふん~~~~~ 」
「このクソ野郎! 」
「うんふん~~~~~~~ 」
「他のこと言えよバカ! 」
「……お前はもう知ってるだろ。副本も見たんだし」
「俺が本当に気にしてるのは俺たちだけの決めゼリフ だ……お前たち、言ったのか? 」
「……まさか。俺はそこまで厨二じゃない」
「それならいい。今度商標登録 してやる。そのときはガントピア最強最高の聖女様がいる時だけその台詞を言えるようにしてやる」
「……それに、俺が事件を解決したわけでもないし」
「……あ? はは! どうやら異世界から来た探偵様は横取りされた みたいだな? 俺がいなかったからか? 気分はどうだ? 気分はどうなんだ? 」
「まあまあだよ。事件が解決すればそれでいい。それに今回は確かに俺の実力が及ばなかった し……それに王女殿下は確かにいい人だったし……(小声)** 」
「ちょっと待て、誰だって? 」
「ヴィリディス・エルウィン殿下だよ。副本に署名はなかったのか? 」
「…………」
「ど……どうした? そんなに見つめて? 」
突然カックリーが椅子から飛び上がり、ソファの側面を越えて横方向に宙返りし、距離を取り、尋夢に構えと神秘的な印を示した。
「解!!! 」
「……何をやってるんだ? 」
「このクソ野郎! 解けなかったのか! 」
「おい、人の話を聞けよ」
そしてカックリーは再び宙返りして階段の上に飛び乗り、印の変化に合わせて光が明滅した。
「界! 門! 羅! 載! 開! 」
巨大な鋼鎖が部屋の影から射出され、巨蛇のように少年の身体に突き刺さった……痛くはなかったが、しかし確かな陰冷を感じた。
「カックリー! お前――! 」
「尋夢、我慢しろ。すぐに解呪してやる! 」
聖女はスカートから明らかに何度も使われた符紙を取り出し、無理やり探偵の口に貼り付けた。
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『陰陽術入門・基礎符法編』、『即席結界術・実戦応用』、『簡易通霊法』、トカゲの乾物、白く濁った法珠、数個の水晶、一本の桃木剣、一本の庭から抜いてきた枝。
これらのものが床の上に扇状に広げられ、カックリーがさっき地下室から埃まみれの箱から引っ張り出してきたものだ(あの枝は別で、今や探偵はそれが庭の腔線冬青から剥ぎ取ったものだと気づいた)。しかしどれもなかなか新しく、特に『簡易通霊法』はプラスチックのカバーさえも剥がされていなかった。
「おかしいな、もうとっくに効果が出てるはずなんだが…… 」
カックリーは百思不得其解だった。本に載っている全ての解呪方法を試したのに、探偵に一切変化がなかった。
あの符紙を除いては。今は少年の抵抗で歪み、左側は彼の下唇に貼りつき、右側全体はもうめくれ上がっており、まるで風に煽られた旗のように、縁が空気の中で微かに震えていた。
「聖女様、陰陽術ばかり研究しないで、もしかしたら魔法かもしれませんよ? 」
「ありえない。もし催眠魔法のようなものなら、とっくに気づいてる。俺は聖女になる前にルシフィット様に特訓されたんだ。だから陰陽術のようなものか、あるいは何か他のヤバいものの可能性しかない」
「じゃあ、俺がそもそも催眠なんてかけられてない可能性は?! 」
「催眠にかけられてる奴はたいてい自分はかかってないって言うんだ。酔っ払いが自分は酔ってないって言うのと同じだな。でも…… 」
「でも? 」
「……今はもう他に手もないし、たとえお前が操られてても俺に勝てるわけがないし……だから……解! 」
少女の声とともに、巨大な鋼鎖が少年から解け、ゆっくりと影の中へ戻っていき、後者は虚脱して地面に倒れた。
「カックリー! さっき何の馬鹿げたことしてたんだ! 」
「ああ、俺が陰陽術ブームのときは忙しくて、幻術に特効のあるこれだけしか覚えなかったんだ 」
「違う! なんで俺が幻術にかかってるって言い張ったんだよ! 」(「それに陰陽術ブームって何だよ…… 」)
「お前が『ヴィリディスはいい人だ』って言ったからだよ! 」
「なんでだよ? あの人は確かにいい人だろ! 」
「しまった、もっと早く解かなければよかった」
「ちょっと待って待って、話し合おう、冷静になれ。もしかしたら俺が何か間違えてるかもしれない」
「……ヴィリディス・エルウィンは、ガントピアの第一王女 であり、俺の中学の同級生 でもある…… 」
「お前、まさか中学に行ってたのか」
「話をそらすな! とにかく……彼女はとんでもない神経病 だ…… 」
「……カックリー……お前、イジメられてたのか?** 」
「え? 違う、彼女にそんな度胸はない。でも他にもいろいろ悪いことをしたんだ。俺たちの同級生のディディ・ヴィラっていう子を彼女が死なせてしまってな。そのせいでガントピアと隣冕邦の関係が今でもずっと悪いんだ」
「本当か? 資料とかあるのか? 」
「ない……全部消された ……でもとにかく彼女からは離れてくれ 、頼む。俺のためでもあるし、マグシンのためでもある」
尋夢は初めて目の前の白毛がこんなに真剣なのを見て、本当にヴィリディスが悪い女かもしれないと疑い始めた。
(「でも今日の初対面の感じは確かに良かったんだよな……とりあえず注意しておこう 」)
「ああ、分かった。とりあえず夕食にしよう 」
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「また薬莢菜 のスープか? お前はこれしか作れないのか? 」
「黙れ。食べさせてやるだけ感謝しろ」
「カックリー、今日一日何してたんだ? 」
「ああ、マグシンに射撃を教えてたんだ。それと今夜は彼女に連絡するなよ 」
「どうした? 」
「指導の成果が悪くて、彼女の右手が腫れた んだ」
「ひどいのか? 」
「大丈夫だ。二日くらい休めば治る……とにかく装填祭のイベントには参加できない 」
「何のイベント? 」
「全城で正午十二時に一斉に装填して、一発鳴らす んだ」
「わあ、それに乗じて殺人をする奴がいそうだな…… 」
「まあ、大抵はその場で捕まるよ。広場だしな」
「あと何日? 」
「明後日だ。だから明日は休暇を取って家の装飾をするつもりだ」
「お前は一週間にほとんど出勤してないだろ……」
「お前もな」
「え! 明日も台風が続くんだろ! 明後日風が止まなかったらどうするんだ? 」
「分からん。こんなことは今までなかった。通知を待つしかない。でも俺がもっと気にしてるのは祭典用地下牢 のことだ。多くの専門家が今回は出現しないだろうと言ってる。この二日間で大量の小規模地下牢が出現したからな**」
尋夢は茶碗を流しに放り込み、自ら手袋をはめた。これは弾頭兎コラボのもので、カックリーはわざわざ尋夢のために買ったと言っていたが、実は自分が欲しかっただけだった。
「うん……地下牢に入った日のこと覚えてるか? 」
「もちろん。どうした? 」
「あの時……『黎明滅点 』でちょっとした面白い現象が起きたんだ…… 」
「どんな現象? 」
「最後に竜に向かって撃った数発……あの時、うっかり二発の弾丸を同じ弾倉に入れてしまって、それらが重なったんだ。威力が普通よりずっと大きかった……** 」
「あ? まさか爆裂魔法をこっそり覚えたのかと思ったよ、銃の仕業だったのか」
「これって正常なのか? 」
「……いや、絶対に正常じゃない。そんな技術は聞いたことがない。ちょっと待って、調べてみる」
尋夢は手袋を外し、いつからか身についた個人的な習慣でもう一度手を洗った。
「調べられたか? 」
「ちょっと待て」
「…………」
「ない。情報が一切ない。どの会社の製品でもないし、どの工房の特注品や展示品でもない」
「……まさか軍用武器 を手に入れたのか…… 」
「ありえない。そう簡単には……おい、尋夢、この銃は強すぎる。初心者には向かない。俺の「居合」と交換しないか?」
「いやだ」
「『奪命遊侠』コラボの弾倉も付けるぞ? 装填するたびに名台詞『私に撃ち抜かれることを光栄に思え、お前たち』が流れるんだ」
「いやだ!」
「いやだと言うならいやだでいいけど……そんなに大声を出さなくても……ちょっと撃たせてみてもいいだろ? 」
「いいよ。気をつけろよ、暴発するなよ」
カックリーは黎明滅点を受け取り、壁の隅に向き、弾倉を開けた。
一発目の弾丸を押し込む、
全て正常。
二発目の弾丸を押し込む、
二発の弾丸が重なり合い、ネガのような不安定な影と化した!
「わあわあわあ! 本当だ! 」
「あの時はこうだったんだ! 気をつけろ! 暴発するなよ! 早く弾丸を出せ! 」
「ビビりすぎだ……え? 弾丸が取り出せない!!! 」
「マジか! 早く庭で撃て! 」
「ダメだ! この団地は発砲禁止 だ! 外もダメだ! 」
「じゃあどうする…… 」
「嘘だよ。ほら、これで取り出せた……痛ッ! 」
カックリーが指先で弾丸を挟み出した瞬間、一発が突然ゲームのバグったエンティティのように飛び出し、少女の前額に命中した。
「……ざまあ」




