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第51話 ホーム、スイートホーム

 結局一時間ぐらいパーティを楽しんだ後、俺たちは早川邸を後にした。


 桜子は先輩に引き留められてたみたいだけど、なんとか脱出したようだ。


「ちょっと、置いてかないでよ!!」


 桜子が怒りながら走ってきて、先にポーチに出ていた俺たちに追いついてきた。


「あ、桜子、解放されたのか。てっきりもう先輩に一生解放されないと思って見捨てて来たんだけど」


「何で見捨てるのよ!」


「ごめんごめん」


 俺が怒られている間に、二条の車がポーチに乗り入れてきた。そして運転席のドアが開く。


 乗っていたのは二条の屋敷の執事だ。


「二条様。お待たせいたしました」


「うん、ありがとう。じゃあ皆、乗ろうか」


 二条が俺たちを家まで送ってくれるというので、俺たちは甘えることにした。


 車に乗り込む俺たち。


 最後に二条が乗り込んでドアが閉められ、車が動き出す。


 車が早川邸の敷地から出ると、俺は一気に緊張が解けた。


「……ふぅー。これで、一件落着か」


 俺の呟きに反応したのは二条だ。


「どうだろう。後はトピカさんの判断次第じゃ無いかな」


 トピカさんに命じられた神の力を持った眷属を殺すという命令。その一人目として五十嵐が選ばれた。


 命は奪わなかったが、神の力は奪ったので五十嵐はただの人となった。つまり眷属はいなくなった訳だ。


「まぁトピカさんも別に人を殺す事を目的にしている訳じゃないと思うから、許してくれるんじゃないかな」


「人を殺す事を目的としていなければね…………」


「怖い事ゆうなよ」


 否定出来ないのが怖い。


「お客様、殺すとか殺さないとか何の話をしているんですか?」


 俺と二条の会話に疑問に思ったほのかが口を挟んでくる。


 そういえば桜子とほのかには神の力の話はしてないんだった。迂闊に口にしちゃった。  


 ここは話を変えて有耶無耶にするか。


「まぁ、気にするなよ。てかもうお客様って呼ぶのやめてくれよ。もうお前は早川先輩のメイドじゃないんだし、そもそももう先輩の屋敷じゃないんだから」


 ほのかは結局二条の家で働く事になった。二条に聞いてみたら二つ返事でオッケーをくれた。ほのかには泣いて感謝された。


「むう……じゃあなんて呼べばいいですか」


「普通に拓也でいいけど」


「分かりました、拓也さん…………なんかしっくり来ないですね」


「人の名前なんだからしっくりも何もないだろ。てか()()もいらないから」


「拓…………やっぱり、お客様って呼ばせてもらいます」


「なんでだよ」


 お客様って呼ばれるのは結構むず痒い感じがするんだよな。


「…………ほのかさんと随分と仲がいいのね」


 俺の隣に座った桜子が、棘のある言い方をする。


「まぁ、色々あったしな」


 一緒に、五十嵐と戦ったり早川先輩と戦ったり…………まぁ実際にはどちらとも戦ったというか一方的に攻撃されただけだけど。


 今日初めて出会ったはずなのになんか昔から一緒にいたような居心地の良さを感じる。何でも話せる友達って感じ。


「まぁ桜子と同じ様なものかな」


「なっ、ぽっと出なのに…………」


 何故かショックを受ける桜子。


 俺の反対に座った、眠そうな顔の咲が鼻で笑う。


「結局桜子もその他大勢と同じ位置。私とは大差なの」


「何の話だよ。…………桜子も何でそんな歯ぎしりしてるんだ」


 よく分からない二人に挟まれながら俺は困惑する。


 それを見ていた二条が口を挟む。


「拓也くんは、不思議だね。特別何かが出来るわけでもないのに、皆に好かれている。どう考えても並以下なのに、人並み外れた魅力を持っていたりする」


「バカにしてるよね?」


「いや、全然。むしろ褒めてるんだよ。僕も長年生きてきて知っている事がある。歴史を変えるダメ人間というのがいるんだよ」


「やっぱりバカにしているじゃん!」


 面と向かってダメ人間とかいうなよ。まぁダメ人間だけどさ…………


「タクヤはダメ人間なんかじゃ無いわ。凄いわ!」


 二条の隣に座ったアリスさんが褒めてくれる。


「…………やっぱりアリスさんと一緒に居ると元気が出るわ。ありがとう」


「?う、うん。どういたしまして?」


 アリスさんは何でお礼を言われたか分かっていないけど、俺はしみじみとアリスさんの全肯定を受け入れる。やっぱり嬉しい。神だわ。アリス神だわ。


「…………こっちのぽっと出は、強いの…………」


 咲が苦虫を噛みつぶしたような顔をしているので俺は頭を撫でてあげる。


「おい咲。眠かったら寝ててもいいぞ。家に着いたら抱っこでベットまで運んでやるから」


 そういうと咲はおとなしくなって、すぐにすぅすぅと寝息をたてはじめた。なんやかんや結構遅くなったしな。小学生は寝る時間だ。


「ねぇ拓也、私も今日一日疲れたわ」


 そういって桜子が何かを期待した顔をする。


「そうか」


 俺は咲の頭を撫でるのに集中する。いやー髪が柔らかいなぁ。最近はあんまり話も少なくなってきたけど、ここ最近急に距離が近くなってお兄ちゃん嬉しいよ。


「ちょっと、拓也!…………もう、知らない!」


「痛っ」


 桜子が俺の脇腹をつねると、そっぽを向いて寝始めた。


 なんだよ、疲れて機嫌が悪いからって人に当たるなよ。




 車は走り続けて、アリスさんとほのかもうとうとと寝始めて、俺と二条だけが起きている状態になった。


 俺は二条に気になっている疑問を一つぶつけた。


「…………なぁ二条、結局五十嵐の力を俺は使える様になったんだよな?さっきから試しているんだけど、使えないんだけど」


 二条の光神の力。光の剣を作ったり弾丸にしたり。後は女の人を操れる力もある。それを五十嵐から奪ったから、俺が使える様になっているはず。


 でも、さっきから試しているけど、全く発動する気配が無い。


 答えは二条が教えてくれた。


「ああ、五十嵐くんの力は()()だよ」


 そう言って懐から一冊の本を取り出した。


 え?


「何、その本」


「五十嵐くんの持っていた神の力だよ?」


 いや、そういわれても。


「光神の力って俺が持っているんじゃないの?」


「いや、記憶の世界では君のものになった訳だけど、それはあくまであの中だけだ。あの世界には時間が無い。そして時間が無ければ記憶は新しく手に入れる事が出来ない。記憶を無くす事は出来てもね。だから五十嵐くんの記憶から神の力を消す事は出来るけど、君のものにすることは出来ないんだ。だから本来、五十嵐くんから君が奪った記憶はそのまま消える運命だった。そこで僕がこの本を触媒にして現実に持ってきたんだ。何かの役に立つかも知れないしね。本であれば時間の影響を受けずに記憶を移動する事が出来るし。そもそも本というものは…………」


「いや、もういい。分かった分かった」


 長くなってきた二条の話を遮る。正直二条の長話は俺にはほぼ理解出来ない。完全に耳から入って来た物がそのまま反対の耳から出ていく。


「とりあえず五十嵐の神の力はその本の中にあって、五十嵐は眷属ではなくただの人になったんだろ?」


「そうだよ」


「ならいいや」


「いいのかい?」


 二条は何故か驚いた顔をする。


「君はこの力が欲しくないのかい?」


「うーん。これからもトピカさんのために眷属と戦わないといけないと考えると戦える力も欲しいけど……まぁ、アリスさんが居るし」


 俺はそう言って、背筋を伸ばした状態で目を閉じているアリスさんを見つめる。


「…………そうかい。君がいいなら僕がもらっても?」


「ああ、あげるあげる。その代わりといってはなんだけど、またトピカさんに眷属を殺せって言われたら、今回みたいに協力してくれない?やっぱり俺に人殺しは無理だし」


 二条はしばらく黙ったままだったが、ふっと表情を崩していつものニコニコした顔になった。


「……うん。君はやっぱり、不思議な魅力があるね」


「なんだよそれ」


「はは、気にしないでくれ。それより、いいよ。君の話に乗ろう。必要な時はすぐに僕を呼んでくれ」


「マジ?よかった。助かるわ」


 これでまたトピカさんに命令されても、殺す殺さないで悩む必要がなくなる。助かるわ。






 しばらくして、車が止まった。外を見ると見慣れた我が家がある。


「二条様、着きました」


「そのようだね。ありがとう…………じゃあ拓也くん。これで今日はお別れだね」


「ああ、送ってくれて助かった。ありがとう。桜子、着いたぞ。アリスさんも降りましょう」


「……ふぇ?…………もう着いたの?…………」


「……ん……拓也の家に着いたのね」


 眠い目をこする桜子と、すぐに起きるアリスさん。二人が車を降りて、俺は咲が手に握りしめていたケラウノスを背中に背負って、咲をお姫様抱っこして車を降りる。


 降り際に、


「二条、ほのかによろしく。じゃあ」


 未だ寝ているほのかを横目に二条に別れの挨拶をした。


 二条は軽く頷いて、執事に目配せする。執事がドアを閉めた後運転席に乗り込んで、車は発進する。


 ……さて、帰って来たぞ。


「じゃあ、また明日…………」


「ああ、おやすみ」


 少し寝ぼけたままの桜子が自分の家に入って行くのを見送って、俺達は玄関に向かう。


 がちゃり。


 玄関のドアを開ける。すると大好きな匂いが漂ってきた。


「お、カレーだ」


 てことは兄貴はもう帰って来てるのか。


「兄貴、ただいま!アリスさんと咲も一緒!」


「おう拓也!遅かったな!今ちょうど出来上がったとこだから、早く手を洗ってこい!」


「分かった!」


 廊下越しに兄貴と会話をする。


 兄貴の声を聞いたら本当に家に帰って来た気がする。


 いやぁ、今日は疲れたな。でも、なんか上手い事いったし、よかったよかった。


 じゃあ、まずは咲をベットに連れてって、兄貴のカレーを食べて風呂入って寝るか。一応一回起こしてご飯食べるか聞かなきゃ。咲も育ち盛りだし、飯抜くのはあんま良くないしな。


 俺はそう思って咲を起こして聞いてみたら、カレーなら食べるって事だったんでアリスさんと三人で洗面所で手を洗ってリビングに向かう。


 途中でケラウノスを部屋に置いてこようと二人と別れて自分の部屋に向かう。


 俺は独り言をしながら、自分の部屋のドアを開ける。




「いやぁ、兄貴のカレー、久しぶりだな。楽しみ。…………まぁ一週間前にも食べたけど。考えていたら滅茶苦茶腹減ってきた…………あ」


 そこには一度会った事のある猫耳の獣人がいた。


「おい、新入り。五十嵐を始末したにゃ?ちょっと時間がかかりすぎだけど、まぁ及第点かにゃ。…………じゃあ、次に殺す眷属の情報を伝えるにゃ」


 俺が部屋に入った途端、当然の様に話を始めるコルク。


 なんで家に居るんだとか、もう次の命令かよとか、いろいろ言いたい事はあるけど、




「あの、とりあえず兄貴のカレーを食べてから話にしません?」


 俺は考える事をやめて、食欲を満たす事にした。





 


 

一章はこれで終わりです。一話挟んで二章に入ります。

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