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第16話:『我が儘聖女の自滅と、完全なる勝利の夜』


お屋敷にはこれ以上ないほど穏やかなスローライフが戻ってきた。


優秀な騎士たちに完全に見捨てられ、魔力回復ポーションも底を突いた王宮の王族たちは、完全に国としての防衛能力を喪失した。


焦った強欲な王族や大臣たちは、引きこもっていたあの我が儘な『光の聖女』を無理やり引きずり出して戦わせようとした。


しかし、戦場を怖がった彼女は「こんなクソゲーもう嫌!」と大泣きし、あろうことか聖女の魔力を暴走させて王宮の主要な施設を自爆させてしまったという。

この前代未聞の失態に対し、ついに周囲の有力貴族たちや、宗主国である我が帝国が黙っていなかった 。


「国を危機に陥れた無能な王族は、一国の長として認められない」として、帝国の厳格な法に基づき、王族や大臣たちは一斉に爵位と地位を剥奪。すべての資産を没収された彼らは、公式に地方の鉱山での過酷な強制労働へと送られる判決が下ったのだ。


もちろん、おまけの女子大生聖女も、数々の贅沢三昧と王宮自爆の罪を問われ、一罪人として同じく鉱山へと連行された。


(うわぁ……。自業自得とはいえ、本当に勝手に自滅しちゃった。でも、これでようやく終わったんだ)


これで、私を無能扱いして『黒の森』にポイ捨てした連中は、合法的に世界から完全に没落したのである。


◇ ◇ ◇


その日の夜。

お屋敷の静かな裏庭には、満天の星空が広がっていた。

私は一人、夜風に吹かれながら、月明かりに照らされた大好きな和食素材菜園を眺めていた。


「――マドカ。こんな夜更けに一人でどうした。夜風は身体に障ると言っただろう」


背後から、低くて心地よい、大好きな『お兄さん』の声が響く。

振り返ると、そこには私を心配そうに見つめるギルバート様の姿があった。

昼間の凛々しい騎士団長服のボタンをいくつか外し、少しリラックスした雰囲気を纏っている。


「ギルバート様。……ううん、ただ、本当に王宮の脅威がなくなったんだなぁって、実感が湧いてきて」


私がちんまりとした身体を少し縮めて微笑むと、ギルバート様はゆっくりと私との距離を詰めてきた。


「ああ。もうお前を無能と罵る者も、お前を都合の良い奴隷のように連れ戻しようとする不届き者も、この世界には一人もいない」


ギルバート様は私の目の前で足を止めると、愛しさに耐えかねたように、その大きな腕で私の小さな身体をそっと抱きしめた。


「っ……、ギルバート様……?」


「マドカ。本当によく頑張ってくれた。……これからは何も恐れる必要はない。お前は一生、この俺の屋敷で、俺のためだけに美味しい飯を作って笑っていればいいんだ」


背中に回された彼の大きな手の温もりから、言葉よりも雄弁な、深くて温かい愛おしさが伝わってくる 。

王宮を完全に守り抜いたという騎士団長としての威厳と、私を絶対に手放したくないという重い独占欲が混ざり合った彼の瞳を見つめていると、私の胸の奥で、心臓がまた激しくトクンと音を立てた。


「はい……! 私、ギルバート様のお屋敷に拾われて、本当に良かったです。これからも美味しいご飯、たくさん作らせてくださいね!」


私が彼の胸の中で満面の笑みを浮かべると、ギルバート様はフッと、大人の色気が駄々漏れな極上の笑みを浮かべた。


「ああ。約束だ。……さあ、愛しい我が家の聖女様。冷えてきたから部屋へ戻ろう。明日からは、もっと賑やかで美味しい穏やかな生活の始まりだな」


王宮の自滅に心の底からスカッとしつつも、ギルバート様からの超過保護なスキンシップと甘い独占欲がさらにパワーアップしていく未来を確信し、私は最高の幸せを感じながら、夜のお屋敷へと手を引かれて戻るのだった。


ここまでお読みいただきありがとうございます!



次回は【7月12日(日) 18時】に更新予定です。お楽しみに!



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