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第18話:『青空の下のみそパーティーと、騎士団長の小さな嫉妬』


「うおおお……っ! これがマドカ様の作られた、新しい『ミソ』の料理ですか……っ!」


「五臓六腑に染み渡る……! 涙が出るほど美味い、美味すぎるぞ……っ!!」


お屋敷の広大な裏庭からは、ガタイの良い男たちのむさ苦しい――ゲホン、失礼、感極まった大歓声が響き渡っていた。


今日は、新しく完成した自家製味噌の味見を兼ねて、ギルバート様の部下である黒狼騎士団の面々を招待し、青空の下で大和食パーティーを開催しているのだ。


メニューは、大鍋でコトコト煮込んだ具沢山の『豚汁』と、炭火で香ばしく炙った『焼きおにぎり』。


この日のために、あの初めて裏庭で畑仕事をした日に、魔法収納から日本の白米の種モミを取り出して菜園に植え、大切に育てて大収穫しておいたお米をこれでもかと使っている。


醤油と味噌が焦げる香ばしい香りが風に乗ってお庭いっぱいに広がると、お腹を空かせた騎士たちはまるで餌を待つ大型犬のように目を輝かせて行列を作っていた。


「マドカ様、おかわりをいただけますか! この『焼きおにぎり』を食べると、体の中から力がみなぎってくるのです!」


「はい、どうぞ! いっぱい食べてくださいね!」


私がちんまりとした身体で大きなしゃもじを手に立ち働いていると、騎士たちは「なんと尊い……」「まさに女神様だ……」と、拝むようにしておにぎりを受け取っていく。

すっかり騎士団のアイドル扱いである。


そんな和気あいあいとした空気の中、私のすぐ隣から、ピキピキと凍りつくような冷たい気配が漂ってきた。


「――おい。お前たち、マドカに近づきすぎだ。おにぎりを受け取ったら、速やかに三歩下がれ」


振り返ると、そこにはお皿を持ったギルバート様が、周囲が震え上がるほどの強面をさらに険しくして立っていた。

鋭いサファイアの碧眼から放たれる圧倒的な威圧感(嫉妬)に、さっきまで大はしゃぎしていた騎士たちが「ひえっ!」と一斉に直立不動になる。


「だ、団長……。我らはただ、マドカ様に感謝を……」


「感謝なら言葉だけで十分だ。マドカの小さな手を煩わせるな。……ほら、マドカ。お前はもう休むんだ。そこに座っていろ。はい、あーん」


「ふぇっ!? ギ、ギルバート様!?」


ギルバート様は私の抗議を完全にスルーすると、自分が持っていたお皿から、食べやすい大きさにちぎった焼きおにぎりを私の口元へと差し出してきた。


大人の男の人からの、突然の「あーん」である。しかも部下たちの目の前で。


「ほら、お前ががむしゃらに動くからネギが頬についている。……まったく、お前は本当に可愛いな」


ギルバート様は私の頬を大きな指先で優しく拭うと、そのまま私の小さな頭をこれでもかと愛おしそうに撫で回した。大人の色気が駄々漏れな極上スマイルを向けられ、私の顔は一瞬で焼きおにぎりより真っ赤に染まってしまう。


「だ、団長様が完全にマドカ様に骨抜きにされている……」


「ごちそうさまです……(色んな意味で)」


遠巻きに見ていた騎士たちと、お盆を運んできた老執事のバルトさんが、揃って温かい微笑みを浮かべている。


「マドカ。お前が皆に慕われるのは誇らしいが……やはり、俺だけのものにしておきたいな」


ギルバート様は私の耳元に顔を寄せ、周りには聞こえないような過保護な低音でぽつりと呟いた。その碧眼に宿る熱い独占欲を受け止めた瞬間、私の胸の奥で、心臓がまた決定的な音を立てて跳ねるのだった。


王宮を倒し、お屋敷に平和が戻ったからこそ、ギルバート様の中で「マドカを正式な妻として迎えたい」という想いが、静かに、けれど限界まで膨らんでいくのを、私はまだ知る由もなかった――。


ここまでお読みいただきありがとうございます!



次回は【7月14日(火) 18時】に更新予定です。お楽しみに!



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