ようこそ、ガントピアへ。
灰色のカーテンをくぐると、まず最初に漂ってきたのは火薬の匂いを帯びた朝の光。次に目に飛び込んできたのは、青々とした森だった。よく見ると、その木々は白樺のように見えるが、白樺よりずっと硬く、色も濃いように思える……
「逆だ逆だ」
カックリーが私の襟を掴んで、力強く振り返らせた。
そこには――とてもじゃないが誇張としか言いようのないほど広い大通りが広がっていた。路面は艶消しの黒色で、三メートルおきに真鍮色の金属帯が埋め込まれている。帯にはなぜか見覚えのある螺旋模様が刻まれていた。両側の建物――いや、あれは建物とは呼べない。垂直にそびえる巨大な金属の柱がずらりと並び、表面には規則的な溝と突起があり、先端は鋭利で、陽光の下で冷たい青い光沢を放っている。
「……螺纹鋼?」
「銃身だよバカ!」
「ようこそ、ガントピアへ」カックリーがスーツケースを私の足元に置き、両手をプリーツスカートのポケットに突っ込んで(?)、目を細めて遠くを見つめる。「正確にはね、撞針市・第十八区・腔線大通り。私たちが今立っているこの場所は――」
彼女はつま先で地面をトントンと叩く。私が視線を落とすと、そこだけ路面が違っていた。巨大な円形の金属板で、中央には小さな突起があり、周りには放射状の同心円の模様。
「……雷管?」
「ブルズアイ! ここは雷管広場、この街の主要な入口だよ。でも君は運がいい。今日は装填祭じゃないから、出てきた瞬間に踏み潰されることはないね――」
ありがとう、説明しなくていいよ。
遠くから低い轟音が聞こえてきた。次第に近づき、規則的な振動を伴っている。
巨大な……バス?
外形は引き延ばされたアサルトライフルのようで、車体側面には放熱スリットのような窓が並び、車体前面の「銃口」部分にはLEDライトが取り付けられている。乗客は弾倉のような形をしたドアから次々と降りてくる。
「あれは……」
「公共交通機関、M4型連接バス。普通はエーアール線って呼んでるね」カックリーは気軽な口調で、「経済的で便利――って、なんで君、顔真っ青?」
確かにさっき女神はこの世界の人は銃が好きって言ってたけど、これってやりすぎじゃないか……ていうか何から何まで銃の部品かよ……
もうここまで来たからにはやるしかない……
「なんでもない。で、調査する事件って何なんだ?」
「急かないでよ。もうちょっとこの世界を見て回った方が、事件を解くのにも役立つからさ」
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十五分後、私たちは並んで腔線大通りの緩やかな坂を下りていた。手にはそれぞれアイスクリーム。
まだセーターを着ている天気なのに、アイスクリームを食べても大丈夫なのか?
私のは黒いシングルボールで、薬莢の形をした脆筒にしっかりと収まっている。コーンの表面には腔線の螺旋が下向きに刻まれ、上にはキラキラした何かが星星点点と散りばめられていた。
カックリーのはカラフルな8ボール。コーンは普通より長く、彼女いわく「長弾倉モデル」。彼女が一口舐めるたびに、アイスの塔全体が微妙に揺れて、もうすぐ落ちるんじゃないかと思う。
「思ってること、わかっちゃうよ。私の構造は放熱が早いんだから~~~そして君には分けてあげないからね~~~」
「逆だろ……(汗)」
視線を戻す――雷管キャラメル味……でも普通のキャラメルと同じだよな? まずは試してみよう――
!!!
最初はほろ苦い火薬のような風味、その後、どっと押し寄せるキャラメルの甘さ。後味にはかすかに硝煙の香りが漂う。この味は、ルシフィットがキッチンに立ち、鼻歌を歌いながら炒め物に見慣れない粉を振りかけていたあの午後を思い出させた。
「そういえば、通貨制度は弾丸じゃないんだな。てっきり弾丸の種類でお金を代用してるのかと」
「何言ってんのお前?」カックリーはちょっと驚いたように首を傾げる。「弾丸は弾丸だよ。弾丸をお金の代わりにする人なんているわけないでしょ」
「でもビルの外観が……」
「銃だよ」
「バスの外観が……」
「銃だよ」
「お金の外観が……」
「ただのお金だよ」
「……」
足元の大通りは朝の光の中を延々と続く。三メートルおきに埋め込まれた真鍮色の金属帯――どれも同じ模様で、どれも朝日に温かな金色の輝きを放っている。
道端の「建物」は緩やかな坂の両側に整然と並んでいる。近くで見ると、それらの銃身のようなビルは想像以上に……精緻だった。一本一本の「銃身」の外壁には均一な溝と突起があり、陽線・陰線がくっきりと分かれ、朝日に整った影を落としている。先端が平らで見慣れない装置が載っているビルもあれば、尖った斜面を持ち、まるで本物の弾頭のように見えるビルもある。
「口径が違うのか?」
「観察力、なかなかだね」
カックリーはスーツケースを脇に挟み、揺れる八球……いや、七球の塔を安定させながら、左手を差し出して比べてみせる。
「ガントピアの建物は口径でグレード分けされてるんだ。一番細いのは5.56ミリ級、普通の住宅。少し太いのは7.62ミリ級、商業オフィスビル。一番太いのは――」
彼女は遠くの暗灰色の巨柱を指さす。表面は冷たい青い光沢を放っている。
「12.7ミリ級、政府機関。それ以上の大きさは――」
目を細めて街の奥深くを見つめる。そこには他のすべてより何倍も太い黒い円柱があり、先端は雲の中に没し、果てが見えない。
「あれはヘビースナイパー級。撞針市の行政中心。王様がそこで執務しているよ」
「王様? まだ封建制なのか? 」
「それはね、まあ複雑なんだ。また今度ね」
視界の隅でカックリーが五個目を平らげ、口を押さえてしばらく苦しむ。
「……」
広場にはちらほらと歩行者がいる。トレンチコートを着た中年男性が早足で通り過ぎる。手に持ったブリーフケース――その形は扁平な弾倉で、両側には透明なのぞき窓があり、中に折り重なった書類がぼんやりと見える。女性がベビーカーを押している。ベビーカーの車輪は弾鏈の節の形で、幌にはこんな言葉が印刷されていた。「将来の口径は未定」
「この街の人たちは……こういう環境で小さい頃から育つの?」
「そう、生まれたときからね」カックリーは六段目に突入し、速度は明らかに落ちていた。「ガントピアの子供たちの初めてのおもちゃはゴム製の銃口リング。初めての本は『初めての銃』の絵本。初めての童謡は――」
彼女は歌わず、代わりにほんの数小節を鼻歌した。私はそのメロディーがわかった。昔とても親しんだ童謡の変奏で、歌詞はおそらく別のものに置き換えられているのだろう。
カックリーはあと三つの球を残して食べていた。
「おかしいとは思わないのか?」
「私は君たちのところがおかしいと思うよ! ルシフィット大人が言ってた。君たちのところの人間は銃が嫌いで、ただの武器としてしか見てないんだって。なんて浅はかなんだ! どうしてそんなにこの文明の火種、命の初光を軽んじるの?」
「文明の……火種? 」
「そうだよ。あのときルシフィット大人が銃を君たちに与えなければよかったんだ」
「何言って……」
「私の言い間違いか? 銃があってこそ、大地があり、空があり、海があるんだ」
「……」
あああ、この女神、いったい何をやってきたんだ……
まさか原始人に銃を渡したとかいう話か……
「だからさ、案件」
「うん」カックリーは最後の半ボールをかじり、もごもごと言った。「案件」




