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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第6章 日常編

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187話 決意の旅立ち

 どこからか、5つの影が迫っている。

 俺は一刻も早く国を出る必要があった。


 王城では兵士たちが慌ただしく馬車の準備を進めているが、その間にやるべきことがあった。


 ノアたちに、この国を離れることを伝えなければならない。


 ――俺は学園を訪れた。

 ノアたちはまだ授業中だったが、俺の後ろに控えている数人の兵士たちを見て、担任のフリークスがすぐに状況を察した。


「……なるほどな。」


 フリークスは短く息を吐き、俺をまっすぐに見据えた。


「お前がこんな形で戻ってくるなんてな……まぁいい。こいつらを連れて行け。」


「ありがとうございます。フリークス先生。」


 俺は深く頭を下げた。


「別にいいさ。でも、ブラックウッド……お前、本当に勇者になっちまったんだな。」


 フリークスは苦笑しながらそう言った。

 昔と変わらない、その気の抜けた様子に少し安心する。


 しかし、俺が今やるべきことは、ノアたちとの最後の時間を過ごすことだった。


 学園の校舎を出て、俺はノアたちを噴水のある広場へと連れ出した。


「カイル……? 一体どうしたの? それに、あの兵士たちは……」


 ノアが不安そうな表情で俺を見上げる。

 フェンリも、ライガたちも、真剣な面持ちで俺の言葉を待っている。

 フィーニャだけは眠そうにぼーっとしていたが……まぁ、それはいつものことだ。


 俺は一度深く息を吸い込み、決意を込めて言った。


「――俺、今から国を出ることにしました。」


 その瞬間、全員が固まった。


「……え?」


 ノアが、困惑したように眉を寄せる。


「どういうことだよ、カイル……!?」


 ライガが一歩前に出て、俺を睨むように問い詰めた。


「まだ戻ってきたばっかじゃんか!?なんでそんなに急いでんだよ!」


 ジャンガも驚きの声を上げる。


「カイル……なぜですか?」


 フェンリが静かに尋ねる。

 俺は皆の顔を見渡し、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「……この国に、災厄が訪れる。未来視を持つエレーナ王女の予知によれば、”5つの黒い影”がこの国を襲う。だけど、その狙いは俺なんです。」


「……!」


「俺がノワラにいる限り、ここが戦場になる。俺が国を出れば、戦いは避けられるんです。」


 静寂が広がる。


 やがて、ノアが震える声で言った。


「カイル……本気で言ってるの?」


「うん。」


 俺は迷いなく頷いた。


「俺がここにいると、皆も巻き込まれるかもしれない。それだけは嫌だ。だから、俺は行く。」


「――――」


 ノアはぎゅっと拳を握り、唇を噛みしめる。


「そんなの……そんなのって……!」


 フェンリも目を伏せ、ライガは悔しそうに拳を握りしめた。


「それなら、俺たちも行く!!」


 ライガが声を荒げた。


「カイル、お前ひとりで行かせるわけねぇだろ!!」


「そうだよ!! こんなの、おかしい!!!」


 ジャンガも同意する。


「僕たちは、カイルを助けるために戦うよ。」


 フェンリも力強く言った。


「ノア、お前も……そう思うよな!?」


 ライガがノアの肩を掴む。


 だが――


「……だめだよ。」


 ノアは小さく呟いた。


「え……?」


 ライガが目を丸くする。


「カイルが決めたなら……それが一番なんだよ。カイルは……私たちが危険な目に遭わないように……だから……。」


 ノアは涙を浮かべながらも、無理に笑顔を作った。


「カイルが旅に出るなら……私たちは信じて待ってる。」


「ノア……」


「いつかまた、必ず戻ってきてね。それで今度は……絶対にどこにも行かないで……。」


 俺はノアの瞳を見つめ、ゆっくりと頷いた。


「約束する。」


 ――こうして、俺はノアたちと別れを告げ、旅立つ決意を固めた。


  ノアたちと別れた後、俺はすぐに王城に戻ろうとしていたが、後ろから声を掛けられた。

 振り返ると、そこには俺に駆け寄ってくるエリスと、彼女を追いかけるルークの姿があった。


「カイル君……!何かあったの!?」


 目の前で息を切らしながらも、エリスは俺に問いかける。

 俺はノアたちに話したことをエリスとルークにも話した。


「え……?そんな、それじゃあもう行っちゃうの?」


 エリスが残念そうな表情をする。

 ルークは、大きな丸眼鏡をくいっと上げ俺を見る。


「強いんですか?その……黒い影って言うのは。」


 ルークの質問に俺は首を横に振る。


「分からない……でも、俺が倒さなくちゃいけないような気がする。だから、俺は行く。」


 俺の言葉に、ルークは頷き、エリスも顔を上げる。


「分かった!カイル君が居なくても、私たちは訓練を続ける!魔王を倒すために……!」


 エリスは拳を握り、続けた。


「だから、カイル君も頑張って!」


「はい。」


 俺は笑顔で答えた。

 そして、最後に二人の手を取り、しっかりと伝えた。


「二人なら、いずれ魔王を倒せるまでに強くなれる。俺はそう信じてます。だから、君たちも自分を信じてください。」


 俺の言葉に、二人の手が震えるのが分かった。

 だが、これは恐れからくる震ええではないことが直ぐに分かった。

 二人の表情は、すでに覚悟を決めていたから――。



 ―――。



 皆との別れを終え、俺は王城へと戻ってきた。


 城門前には、すでに立派な馬車が待機している。

 俺の旅支度は万全に整えられていた。


 馬車のそばには国王たち、ルミエラとアルマ、そして俺の旅を見送るために集まった兵士たちの姿があった。

 その誰もが、俺を心配そうに見つめていた。


 俺が近づくと、国王が静かに口を開く。


「カイル殿……ご友人たちとの別れは、済まされましたかな?」


「はい。」


 俺は短く答えた。


 国王は一度深く頷き、馬車を見据えながら続ける。


「馬車の中には、旅路に必要なものを一通り揃えてある。地図、1か月分の保存食と水、替えの衣類や杖。さらに、もしもの時のためのポーションや魔具の数々も積んでおいた。」


 そこまで聞いて、俺は改めてこの国の手厚い支援に驚かされる。


「……ありがとうございます。」


 俺が感謝を述べると、国王は一瞬だけ目を伏せ、少し寂しげな表情を見せた。


「……こんな形での出立になってしまい、申し訳ない。本来ならば、もっと華やかに、盛大に送り出すべきなのだが……」


「いえ、そんなことは……むしろ、俺のせいで皆さんを巻き込んでしまって……」


 そう言いかけた俺を制するように、国王は静かに微笑んだ。


「どこまで行っても、カイル殿は謙虚ですな。」


 国王は、俺の肩に手を置き、力強く語る。


「では、必ずまた戻ってきてくれ……カイル殿なら、5つの影など、いとも容易く倒してしまうのであろう?」


 冗談めいた口調だったが、その瞳には俺への信頼が宿っていた。


「……簡単じゃないと思いますよ。」


 俺は少しだけ苦笑しながら返した。


「ですが、必ず戻ります。そして、その時は――またここで皆さんと笑い合いたい。」


 俺の言葉に、国王は満足げに頷いた。


「うむ。待っておるぞ。」


 その時、エレーナ王女が一歩前に出た。

 彼女は俺の目を真剣に見つめると、静かに言った。


「カイルさん……どうか、お気をつけて。未来視で見えたことは変えられる可能性もあります。でも、危険であることには変わりありません。」


「……はい。」


 エレーナ王女の未来視は確実ではない。

 だが、それでも俺を狙う”5つの黒い影”が何者なのか、それを知るためにも旅に出る必要があった。


 すると、エレーナ王女は躊躇いながらも、そっと小さな袋を差し出した。


「……これを持って行ってください。」


 受け取って中を覗くと、中には小さな青い水晶が入っていた。


「これは?」


「私が作った……お守りです。」


 エレーナ王女は少し恥ずかしそうに言葉を続ける。


「……絶対に戻ってきてくださいね。」


 俺は少し驚いたがすぐに持ち直し、エレーナ王女に感謝を伝えた。


「ありがとうございます……大切にします。」


 俺は丁寧に袋をしまい、エレーナ王女に微笑んだ。

 彼女は少し顔を赤らめながら、小さく頷いた。


 次に王妃イザベルが近づき、優しく俺の手を握った。


「カイル殿、どうかご無事で。」


 その言葉に、俺は深く頷く。


「はい。」


 最後にアルマが近づき、俺とルミエラを交互に見る。

 その瞳は潤んでいた。


「二人とも……気を付けて。私はここに残るけど、二人の無事を祈ってる。」


「アルマさん……ありが――」


 俺が感謝を言いかけた時、ルミエラがアルマを抱きかかえた。


「ちょ…!」


 アルマは驚いたような声を上げたが、その表情は優しく、そしてルミエラの頭を撫でた。

 しばらくして、ルミエラはアルマを離し、頬を赤く染めて気まずそうに目を反らす。


「まぁ…?あたしが居なくても、アルマが泣かないように念を押してあげただけだし。」


 ルミエラのその無理のある言い訳に、その場の全員が微笑んだ。


 そして、ルミエラは振り返り、腕を組んでニヤリと笑った。


「さて、それじゃあ行こうか。カイル君!」


「ええ、行きましょう。」


 俺は最後にもう一度、国王たちへと目を向けた。


「皆さん、本当にありがとうございました。」


 そう言って、俺は馬車に乗り込む。

 ルミエラも続き、馬を軽く叩いた。


 馬車が動き出す。


 国王、王妃、エレーナ王女、そして兵士たちが手を振る。


 俺は馬車の窓からそれを見つめ、静かに心の中で誓った。


(俺は必ず戻る。……この国のために。みんなを守るために……。)


 こうして、俺たちの新たな旅が始まった――。

第6章 日常編 -終-

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