表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第7章 影の五騎士編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/699

203話 異変

「アッハッハッハ!」


 夜の酒場に、ルミエラの笑い声が高らかに響き渡る。


「ちょっと笑いすぎですよ!」


 俺が怒鳴るように言うと、ルミエラは涙を拭きながら一応謝るものの、笑いを止める気配は一切ない。


「あはは!ごめんごめん!でもだって……お、おもしろすぎてッ!あはははは!」


 息も絶え絶えに笑い転げるルミエラを前に、俺は顔を真っ赤にして拳を握りしめる。


 ことの発端は、ガルスとの戦いだった。


 一撃でぶっ飛ばされた俺は、その場で気絶。意識が戻った時にはすっかり夜になっていて、頭上には暗く広がる夜空があった。


 慌てて学園に戻ると、カインはすでに子供たちに別れを告げて、校庭で俺の帰りを待っていた。ルミエラも同様に戻ってきており、俺の姿を見た瞬間――


「ぷっ……ふふっ……!」


 口元を押さえたかと思ったら、次の瞬間には爆笑。


「え、なんですか……?」


 そう言いながら、ふと側にある水たまりを覗き込んでみると、そこには見るも無残な俺の顔。


 ガルスにぶん殴られたせいで、頬がパンパンに腫れ上がっていた。


 まるで大福でも詰め込んだかのような異様な膨らみだ。


「ぷはっ……!いや、いやだって……あははははっ!アンタ、その顔で真剣な顔するから余計に……!あはははは!」


 ルミエラは地面を転がり、腹を抱えて笑っていた。


 呆れたカインが「何があったんだ?」と尋ね、俺は渋々、ガルスにコテンパンにされた話をした。


 結果――


「やばい、笑い死ぬ……っ!誰か止めてぇ……っ!」


 ルミエラは転げ回り、ついには地面に突っ伏して肩を震わせる始末だった。


 カインは呆れたようにため息をつきながらも、「まぁ……無事でよかった」と言ってくれたのが、せめてもの救いだった。


 その後、カインの歓迎会兼「可哀想なカイル君を慰めるため」ということでルミエラの奢りで酒場へ繰り出すことに。


 だが――


「くっ……ふふっ……!あはははっ!」


 酒場に来てからしばらく経つのにも関わらず、ルミエラの笑いは止まらない。


「もういい加減笑うのやめてくださいよ!」


 俺が叫ぶと、ルミエラはやっと笑いをこらえようとするが、すぐにまた吹き出す。


 恥ずかしさと怒りでどうしようもなくなった俺は、ヤケになって目の前に並べられた料理をかき込んだ。


「ちょ、ちょっと!アンタ、食べるの早すぎじゃない?あたしの分もあんだよ!?」


「うるさいです!」


 ――こうして、俺の屈辱的な夜は、ルミエラの笑い声と共に更けていったのだった。



 ―――。



 翌日、俺は再びガルスを探しに街を回った。


 まずは昨夜訪れた酒場をいくつか巡ったが、どこにもガルスの姿はなかった。店の主人や常連客に聞いても、昨夜以降彼の姿は見ていないという。


「ん?ガルス?ああ、昨日はここにいたが……あいつなら大抵どこかの酒場にいるもんだがなぁ」


 酒場の主人が首をひねる。


 嫌な予感が胸をよぎった俺は、すぐさま冒険者ギルドへ向かった。受付の女性にガルスが来ていないか尋ねると、彼女は困惑した表情で答えた。


「ガルスさんですか?いえ、まだいらっしゃってませんね……それに、昨日受けた依頼の達成報告も届いていませんし」


「え?」


 思わず聞き返す。


「ガルスさんが依頼を終えてすぐに報告しないことって……よくあることなんですか?」


「いえ、それが……」


 受付嬢は少し考え込んでから言った。


「確かに、ガルスさんは報告を後回しにすることはありますけど、基本的にはすぐに終わらせるタイプです。特に昨日の依頼は、それほど時間がかかるようなものではないはず……」


 俺は嫌な予感がさらに膨らむのを感じた。


(ガルスほどの実力者が、単純な依頼を終えていない……?)


 もしかして、何かあったのか?


 考えを巡らせた末、俺は決意した。


「俺、ちょっと心当たりがあるので、そこに行ってみます」


「えっ?一人で行くんですか?」


 受付嬢が驚いたように声を上げる。


「大丈夫です。もし何かあっても、すぐに戻りますから」


 そう言い残し、俺はギルドを後にした。

 


 ―――。



 昨日訪れた洞窟の入り口に立つと、すぐに異様な気配を感じ取った。


(なんだ……?何かが違う……。)


 肌にまとわりつくような、ひやりとした空気。昨日とは明らかに何かが変わっている。


 胸騒ぎを押さえながら、俺は慎重に洞窟内へと足を踏み入れた。


 内部は真っ暗だった。

 昨日は洞窟の壁に点在する光る鉱石が、淡い光で足元を照らしていたはずだ。それが、今はどこにも見当たらない。まるで何かが意図的にすべて奪い去ったかのように。


 俺は不審に思いながら、掌に小さな火の球を生み出し、ぼんやりとした光で足元を照らした。


(妙だ……。)


 進むごとに、背筋に冷たいものが走る。洞窟の奥へと進むにつれ、じっとりとした汗が額を伝うのを感じた。


 そして、しばらく進んだときだった。


 鼻を突く強烈な臭いが漂ってきた。


(……腐臭?)


 酸味と鉄の匂いが混じったような、嫌な臭いが鼻腔に広がる。


 奥へ進むにつれ、その匂いはどんどん強くなっていった。まるで洞窟全体が死の気配に満ちているかのように。


 やがて、道の端に横たわる巨大な影が、火の光に照らし出された。


「これは……!」


 そこに転がっていたのは、大きな魔獣の死骸だった。


 一瞬、警戒して身構えたが、すぐにその姿に見覚えがあることに気づく。


(そうだ……!これは昨日、ガルスが仕留めた魔獣……!)


 だが、何かがおかしい。


 昨日の時点で、魔獣の死骸は洞窟の中央付近に横たわっていたはず。だが、今はそれが道の端に転がっている。


 まるで、誰かが……あるいは何かが、動かしたかのように。


(それに……)


 俺はふと洞窟の壁に目をやる。


 やはり、光る鉱石がすべて消えている。


 昨日、洞窟内は淡い光に包まれていたはずだった。ランタンも松明も不要なほどに。それが今は、闇に包まれ、俺の小さな火の球だけが頼りだった。


 異変を感じた瞬間――


「……っ!」


 洞窟の奥から、小さな声が聞こえた。


 誰かがうめいているような、かすかな声。


 それと同時に、ズシン……!と、重いもの同士がぶつかり合うような鈍い音が響いた。


 俺は息を呑み、耳を澄ます。


 ――何かが起こっている。


(ガルスか……!?)


 確信は持てないが、何かよからぬ事態が進行していることだけは間違いなかった。


 俺は火の球を強め、慎重に足を踏み出した。


「一体、この洞窟で何が起こっているんだ……?」


  奥へ進むたびに、洞窟内に響く轟音とうめき声が、次第に大きくなっていく。


 最初はただの風の音か、岩が崩れる音かと思った。だが、耳を澄ませば澄ますほど、それは明らかに"何か"の声であると分かった。


(……誰かがいる?)


 だが、すぐに違和感を覚える。


 最初はひとつだけだと思っていたその声が、進むにつれて複数存在していることに気づいたのだ。


 ひとつは、力いっぱい力むような男の声。低く、野太く、まるで巨大な岩を押し返すような、必死な響きを帯びている。


(……ガルスか?)


 そう思ったのも束の間、それ以外にも異質な声が混ざっていることに気づく。


 低く唸るようなもの。ギャッ、ギャアァと金属を引き裂くようなもの。かと思えば、今度は人間の悲鳴にも聞こえる高い叫びが響く。


(……なんだ、これ……?)


 獣のようであり、怯えた人のようでもある。


 その声の主が何なのか、全く想像がつかない。だが、確かなのは――


(何かが戦っている……!)


 そう思った瞬間、洞窟の奥から強烈な衝撃音が鳴り響いた。

 まるで巨岩同士がぶつかり合うような、圧倒的な重量を感じさせる音。


 洞窟の天井から砂がパラパラと降り注ぐ。


 俺は無意識のうちに足を止め、息を呑んだ。


 ――その先で、何かが起こっている。


 そして、その"何か"は、尋常ではない。


 胸の鼓動が速くなるのを感じながら、俺は震える手で杖を握り直し、さらに奥へと進んだ。

面白かったらブックマーク、下の評価よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ