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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第6章 日常編

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184話 大人

 あの後、両親と話を続ける中で、これからどうするのかという話になった。


 俺は正直に言った。


 自分の夢のこと――もっと強くなりたいということ。

 そのために、また旅に出たいということ。

 そして、どうか止めないでほしいということを。


 俺の話を聞き終えると、母親は怒りを露わにし、手を握り締めながら叫んだ。


「カイル!今までどれだけ危険な目にあったと思ってるの!?また旅に出るだなんて……そんなの、母さん許しません!」


 予想していた反応だった。


 母親が俺を心配してくれているのは痛いほど分かる。


 けれど、俺はもう決めたんだ。


「母上……俺は――」


 俺が言葉を続けようとしたその時、父親が静かに口を開いた。


「……いいんじゃないか。カイルの好きにさせれば。」


「あなた!?」


 母親は驚いたように父の顔を見上げる。


「カイルはもう子供じゃない。自分の意思で歩みたい道を選ぶのなら、それを止めるのは親の役目じゃないだろう。」


 父親はそう言うと、俺の肩に手を置いた。


「お前の覚悟は……本物なんだろう?」


「……はい。俺は、この世界で一番強くなりたい。そのために、もっと広い世界を知り、もっと多くの経験を積みたいんです。」


 俺の言葉に、父親は満足そうに頷いた。


「だったら、行け。だが、ひとつだけ約束しろ。絶対に――生きて帰ってくると。」


「……はい、誓います。絶対に生きて帰ります。」


 そう誓った俺を、母親はまだ不安そうに見つめていたが、やがてゆっくりと息を吐き、観念したように頷いた。


「……分かったわ。でも、約束だからね。絶対に、絶対に無事に帰ってくるのよ……?」


「分かってるよ、母上。俺はまだ、やりたいことがたくさんあるんだから。」


 俺はそう言って笑った。


 まさか、父親があっさり許可を出してくれるとは思わなかった。

 俺の覚悟を汲み取ってくれたのか、それとも何か他の考えがあったのか……。


 今は聞く雰囲気じゃなかったので、旅に出る直前にでも改めて尋ねようと思う。


 さて、久しぶりに両親と再会したおかげですっかり忘れていたが、今日は前から約束していた、エリスに魔法を教える日だ。


 俺はふと時計代わりの魔具を確認する。


(やばっ……!もうこんな時間!?)


 予定よりもだいぶ遅れてしまっている。

 エリスに怒られるかもしれない。


 俺は急いで街の出入り口まで両親を見送りに行くことにした。


 両親はしばらく村に戻り、準備が整い次第、首都に引っ越す予定らしい。


「……また、会えるわよね?前みたいに突然居なくなったりしないわよね?」


 名残惜しそうに俺を見つめる母に、俺は笑って見せる。


「えぇ、今回は突然居なくなったりしません!」


「……絶対よ?出発の時はちゃんと連絡してね?」


「分かりました。」


 母親が最後にもう一度俺を抱きしめ、父親は軽く拳を俺の肩に当てた。


「じゃ、行ってくる。カイル。」


「はい……じゃあ、また。」


 そうして、両親が馬車に乗り込み、ゆっくりと走り出す。


 俺はその姿が見えなくなるまで見送り続け、しばらくの間、その場に立ち尽くしていた。


(……さぁて、俺も行かないとな。)


 そうして俺は、足早にエリスと待ち合わせている場所へと向かった。



 ―――。



 露店が並ぶ賑やかな通りを歩きながら、俺はふと足を止める。


(……そうだ、遅れたお詫びに、何か昼食でも買っていこう。)


 適当に買うのもどうかと思いながら、目についた屋台に近づいた。そこには、こんがり焼かれたハンバーグや色鮮やかな野菜が、紙のパックに丁寧に詰められている。


(エリスの正確な年齢は分からないが……あのくらいの年頃の女の子なら、ハンバーグとか好きなんじゃないか?)


 少し迷ったが、結局それを買うことにした。


 金を払い、出来立ての温かいパックを片手に、俺は再び足を速める。


 エリスの待つ場所――学園近くの広場へ向かって。


 広場に着くと、すでにエリスと、もう一人の少年――前にエリスを授業に戻そうと促していたルークという少年が、模擬戦を始めているところだった。


 俺は少し遠目から二人の戦いを観察する。


 エリスの魔力制御は、流石秀才と呼ばれるだけあって、目を見張るものがあった。


 魔法の軌道に一切のブレがなく、魔力が均等に行き届いている。まるで教科書に載っているような、模範的な魔法の使い方だった。


 対してルークは……正直なところ、魔法の扱いはあまり得意ではなさそうだ。


 発動が遅く、エリスの正確な魔法に比べるとどうしても見劣りしてしまう。


(まぁ、エリスと比べるのは酷かもしれないな……)


 だが、一つだけルークの戦い方で目を引いたものがあった。


 とにかく、魔力量がすごい。


 エリスのように一発の精度で勝負するタイプではなく、連続して魔法を放ち、相手を圧倒するスタイルなのだろう。


 今はエリスに押され気味だが、もっと技術を磨けば、大きく化ける可能性がある。


(……こうやって見ると、人の戦い方って面白いな。)


 まるで専門家みたいなことをブツブツと考えていたが、そろそろ声をかけることにした。


「エリス!ルーク!すみません遅れました!」


 俺の声に、エリスとルークが同時に振り向いた。


「あ、カイル君!」


 エリスが顔を輝かせる。


「遅いですよ!何してたんですか!?」


 腕を組み、少し怒ったように言うエリスに、俺は笑いながら紙パックを掲げた。


「すみません、ちょっと急に用事が……。でも、その代わり、昼ご飯を買ってきました。お詫びにどうですか?」


 エリスは一瞬目を丸くしたが、すぐに嬉しそうに笑った。


「えっ、本当!?ありがとう、カイル君!」


 俺はパックを渡し、エリスが興味津々に中を覗き込む。


「わぁ……ハンバーグ!すごくいい匂い……!」


「エリスさん、ハンバーグ好きなんですか?」


「うん!だーいすき!」


 エリスが満面の笑みで答えるのを見て、俺はほっと胸を撫で下ろした。


(よかった……適当に選んだ割には、いいもの買えたっぽいな。)


 すると、隣でルークが小さく咳払いをする。


「……カイルさん、僕の分は?」


「ない。」


 即答すると、ルークはガックリとうなだれた。


「ひどい!僕だって頑張ってたのに……!」


「いや、だってルーク君が来ること知らなかったんだもん……。」


「それは……!はい、僕が悪かったです。」


 落ち込んだ様子のルークに、俺は少し眉を下げた。


「……今度ちゃんと買ってくるよ。」


 俺がそう言うと、ルークは少しだけ気を取り直した。


「約束ですよ!」


「うん、約束する。」


 エリスはそんなやり取りを横目に、ハンバーグを美味しそうに頬張っていた。


 こうして、俺たちは広場で昼食をとりながら、しばしの休憩を楽しんだ。


(……腹ごしらえも終わったことだし、そろそろエリスの訓練に本腰を入れるか。ルークにも教えたいことがいっぱいある。)


 俺は心の中でそう決意し、エリスとルークに向き直った。


「よし、それじゃあ魔法の特訓、始めよう!!」

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