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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第7章 影の五騎士編

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204話 ガルス――重い

 洞窟を進むにつれ、声はさらに鮮明になってきた。


「オラァ!オラァッ!」


 洞窟内に響き渡る怒号。


 その荒々しくも力強い声に、俺は確信する。

 奥で戦っているのは、間違いなくガルスだ。


(無事なのか……?)


 不安を抱えつつも、俺は迷うことなく洞窟内を駆け抜ける。


 すると、壁の陰から光が漏れ始め、視界の先に小さな光の筋が見えた。


(あれは……!)


 その光を目指し、一気に駆け抜ける。


 足音を響かせながら全速力で進むと、ついに視界が開け、俺の目に飛び込んできたのは異様な光景だった。


 洞窟の奥に広がる巨大な空間。その中心で動いていたのは――


「……何だ、あれ……!?」


 岩――いや、動く巨大な光る鉱石。


 それは脈打つように不気味な光を放ちながら、無数の触手のようなものを四方八方へとうねらせていた。


 そして、その触手を次々と切り裂いている男がいる。


 ガルスだ。


 彼は大剣を振るい、迫りくる触手を片端から薙ぎ払っていた。


「ガルスさん!?」


 思わず叫ぶと、ガルスの視線が一瞬だけ俺の方を向いた。


「ガキィ! なんでここにいる!」


 怒鳴るガルス。

 だがその一瞬の隙を突くように、光る鉱石の触手が猛然と襲いかかる――!


「危ない!!」


 俺は杖を握りしめ、即座に魔力を込める。


「ファイア・ボール!」


 叫ぶと同時に、杖の先から赤々と燃え盛る火球が放たれた。


 火の球は一直線に飛び、ガルスを襲おうとしていた触手に直撃する。


「ギャアアァァ!」


 触手は激しくのたうち回りながら焼き落ち、地面へと崩れ落ちた。


 しかし、そこからが異様だった。


 地に落ちた触手の断片が、まるで意思を持っているかのようにウネウネと蠢いているのだ。


(な、なんだこいつ……!)


 その異常な光景に息を呑む俺の耳に、ガルスの怒声が飛び込んできた。


「ガキてめぇ!邪魔すんなァ!!」


 ガルスが怒鳴る。


「邪魔って……昨日から行方不明だって聞いて、心配で来たんですよ!?」


 俺も思わず言い返した。

 するとガルスは一瞬呆けたような顔をした後――


「はァ!?心配だァ?そんなことしてる暇あったら、もっと強くなれや雑魚がァ!!」


 と、ケタケタと笑いながら叫んだ。


(くそっ……やっぱりこの人、性格最悪だな!)


 俺は少し憤りを覚えたが、今はガルスと言い合っている場合ではない。


 目の前には、脈打つように光り続ける巨大な鉱石。

 そして、まるで意思を持つかのように蠢く無数の触手。


 この異常な存在――おそらくは魔力が宿り、“生命”を持つようになった鉱石。

 つまり、これは魔物だ。


「ガルスさん、こいつ……一体なんなんですか!?」


 俺が問うと、ガルスは舌打ちをしながら答える。


「俺が知るわけねェだろォ!!魔物の討伐依頼で来たら、こいつがいたんだよっ!」


「それで……一晩中戦ってたんですか!?」


 俺は驚きを隠せなかった。


 昨日の昼から今日の朝まで戦い続けているガルスの体力もそうだが、それ以上に驚いたのは、この魔物の強さだった。


(ガルスをここまで苦戦させるなんて……!)


 そして、洞窟に入った時から感じていた妙な胸騒ぎ――


 その正体は、間違いなくこいつだった。


「俺も手伝います!」


 そう叫び、俺は杖を構えようとした。


 だが、その瞬間―― 何かが俺の杖を弾き飛ばした。


「えっ……?」


 驚いて弾かれた方向を見ると、小さな石片が地面を転がっている。


(なんで、こんなものが……)


 そう思った次の瞬間、俺は鋭い殺気に背筋を凍らせた。


「邪魔すんじゃねェ!!」


 獣のような怒声が響く。


 見ると、ガルスが鬼のような形相でこちらを睨んでいた。


「俺様一人でやらせろッ!!」


 ガルスの威圧に俺は一瞬たじろいだが、すぐに杖を拾い直し、言い返す。


「一人でやるって……! 一晩かかっても倒せない相手を、今更倒せるって言うんですか!?」


 俺の言葉にガルスは一瞬だけ表情を変えた。


 それはまるで、何かを思い出したような――

 だが次の瞬間、彼は触手をなぎ倒しながら俺へと接近してきた。


 そして――


「……ッ!!」


 俺の胸倉を掴み、そのままの勢いで宙へ持ち上げる。


「ぐっ……!?」


 呼吸が詰まり、息ができない。


「うるせェ……!」


 ガルスの目がギラリと光る。


「それ以上口を開くな。お前ェから先に殺すぞ?」


 殺気に満ちた声が耳元に突き刺さる。

 俺は本能的な恐怖を覚え、咄嗟に腕を振り払うようにして距離を取ろうとした。


「はぁ……はぁ……っ!」


 息を整えながら、それでも俺は引かなかった。


「どうして……そこまで一人で戦うことに固執するん――」


 ――俺が問いかけた瞬間


 バチンッ!!


 頬に鋭い衝撃が走った。


「ぐっ……!」


 殴られた。

 だが、昨日ほどの威力はない。


(……力が落ちている?)


 ガルスも長時間の戦闘で疲れが溜まっているのか、その拳に以前ほどの勢いはなかった。

 それでも、鋭い眼光で俺を睨み据えながら、低く呟く。


「口を開くなと言ったはずだぞ?」


 脅しとも取れるその言葉に、俺は口を噤むことなく――


「ど――」


 バチンッ!!


 また殴られた。


 しかし、やはりその一撃には決定的な力がない。


(やっぱり……)


 ガルスの拳が震えている。


 彼の手は、俺の胸倉を掴んでいるつもりでも、じわじわと力が抜けて下がってきていた。


「……ガルスさん、もう限界なんじゃないですか?」


 俺がそう言うと、ガルスはピクリと眉を動かした。


「クソガ――ッ!!」


 怒声とともにガルスが拳を振り上げた、その瞬間――


 ドンッ!!


 洞窟内に響き渡る轟音とともに、俺たちの頭上へ巨大な影が落ちてきた。

 それは、これまでのものとは比べ物にならないほど巨大な、触手の集合体だった。まるで獲物を逃がすまいとする蛇のように、うねりながら俺たちを押し潰そうと迫ってくる。


「危ない!!」


 俺は反射的にガルスを突き飛ばし、自らは咄嗟に土元素魔法を発動。地面から盛り上がるように分厚い土の壁を作り出し、触手の直撃を防いだ。


 ズシンッ!!


 凄まじい衝撃が走る。壁は大きくひび割れ、今にも崩れそうだったが、その一瞬の猶予で俺は次の行動に移る。


「行きますよ、ガルスさん!!」


 俺は風元素魔法を発動し、ガルスの体を強引に吹き飛ばした。

 空気の流れを操り、俺たちが来た道へと向かって一気に押し出す。ガルスの巨体は広場の出口まで弾き飛ばされ、俺もそれを追うように全力で走り出した。


(お、お重い~~~!!!!)


 俺はガルスの服を掴みながら、洞窟の入り口を目指して駆け抜ける。

 背後では数々の触手がうねりながら迫ってきていた。ズルズルと地面を引きずる音と、壁を引っ掻くような甲高い音が響く。追い詰められる焦燥感に、心臓が早鐘を打った。


(くそっ、あと少し――!!)


 俺は歯を食いしばりながら、足にめいっぱい力を込める。洞窟の出口まであと十数メートル。


 突如、背後で振動が大きくなったかと思うと、空気が震えるような轟音が響いた。魔物が本気で動き出したのだ。


「っ……!!」


 迷っている暇はない。俺はガルスの服を思い切り引っ張り、最後の力を振り絞って駆け抜ける。


 そして――


 バッ!!


 洞窟の出口から飛び出すと、眩い陽の光が目に飛び込んできた。俺は思わず転倒し、ガルスの体も地面に転がる。


「はぁ……!はぁ……!」


 肩で息をしながら、俺は地面に座り込んだ。


「ちょっと……!自分で走ってくださいよ!はぁ……!」


 微動だにしないガルスを見つめながら、俺はそう叫んだ。しかし、ガルスはただ地面に寝転がったまま、空をじっと見つめていた。


「……ガルスさん?」


 俺が呼びかけると、彼はゆっくりと目を閉じ、大きく息を吐いた。


「チッ……ガキのくせに……余計なことしやがって……」


 ぼそりと呟いたその言葉は、怒りではなく、どこか悔しさを滲ませていた。

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