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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第7章 影の五騎士編

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194話 ご褒美

 俺が子供たちに魔法を教え始めてから、数日が経った。


 最初は「魔法なんて覚えなくても……」とか「剣があれば十分だ」と不満げだった子供たちも、今ではすっかり魔法に夢中になっている。


「見てくれよ勇者様! 俺、水の魔法で剣を冷やせるようになったんだ!」

「私は風の魔法でジャンプ力を上げて、空中から攻撃できるようになった!」

「火の魔法を剣にまとわせるの、すごく難しいけど……なんとか形になってきた!」


 彼らは、教えた魔法の基礎をそのまま使うのではなく、自分なりの戦闘スタイルに組み込んでいる。


(……もしかして、この国の人たちって、魔法の才能がめちゃくちゃあるんじゃないか?)


 そう考えると、俺は思わず拳を握る。


 アルガド王国に魔法による革命を起こすとか冗談で思っていたけど、それが現実に近づいている気がする。


 そして、さらに数日が経ち――


 ついに全員が四大元素の初級魔法を扱えるようになった。


 しかも、たった一週間で。


 俺の予想では、最低でも一ヶ月はかかると思っていた。


 それが、一週間。


 これが何を意味するのか、考えるまでもなかった。


「……ルミエラさん、やばいですよ。」


 俺が思わず呟くと、隣で腕を組んでいたルミエラが笑う。


「だろ? あたしも、ここまでとは思わなかったよ。」


 改めてルミエラが魔力感知を使うと、子供たちの魔力量が出会った頃から以上に伸びているらしい。


 むしろ、ノワラの魔法学園に通う生徒たちと比べても、遜色ないどころか、一部はそれ以上の潜在魔力を持っている――というのがルミエラの見解だ。


 広場の端で子供たちの訓練をじっと見つめていたカインも、その事実を悟ったのか、難しい顔をしている。


 俺はそっとカインの隣に立ち、話しかけた。


「カインさん……ここまで伸びが早いと、俺も驚きました。」


「……俺もだ。」


 カインは腕を組み、子供たちを見つめたまま呟く。


「俺は、ずっと信じていたんだ。剣こそが、この国での生きる道だと。剣があれば、強くなれる。剣があれば、生きていける。そう信じて、ここで剣を教えてきた。」


 彼は、少しだけ目を伏せる。


「だが、今の子供たちを見てると……魔法も、決して無意味なものではないと分かる。むしろ、こいつらの戦い方に魔法を組み込めば、今よりもっと強くなれるのかもしれないな……。」


「今まで魔法を毛嫌いしてきた……俺の人生を悔やむよ。」


 カインが、ようやく魔法の可能性を受け入れ始めた。


 これは、大きな一歩だ。


「……カインさん。」


 俺はゆっくりと口を開いた。


「俺たちは、剣と魔法の技術を融合させた学園を作ります。この学園を、国に認めさせます。そして、子供たちがもっと強く、もっと自由に生きていける未来を作りましょう。」


 俺の言葉に、カインはしばらく黙っていた。


 だが――


「……なら、お前に聞く。」


 カインは真っ直ぐ俺を見た。


「本当に、お前はこの学園を正式なものにできるのか?」


 その問いに、俺は迷わず答えた。


「できます。」


「どうやって?」


「剣と魔法を融合させた、新たな戦闘スタイルの確立。そして、その実績を国に証明すること。」


 カインは腕を組み、俺の言葉を聞いていた。


「そのためには、もっと強い戦闘力を持つ剣士が必要です。」


 俺は静かに続ける。


「つまり……カインさん。あなたにも、剣と魔法の融合を試してほしいんです。」


 カインの目が、わずかに見開かれる。


「……俺に?」


「はい。あなたは、この学園の代表です。あなた自身が剣と魔法を使いこなし、その有用性を証明できれば、国も学園を無視できなくなる。」


 カインはしばらく俺を見つめた後――


 ふっと、笑った。


「――そうか……面白いな。」


 そして、彼は俺に向かって手を差し出した。


「やってみようか。俺も、お前の“革命”ってやつに乗ることにする。」


 俺も笑って、その手を握った。


 こうして、俺たちの新たな挑戦が始まった。



 その日、俺たちは授業を早めに切り上げ、剣士学園に通うすべての子供たち――12歳以下の幼い子たちも含めて、食堂に集まってもらった。


 かつて、カインが食事を提供できていた頃、この場所は毎日賑やかに笑い声が響いていたという。

 しかし今では、長い間まともな食事が取れず、子供たちの目はどこか寂しげだった。


 俺は、そんな彼らに少しでも喜びを取り戻してほしいと思い、この場を用意した。


「カイン!なんでここにみんなを集めたの?」


 ひとりの小さな少女が、カインの袖を引っ張りながら首をかしげる。


 カインは、その少女の頭を優しく撫でながら言った。


「今から勇者さんが話してくれるから、ちゃんと聞いておくんだぞ。」


「うん!」


 少女は元気よく頷き、元の席へと戻っていく。


 俺は、そんな子供たちの前に立ち、大きく息を吸い込んだ。


「――みんな、今日まで本当によく頑張りました!」


 俺の言葉に、食堂の子供たちが一斉にこちらを向く。


「剣の訓練をしている人も、魔法の訓練をしている人も、全員が本当に努力してきた。その努力を、俺はずっと見てきた。」


「だから――今日は、そんな君たちにご褒美があります!」


 その一言に、特に幼い子供たちが目を輝かせる。


「ご褒美!?」

「なになに!?」

「お菓子!?お肉!?」

「新しい剣!?」


 次々に飛び交う期待の声に、俺は微笑みながら手に持っていた杖を突き出した。


「机を見て!」


 そう言いながら、俺は静かに魔法を発動させた。


 ――次の瞬間。


 何もなかった机の上に、次々とおいしそうな料理が出現していく。


 大皿に盛られた焼き立てのパン、湯気の立つシチュー、ジューシーなローストチキン、甘い香りの焼き菓子――


 ごちそうという言葉がぴったりな光景だった。


 目の前で次々と料理が現れる様子を見た子供たちは、驚愕と興奮で固まり――


「う、うわああああああ!!!」

「すごい!! すごい!!」

「ほんとにご褒美だぁ!!!」


 ――歓声が食堂中に響き渡った。


 俺は微笑みながら、手を上げる。


「まだだよ。みんな、まずは『いただきます』を言おう。」


 しかし、そんな俺の言葉も空しく――


 子供たちは一斉に料理にかぶりついた。


「うわーー!」

「うめえぇ!!」

「これ本物!?夢じゃないよね!?」


 理性を失いかけた彼らは、全員が目の前の料理をむさぼるように食べ始めた。


「あっ! まだいただきますを――」


 俺が止めようとするが、もはや無意味だった。


 カインはそんな様子を見ながら、苦笑していた。


「……こいつらにとっては、これが『いただきます』なんだろうさ。」


 俺はその言葉に、思わず笑ってしまった。

 それくらい、彼らが食べることに夢中になるのは、それだけ空腹だった証拠だ。


 無理もない。

 この子たちは、生きるために剣を学び、それでも満足に食べることもできない状況だった。


 だからこそ、目の前の料理に群がる彼らを誰が責められるだろうか?


 俺の魔法で生み出した料理――いや、実際は風元素魔法を利用して、隠していた本物の料理だが。


 これは単なる”食事”ではなく、彼らへの感謝と、未来への希望の象徴だった。


 ルミエラはそんな子供たちの姿を見つめながら、ため息を吐く。


「本当にこれでよかったのかねぇ……。」


「なにがですか?」


 俺が疑問を口にすると、ルミエラは眉を下げて続けた。


「まだ正式な学園として認められてないのに、子どもたちにあんなに贅沢させてさぁ……もし上手くいかなかったらあいつらが可哀想だよ。」


 ルミエラの心配はもっともだった。


 彼女の目は、笑顔で食事を頬張る子供たちを映しながらも、どこか不安げだった。


「もしこの計画が失敗したら、期待を持たせただけになっちまう。」


 ルミエラは唇を噛みしめ、悔しそうに続ける。


「この子たちにとって、希望を与えられた後にそれを奪われるのが、どれだけ残酷なことか……。」


 彼女の言葉に、俺は少し目を伏せた。


 確かに、俺のしていることは無責任かもしれない。


 何の保証もないまま、彼らに夢を見せようとしているのだから。


 だが――


「大丈夫ですよ。」


 俺は目の前の子供たちの姿を見つめながら、静かに答えた。


「俺は、必ずこの学園を正式なものにします。」


 ルミエラが驚いたように俺を見た。


 俺は、ぎゅっと拳を握る。


「この子たちの笑顔を、無駄にするつもりはありません。」


 俺がそう断言すると、ルミエラはしばらく俺を見つめ、そして肩をすくめて笑った。


「はぁ……まったく、カイル君はほんっとに世話が焼けるね。」


「ありがとうございます。」


 俺が感謝を伝えると、ルミエラは「誰も褒めてないんだけど」と呟きながら、苦笑した。


 俺は、目の前の子供たちが幸せそうに食事をしている光景を眺めながら、強く思った。


(この子たちには、もっと可能性がある。剣しか知らない世界じゃなく、魔法も使える世界を。この学園が、彼らにとって――新たな未来を開く場所になるように。)


 俺は、自分の決意を改めて固めた。


 そして、その第一歩を――今日、俺たちは踏み出したのだ。



 ―――。



 翌日、まだ日も昇り始めたばかりの早朝――。


 冷たい朝の空気が肌を刺す中、俺とカインは向かい合っていた。


「……カインさん、本当にやるんですか?」


 俺の問いに、カインは迷いなく頷く。


「あぁ。俺は”勉強”して物を学ぶ性格(タチ)じゃない。」


 カインはそう言うと、ゆっくりと剣を抜いた。


「今まで磨いてきた剣術も、すべて身体で覚えてきた。」


 月光を反射し、カインの剣が鋭く煌めく。


「俺が改めて魔法を学ぶには、こうしてお前と戦い、肌で魔法を感じる必要がある。」


 カインの表情は夜の闇に紛れてはっきりとは見えなかったが――


 彼の剣の輝きが、その覚悟の強さを物語っていた。


 俺は静かに息を吐く。


「……分かりました。なら、行きますよ。」


「あぁ、来い。」


 カインの低く、しかし確固たる言葉を合図に、


 俺たちは同時に動き出した――。



 ※※※



 同時刻。

 遠く離れたノワラ国王城では、エレーナ王女が夢を見ていた。


 それは、勇者カイル・ブラックウッドの未来。

 カイル、ルミエラ、そして――“影”に立ち向かう3人の剣士。


 これまで、未来視の中ではその3人の顔は黒く塗りつぶされたように隠されていた。


 だが、この夜――

 エレーナ王女の見た“それ”は違っていた。


 ついに、3人のうち1人の顔が鮮明になったのだ。


 カイン――。


 その顔が、はっきりと映し出されていた。


 エレーナ王女は夢の中で密かに思う。


(カイルさんたちの旅は、順調に進んでいるのだわ。)


 だが、その瞬間、未来視が新たな未来を映し出した。

 それは――遥か南の果てから、徐々に、しかし確実にアルガド王国に迫る5つの影。


 暗黒のように不気味な影が、大地を飲み込むようにゆっくりと、だが確実に進んでいる。


 そして――

 今まで黒く覆われていた“影”の顔が、ついに鮮明に映し出された。


 それは――


「――嘘……!?」


 エレーナ王女は、驚愕し、息を呑んだ。


「まさか、こんな……!!」


 ――彼女の目の前に映る“影”の中のひとつ。


 その顔は――……


 カイルたちの旅は順調に進んでいる。

 しかし、その旅は困難を極める道でもあった――。

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