第12話:『帝国最強の一蹴と、焦る王宮の陰謀』
「ひっ……、あ、あああ……っ!」
お屋敷の正門前で、王宮の細目文官は完全に腰を抜かして大理石の床に這いつくばっていた。
護衛の王宮兵たちも、ギルバート様から放たれる漆黒の魔力に押し潰され、地面に額を擦り付けたまま指一本動かせずにいる。
帝国最強の騎士団長であるギルバート様は、冷酷極まりない碧い瞳で彼らを見下ろしたまま、腰の長剣の柄にゆっくりと手をかけた。
「我が国に、お前たちのような無能にくれてやるマドカなど存在しない。今すぐ消えろ。さもなくば、その首をここに置いていくか?」
「な、な……っ! ギルバート騎士団長、このような無能の女ひとりのために、王宮を、国王陛下を敵に回すおつもりですか!?」
文官はガタガタと震えながらも、必死に虚勢を張って叫ぶ。
けれど、ギルバート様はフッと冷たく鼻で笑っただけだった。
「敵に回す? 勘違いするな。お前たちが勝手に前線を崩壊させ、自滅しかけているだけだろう。……バルト、門を閉めろ。犬どもにこれ以上、我が邸の空気を汚させるな」
「御意にございます、旦那様」
老執事のバルトさんが、これ以上ないほど冷ややかな笑みを浮かべて重厚な正門をバタン! と閉め切った。
外からは、文官の「こ、このままではすみませんぞっ!お、覚えていろ――っ!」というテンプレのような負け犬の遠吠えが聞こえてきたけれど、私とお屋敷の面々は完全にスルーだ。
「マドカ。怖い思いをさせてすまなかったな」
門が閉まった瞬間、ギルバート様は一瞬でいつもの『過保護なお兄さん』の顔に戻り、私の前に屈み込んで心配そうに碧眼を揺らし、私の頭を何度も優しく撫でてくれた。
「いえ、私は全然! むしろギルバート様が格好良すぎて見惚れちゃいました!」
私が満面の笑みで答えると、ギルバート様は少し目を見開いた後、端正な顔をうっすらと赤く染めて、私の頭を何度も優しく撫でてくれた。
しかし、王宮の使者を追い返してほっとしたのも束の間。
数日後、王宮の使者たちが「甘利マドカのいる邸宅から、信じられないほどの魔力回復の気配がする」という情報を持ち帰ったことで、王宮はいよいよ本格的に焦り始めていた。
あの我儘な『光の聖女』のせいで前線の騎士たちはボロボロ、魔法薬も底を突き、このままでは国が滅びかねない。
王宮の秘密会議室では、あの細目の文官が、悔しさに顔を歪めながら大臣たちに進言していた。
「あの無能の小娘に、そんな奇跡の力があるはずがない! きっと、ギルバートの私邸の裏庭に、何か秘密の『魔力回復の薬草』が隠されているに違いないのです!」
「ならば、手段を選ぶな 。騎士団長にバレぬよう隠密を放ち、その薬草を根こそぎ強奪してこい!」
――そう。王宮の強欲な連中は、マドカの聖女の魔力が乗っていないとただの苦い野菜になってしまうとも知らずに、裏庭の『和食素材菜園』を盗み出そうと不穏な計画を立て始めたのだった。
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次回は【7月8日(水) 18時】に更新予定です。お楽しみに!
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