704話 次に向かう場所
昼下がりのカーヴァインは騒がしかった。
石畳を行き交う人々。
荷車を引く商人。
客引きの声。
遠くから聞こえる鍛冶屋の金属音。
街全体が生き物みたいに脈打っている。
そんな喧騒の中を、俺とシノブは並んで歩いていた。
人混みを避けるように路地へ入り、また大通りへ戻る。
シノブは相変わらず周囲を警戒していたが、その視線にはどこか物珍しさも混じっていた。
忍の里育ちだからか、こういう大都市には慣れていないのかもしれない。
「…………」
ふと、シノブが俺を見た。
いや、正確には俺の顔を覆っている布を。
「なぁ」
「はい?」
「なぜ貴様は人前で顔を隠す?」
唐突な問いだった。
「え?」
思わず間抜けな声が漏れる。
だが、すぐに納得した。
そう言えば、シノブには詳しく説明してなかった。
俺は顔を覆っている布に軽く触れながら答える。
「俺が勇者だってことは、シノブさんも知ってますよね?」
「ん? あぁ」
「実は俺、公では死んだことになってるんです」
「……は?」
シノブの足が止まった。
俺もつられて止まる。
シノブは珍しく目を丸くしていた。
「死んだ?」
「はい。色々あって」
「色々で済ませる内容じゃないだろう……」
「まぁ、その……俺が生きてるって知られると面倒らしくて。
だからルミエラさんに“街中では顔を隠せ”って言われてるんです」
そう説明すると、シノブはしばらく無言になった。
そして。
「……ワタシはてっきり、ただの人見知りかと思っていたぞ」
「違いますよ!?」
「あと、貴様が勇者だと言うことも今初めて知った」
「知らなかったんですか!?」
「聞いたこともない」
真顔だった。
俺は思わず額を押さえる。
そういえば、シノブにはちゃんと自己紹介してなかった気がする。
エルドリックや異世界のことで、それどころじゃなかったし。
シノブは俺をじっと見ながら、小さく呟いた。
「年齢の割には強いと思っていたが……そうか」
「?」
「兄者と同じく、光魔法の使い手だったのか」
「あー……まぁ、そうですね」
勇者特有の適性。
光魔法。
今では別の魔法ばっかり使ってるせいで、自分でも勇者感が薄れてきてるけど。
「まぁ、そう言う理由で公の場では顔を隠してるんです」
俺はそう言いながら再び歩き出す。
すると背後から、シノブがぼそりと呟いた。
「ワタシですら貴様の正体を知らなかったんだ」
「?」
「ただの一般市民が貴様の顔なんぞ覚えている訳がないだろう」
「ひどい!!」
思わず振り返って叫ぶ。
シノブは涼しい顔をしていた。
「事実だ」
「勇者ですよ!? 一応世界救った勇者の一人扱いなんですけど!?」
「称号だけで顔を覚えられるなら誰も苦労せん」
「ぐっ……!」
否定できない。
実際、俺も勇者扱いされたことほとんどないし。
シノブは鼻で笑う。
「勇者の称号も、ここまで来ると毒だな」
「悪口ですよねそれ」
「褒め言葉だ」
「絶対違う!」
そんなやり取りをしているうちに、見慣れた住宅街へ辿り着く。
少し古びた石造りの家々。
洗濯物の匂い。
夕飯の支度をする香り。
帰ってきた。
そう実感する。
そして――。
俺の家が見えた。
「……やっとだ」
小さく呟きながら扉へ近づく。
少しだけ緊張した。
家族にはほとんど話をせず、急に旅へ出たままだったし、かなり心配をかけたと思う。
俺は深呼吸してから扉を開けた。
「ただいま帰りました」
その瞬間。
二階から凄まじい勢いで足音が響いた。
「カイル!?」
次の瞬間、母さんが飛び出してきた。
そして。
「カイル!!」
「うわっ!?」
勢いそのまま抱きつかれる。
ぎゅうぅぅっと。
かなり強い。
「ちょ、母さん苦し――」
「心配したのよ!!」
涙目だった。
俺は思わず言葉に詰まる。
(……あぁ、本当に心配かけたんだな)
「す、すみませんっ」
「怪我してるじゃない! もう! 本当にもう!」
怒ってるのか泣いてるのか分からない。
でも、その顔を見てると胸がじんわり暖かくなった。
帰ってきたんだ。
本当に。
「父さんに早く伝えなきゃね!」
母さんは嬉しそうに笑う。
その笑顔を見て、俺も自然と口元が緩んだ。
「そう言えば、兄さんは?」
俺が尋ねると、母さんは「あぁ」と思い出したように言う。
「今、王城に行ってるわ」
「王城?」
「“調べている件”について動きがあったって、ルミエラさんから連絡が来たみたい」
「――!」
その言葉を聞いた瞬間、俺の心臓が跳ねた。
調べている件。
そんなの、一つしかない。
「ノア……!」
無意識に名前が漏れる。
母さんは不思議そうに首を傾げたが、俺はもうそれどころじゃなかった。
何か進展があったのか?
ノアを助ける方法が――見つかったのか?
そう思った瞬間だった。
胸の奥が、どくりと強く脈打つ。
落ち着いていられなかった。
頭の中で、眠ったままのノアの姿が浮かぶ。
「――っ」
気づけば、俺は反射的にシノブへ振り返っていた。
「シノブさんすみません!」
ほとんど叫ぶような声だった。
「俺、これから王城に行ってきます!
もしあれならシノブさんはここで休んでもらってても――」
だが、最後まで言い切る前に。
シノブは小さく首を横に振った。
「いや」
短い返答。
「ワタシも同行しよう」
「え?」
「貴様の仲間とやらに少し興味がある」
シノブは腕を組みながらそう言った。
その顔はいつも通り無表情に近い。
だが、断るつもりは最初からないようだった。
「……分かりました」
俺は小さく頷く。
正直、一人で向かうより心強かった。
シノブは鼻を鳴らす。
「ワタシは貴様の借金取りだからな」
「人聞き悪いなぁ……」
「事実だ」
そんな軽口を交わしながら、俺は急いで玄関へ向かう。
すると背後から、母さんの声が飛んできた。
「ちょ、ちょっとカイル!」
「はい!?」
「その女の人、誰!?」
「――あ」
完全に説明を忘れていた。
母さんの視線は、俺とシノブを交互に行き来している。
しかも妙に目が輝いていた。
まずい。
絶対変な勘違いしてる気がする。
「い、今は急ぎの用があるので!
後で! 帰ってきてから説明します!!」
俺は半ば叫びながら扉を開ける。
「えっ、ちょっとカイル!?
まさかその子――」
「違うぞ」
背後からシノブの冷静な声が飛んだ。
「貴様が想像しているような関係ではない」
「まぁっ!?」
母さんの驚く声が響く。
「シノブさん!?」
「行くぞ」
「絶対わざとですよね!?」
シノブは無視した。
俺は頭を抱えたくなりながらも、今はそんな場合じゃないと気持ちを切り替える。
ノアのことが最優先だ。
俺は家を飛び出した。
夕暮れが近づく街を全力で駆ける。
石畳を蹴る音。
人混み。
露店の間を縫うように走る。
「お、おい危ないぞ!」
「うわっ!?」
「すみません!」
人を避けながら、俺はひたすら前へ進む。
後ろからシノブも軽々とついてきていた。
しかも息一つ乱していない。
(忍って体力どうなってるんだ……!?)
やがて視界の先に、巨大な白亜の建造物が見えてくる。
ノワラ王城。
王都の中心にそびえる巨大な城。
夕陽を受け、その白い壁が赤く染まっていた。
俺たちはそのまま正門へ駆け寄る。
門番の兵士たちがこちらへ気づいた。
「止まれ! 何者――」
そこまで言いかけた兵士の目が、俺を捉える。
「……カイル様?」
「あ、はい!」
兵士は驚いた顔をしたあと、すぐ真剣な表情になる。
「ライナス殿とルミエラ様なら現在城内におられます」
「本当ですか!?」
「はい。研究棟の方へ向かわれました」
研究棟。
つまり、本当にノア関連だ。
俺の心臓がさらに速く脈打つ。
「ありがとうございます!」
俺は礼を言うと、そのまま城内へ走り出した。
シノブも無言で続く。
長い廊下。
磨かれた床。
赤い絨毯。
すれ違う騎士や使用人たちが、驚いたようにこちらを見る。
だが今は気にしている余裕なんてなかった。
ノアを助ける方法。
その手掛かりが、ようやく見つかったかもしれない。
俺は逸る鼓動を押さえながら、ライナス兄さんとルミエラの元へ急いだ。
研究棟の廊下を、俺はほとんど駆けるような勢いで進んでいた。
石造りの床を踏み鳴らす音が、静かな研究棟の中にやけに大きく響く。
「カイル、少し落ち着け」
後ろからシノブの声が飛ぶ。
だが、落ち着いていられるわけがなかった。
ノアのことで動きがあった。
母さんの話ではそうだった。
だったら、一秒でも早く話を聞きたかった。
色んな感情が、胸の奥でずっと暴れている。
研究棟の奥。
何度か訪れたことのある一室の前で、俺は足を止めた。
扉には見慣れない木製の名札が打ち付けられている。
『眠り姫研究室』
「…………」
俺は数秒、その文字を見つめた。
「……眠り姫って」
思わず思う。
(……毒林檎食ったどっかのお姫様じゃないんだから……)
少しだけ頭痛を覚えながら、俺は勢いよく扉を開けた。
派手な音が部屋に響く。
「ルミエラさん! 兄さん!」
室内には大量の本と羊皮紙が散乱していた。
机の上には解読途中らしい資料が山積みになっており、壁には人体図や魔力経路を書き殴った紙が何枚も貼られている。
部屋の中央には巨大な羊皮紙が吊るされ、その周囲には治癒魔法の陣のような図形や文字がびっしり書き込まれていた。
その異様な光景の中で。
ルミエラとライナスが、同時にこちらを振り向く。
「――カイル君!?」
「お前、帰って来てたのか!?」
二人とも目を見開いていた。
特にルミエラは、持っていた羽ペンを床に落とすほど驚いている。
赤黒い髪を揺らしながら、彼女は呆然と俺を見つめた。
「え、ちょ、なんで!?
まだ戻らない予定じゃなかった!?」
「それより!」
俺は二人の言葉を遮る。
「ノアのことで何か分かったんですか!?」
その瞬間だった。
二人の表情が、一気に曇る。
「……っ」
胸が冷たくなる。
ライナスは目を伏せ、ルミエラは困ったように唇を噛んだ。
その空気だけで分かってしまった。
良い話ではない。
「……カイル君」
ルミエラが静かに言う。
「落ち着いて、よく聞いて」
その声音は、いつもの軽さがなかった。
俺は無言で頷く。
喉が妙に乾いていた。
ルミエラはゆっくりと言葉を続ける。
「アルベリオから連絡が入ったの」
「アルベリオさんから……?」
「うん……ノアちゃんの容態が、急変したって」
その言葉を聞いた瞬間。
心臓が嫌な音を立てた。
「急変……?」
掠れた声しか出なかった。
ルミエラは苦しそうに視線を逸らす。
「急に身体が衰弱し始めたらしい。呼吸も浅くなって、体温も異常に上昇してる。
しかも、普通の治癒魔法がまったく効かない」
「そんな……」
俺の口から、力なく言葉が漏れる。
ルミエラは続けた。
「時間が経つごとに命が薄れていってるって……アルベリオは言ってた」
「なんで……」
思考が止まりそうになる。
なんで。
なんでノアが。
なんで、そんなことに。
拳を握る。
爪が掌に食い込むほど強く。
「俺たちは、その原因を調べていたんだ」
そう言ったのはライナスだった。
ライナスは部屋中央の巨大な羊皮紙へ歩み寄る。
そこには複雑な魔力経路図と、びっしり書き込まれた医学的な記述が並んでいた。
ライナスはその羊皮紙を叩きながら、重々しく告げる。
「……多分、ノアは“魔熱病”だ」
「――ッ」
その単語を聞いた瞬間、部屋の空気が重くなった気がした。
魔熱病。
聞いたことがある。
いや、“聞いたことしかない”。
それほど有名で、それほど恐れられている病気だ。
「魔熱病って……あの……?」
俺の声は震えていた。
ライナスが頷く。
「体内の魔力が暴走し、異常な熱を発生させる病だ」
ライナスは羊皮紙の一部を指差した。
「ただの高熱じゃない。暴走した魔力が身体の内側を焼き続ける。
臓器も、血液も、神経も……全部だ」
背筋が寒くなる。
ライナスは続けた。
「原因は未解明。発症条件も不明。治療法も存在しない」
その言葉が、やけに冷たく聞こえた。
「これまで何万人もの人間が死んできた不治の病だ」
「そんな病気が……なんでノアに……!」
気づけば俺は叫んでいた。
理解できなかった。
納得なんてできるはずがない。
ノアはただ眠っていただけだ。
なのに。
なんで今度は、そんな病気に。
ライナスも苦しそうに顔を歪める。
「ロルロ王国最高峰の治癒士たちでも治せない難病だ。
まさかノアが罹ってしまうなんてな……」
部屋の空気が重い。
誰も次の言葉を出せなかった。
その沈黙を破ったのは、ルミエラだった。
「……でも、一つだけ希望がある」
俺は勢いよく顔を上げる。
ルミエラは静かに言った。
「これはアルベリオが言ってたことなんだけど――」
彼女は真っ直ぐ俺を見つめた。
「『治癒の巫女』なら、魔熱病を治せるかもしれないらしい」
「――!」
その瞬間。
俺の脳裏に、エルドリックの日記が蘇る。
女神の権能。
その一部を与えられた巫女。
世界を調整する力。
そして――ノアを救えるかもしれない希望。
「巫女……」
思わず呟く。
そうだ。
俺も、巫女を探そうとしていた。
ノアを目覚めさせるために。
でも今は違う。
目覚めさせるだけじゃない。
ノアの命そのものが、今、失われようとしている。
「治癒の巫女……」
俺はその言葉を、噛み締めるように呟いた。
胸の奥で、止まりかけていた何かが再び動き出す。
希望。
それはあまりにも小さく、曖昧で、不確かなものだった。
だが――ゼロじゃない。
ノアを救える可能性が、まだ残っている。
それだけで十分だった。
「その巫女は……どこにいるんですか?」
俺はすぐにルミエラへ問いかけた。
だが。
ルミエラは申し訳なさそうに眉を下げる。
「それが……分からないんだ」
「……え?」
「治癒の巫女が存在するって話自体は、かなり昔から伝承として残ってる。
病も呪いも浄化する、“女神の慈愛を宿した存在”ってね」
ルミエラは腕を組みながら続ける。
「でも、実在を確認した人間はほとんどいない。
そもそも巫女っていう存在自体、世界各地に散らばってる上に、自分の正体を隠して生きてる場合が多いらしいんだよ」
「隠して……?」
「女神の力を持つ存在なんて、権力者からすれば喉から手が出るほど欲しい存在だからねぇ。
利用されるのを嫌って姿を隠す巫女も多いんだって」
そこでルミエラは肩を竦めた。
「つまり――居場所は不明」
その一言が、重く胸に落ちる。
せっかく見えた希望が、また霧の向こうへ消えていく感覚。
「そんな……」
俺は唇を噛む。
ライナスが静かに言った。
「だが、可能性はある。ゼロじゃない」
「……!」
「アルベリオも、治癒の巫女なら魔熱病を治せるかもしれないと言っていた。
アイツが無責任な希望だけを口にするとは思えない」
その言葉に、俺は俯いたまま拳を握った。
ノアの笑顔が脳裏を過る。
俺を引っ張ってくれたあの日々。
初めてカーヴァインへ来た頃。
右も左も分からなかった俺に、呆れながらも手を差し伸べてくれた少女。
笑っていた顔を、思い出す。
――助けたい。
絶対に。
その瞬間、不思議なくらい迷いが消えた。
俺はゆっくり顔を上げる。
「……探します」
自分でも驚くほど、声ははっきりしていた。
ルミエラが目を瞬かせる。
「カイル君……」
「治癒の巫女を探します」
俺は改めて言い切った。
「どこにいるか分からなくても、手掛かりが少なくても関係ない」
拳を強く握る。
「ノアを助けられる可能性があるなら、俺は絶対に探し出します」
部屋の空気が静まる。
ライナスは真っ直ぐ俺を見つめていた。
ルミエラは少しだけ目を細める。
その後ろで、今まで黙っていたシノブが小さく鼻を鳴らした。
「……本当に諦めが悪い男だな、貴様は」
「褒め言葉として受け取っておきます」
俺が返すと、シノブは僅かに口元を吊り上げる。
「世界中から姿を隠している巫女を探すなど、正気の沙汰ではない」
「それでもやります」
即答だった。
シノブは数秒俺を見つめ――やがて、小さく笑った。
「そういう馬鹿なところは嫌いじゃない」
「それ褒めてます?」
「半分くらいはな」
そう言って、シノブは壁に寄りかかった。
その時だった。
ルミエラが何かを思い出したように、小さく声を漏らす。
「……あ、でも」
「?」
「一つだけ、“治癒の巫女”について気になる情報がある」
俺は反射的に身を乗り出した。
「本当ですか!?」
「う、うん。かなり曖昧な噂レベルなんだけどね」
ルミエラはそう前置きすると、こめかみを押さえながら記憶を辿るように目を細めた。
「ここから東南東に真っ直ぐ進んだ場所に、“ある領域”が存在するらしいんだけど」
「領域……?」
「うん。正式な名前すらよく分かってない場所なんだけど……。
そこは普通の土地じゃないって言われてる」
ルミエラの声色が、少しだけ真剣になる。
「その領域内には、魔獣や魔物はおろか――。
“邪な心を持った者”は入ることすらできないらしい」
「……!」
俺は思わず息を呑んだ。
邪な心を持つ者を拒絶する領域。
まるで、何か高位の存在が守護している聖域のような話だ。
ライナスが腕を組みながら眉を顰める。
「随分と胡散臭い話だがなァ」
「あたしも最初はそう思ったよ」
ルミエラは肩を竦めた。
「でも、その場所については昔から各地に似たような伝承が残ってる。
“清浄の地”とか、“女神の庭園”とか、呼び名はバラバラだけどね」
そこでルミエラは、一度言葉を切る。
そして静かに続けた。
「さらに――その領域に入れた者は、どんな病や傷も瞬く間に癒えるって噂まである」
「――!」
胸が大きく脈打った。
どんな病も。
どんな傷も。
それはつまり――。
「そこに……『治癒の巫女』がいるかもしれないってことですか?」
俺が問うと、ルミエラはゆっくり頷いた。
「可能性はある」
その言葉に、俺の鼓動が跳ねた。
「その領域がある場所は!?」
「砂漠地帯にある宗教国家――セラフィア聖国がある領土だ」
ルミエラはそう言って、一枚の地図を広げた。
その地図の東側。
広大な砂漠地帯の先に、小さく記された国名。
俺はその場所を見つめながら、静かに息を吐く。
「ここに……『治癒の巫女』がいるかもしれない」
次に向かう場所が――決まった。




