*31 夏の計画
さて、それからどうなったのかと言うと、相変わらず僕と佐伯は付き合ってはいない。
……僕も佐伯も言い出せないのだと思う。
僕らももう23歳だ。
友人の中にはもう結婚をして家庭を持っている人もいる。
反対に婚約まで持ち込んだのに、別れてしまった人もいる。
簡単に付き合うと言える年齢ではなくなってしまったようだ。
かと言って、以前の殺伐と(?)した雰囲気でもなくて。
まぁ、以前よりは少し仲が良いかな程度の付き合いをしている。
しばらくはこんな状態でいるのが良いのかもしれない。
将来的にははっきりさせたいけど。
夏休みまであと一ヶ月ほどという時期、研究室内でとある提案が持ち上がった。
ゼミ旅行の計画を立てようと言うのだ。
毎年、蓮見研究室では夏・冬休みにゼミ旅行という名の小旅行を行う。
ゼミ旅行とはいうものの、ゼミが行われたことはなく、単なる親睦旅行だ。
夏休みのゼミ旅行は4年生から大学院生までが参加。
(夏休み時点ではまだ3年生は研究室に配属されていない為。冬休みは参加する3年生もいる。)
他に研究室の主である蓮見先生に、助手の保田さん。
(講座の長である次原教授は毎年年齢を理由に不参加。)
大体、十数人程度が参加となる。
「……っつーわけで、場所はA市郊外、蓮見先生の御親戚のペンション。時期は8月第1週目。参加者はこの紙に名前書いといてくれ。会費とか詳しい事は、決まり次第連絡すっから」
そう言って、ホワイトボードに『蓮見研ゼミ旅行参加希望者』と殴り書きされたルーズリーフを貼付けたのは今回の幹事であるM2(修士課程2年目)の樋田さん。
蓮見研メンバー随一のお祭り男が自ら立候補したようだ。
「しつもーん!」
「どした? 糸屋?」
「俺は連れてって貰えないんですかぁ?」
彼、糸屋幸一君は3年生。
研究室は本来なら3年生の後半からの所属なのだが、四月に気の早い見学を終えてからちょくちょく顔を出している。
既に研究室の一員のようなものだ。
「う~~ん」
「ね、佐伯さん。俺も行きたいなぁ」
糸屋君がすぐ側にいる佐伯に話を振る。
「蓮見先生に聞いてみたら? 多分、ダメとは言わないと思うけど」
「まぁ、会費払ってくれさえすればいいよな」
「だよね」
他の学生も特に反対の人間はいないようだ。
ゼミ旅行の責任者である蓮見先生はというと、
「あれ、糸屋君って3年生だったっけ? まぁ、みんながいいならいいんじゃない? 一人増えたって大差ないし」
なんともあっさりと許可が降りた。
いいのかな、それで。
いいのだろう、多分。
後日、計画が最終決定され決定事項がホワイトボードに張り出された。
*蓮見研夏期ゼミ旅行
・日時 8月3日~8月6日
・集合時間 第2駐車場 8/3 10時集合
現地解散 8/6 13時予定
・場所 ○△市郊外
ペンション白樺
・会費 ?,000円
当日までに幹事(樋田)まで
参加者(敬称略)
准教授 蓮見 和尚
助手 保田 美也子
3年生 糸屋 幸一
4年生 市田 歩
佐伯 奈津
M1 森田 志帆
長谷 十夜
M2 樋田 恵 (幹事)
D1 千草 直巳
李 沙明
D2 高梨 正臣
D3 恩田 聡史
橘 陽介
以上13名
『遅刻すんなよ! 遅れた奴は置いてくからな!by樋田』




