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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第5章 魔王討伐編

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157話 懇願

 魔王の拳がルミエラに向かって振り下ろされる。


 だが、その動きにはかつての威圧感も、鋭さもない。

 深手を負っていたルミエラですら、軽々と回避できるほど鈍重だった。


「ハハッ!操っている奴の格が知れるね!点で弱い!」


 ルミエラは嘲笑しながらカウンターの魔法を叩き込む。


「エア・ショット!!」


 風の刃が魔王の皮膚を切り裂き、黒い血が噴き出す。


(攻撃無効化の加護もない…!行ける!)


 ルミエラは確信する。

 だが――妙な違和感 が、頭から離れなかった。


 ルミエラの攻撃が次々と魔王の肉体を抉る。

 だが――何かがおかしい。


「……?」


 魔王は間合いを詰めることもなく、反撃もまともにできない。

 まるで闇雲に暴れているだけのようだった。


 ルミエラは 一瞬、躊躇する。

 そして、その隙が命取りになった。


「ががががががばばばばばがばっばば!!」


 突如、魔王の首が異常な角度で折れ曲がる。


「ッ!?」


 ルミエラは思わず即座に魔法を放つ。


 ――だが。


 魔王の口が不気味なほど大きく開き、魔法を飲み込んだ。

 そして、咀嚼するようにゴクリと飲み下す。


 その瞬間――


 魔王の身体が膨張し始めた。


「……!? なんだ、これは……!?」


 肉がボコボコと脈動し、膨れ上がる。

 血管が破裂し、黒い瘴気が噴き出す。


「違和感の正体はこれか……!こいつ、あたしの魔法を吸収して大きくなってたのか……!?」


 ルミエラは、そこで思い出した。

 魔王には、まだ判明していない加護が2つあったことを。


 内、右の1本はカイルが撃ち落としたから問題ないはず。

 となると…残る左腕の、一番上の腕が魔王の身体を膨張させている原因であるに違いない。


 ルミエラがそう考えた、そのときだった。


「こ…殺して…くれェ…た、頼む……。」


 魔王が涙を流しながらつぶやいた。


「……え?」


 ルミエラは思わず息を呑む。


 魔王の顔は、怯え、苦悶し、そして 人間のように涙をこぼしていた。


 その瞳に宿る ほんの僅かな理性。

 ――まるで助けを求めているかのような、懇願だった。


「お前……」


 ルミエラの手が、一瞬止まる。


 魔王は身体を乗っ取られながらも、最後の力を振り絞って、言葉を紡いだ。


「我は…我らは…ただ、満足のゆく『感情』を求めていただけだ…ッ!」


 その瞬間、ルミエラは強く杖を握りしめる。


「……分かったよ。すぐに楽にしてやる。」


 彼女の 決意が定まる。


 ――魔王を、倒す。

 いや、その苦しみから、救ってやる。


 ルミエラは華麗に杖を回し、魔王を捉えた。


 ルミエラが魔王を捉えたとき、そこに『感情』はなかった。


 無機質な瞳から、静かに涙が流れているだけだった。

 だが――それは決して、悲しみの涙ではない。


 魔王は 『感情』すら失った抜け殻だった。


「……もう、ためらう理由はないね。」


 ルミエラは魔法を放つ。

 ――魔王の魂を火葬せんとする、高熱の炎を。


 灼熱の業火が、魔王の全身を覆い尽くす。


 しかし――


「がががががばばががががががッ!!!」


 魔王は炎をものともせずに、片手で払いのけた。


「あぁもう! デカいだけなのに、ほんと迷惑だ…!」


 ルミエラは舌打ちしながら後方の冒険者や兵士たちを頼ろうと振り返る。


 しかし――


 そこには 無数の魔獣たちが暴れ狂っていた。


「なぜ今になって魔獣が…!?」


 ルミエラは思考を巡らせるが、答えには届かない。

 とりあえず、加勢は見込めないことだけは理解した。


(やるしかないね……!)


 ルミエラは 覚悟を決めた。


 魔力は残り僅か。だが――最後の一撃を叩き込むまで、絶対に倒れない。


 ルミエラは杖を柄の中心で掴み、駆け出す。


 巨体の魔王の足元を駆け回り、踏みつぶされないよう機敏に動きながら攻撃を続ける。


「ががががががああああああ!!!」


 魔王が機械的な咆哮を上げ、手を地面に伸ばす。

 だが、ルミエラの素早い動きを捉えることができず、 空を切るだけだった。


(やっぱり……デカすぎて、足元のあたしを捕まえられない!)


 なら――。


 ルミエラは魔王の膝を集中攻撃し、バランスを崩す作戦を決行する。


「崩れろッ!!」


 次々と魔法を放ち、魔王の足元を揺らす。


 しかし――


「……くっ!」


 魔王は微動だにしなかった。


 それどころか――魔力を吸収し、さらに巨大化している。


(カイル君……!一体何してんだい!!)


 ルミエラは、遠距離から魔王に致命的な一撃を与えてくれるはずの救世主の登場を待ち続けていた。

 しかし――


 一向にカイルの攻撃が飛んでくる気配はなかった。


(ちょっと……何やってんだよ……!)


 ルミエラは悪態をつきながらも、攻撃を続ける。



 ※※※



「なんだ……!? 魔王の様子がおかしい?」


 俺は、魔王の足を撃ち抜いたあと、さらなる攻撃を加えようとスコープを覗いていた。


 だが――


 魔王が突然、泡を吹いて痙攣を始めた。


「……?」


 その異常に気付いたのか、 ルミエラや冒険者たちも距離を取る。


 しかし――


 魔王がたった一歩踏み込んだ瞬間。

 冒険者の何人かが、一瞬で“消えた”。


「え……!?」


 俺は、その光景を見て息を呑む。


 魔王は一歩しか動いていなかった。

 それなのに冒険者を一瞬で殺した。


(まさか……これが残る腕の加護か!?)


 なら――撃ち落とせばいい。


 俺はライフルの照準を魔王の腕に定める。


「……ッ!!」


 しかし――そのときだった。


 背後から兵士たちの悲鳴が響き渡る。


「うぎゃああああ!!」


「!?!?」


 俺が振り返ると、そこには 大量の魔獣が迫っていた。


「助け……!たすけて!!!」


 兵士が魔獣に腕を咥えられ、必死に暴れている。


(今は魔王を優先すべきだ……!)


 俺はルミエラの方を見つめる。

 ――だが、目の前には助けられる命がある。


「クソッ……!」


 俺は兵士を助けることを決めた。


「今助けます!!!」


 即座にライフルを構え、スコープを外し、形状変化させる。


 ――俺の手には、二丁の黒い銃が握られていた。


(これなら……小さな的も狙える。)


 俺はライフルを分解し、ハンドガンに変形させたのだ。

 このライフルはもともと、形状変化させることを想定して設計していた武器だったのだ。


「動かないでください!!当たったら死にますよ!!」


 俺はマガジンを装填し、魔獣の頭を狙う。


 ドンッッッッ!!!!


 放たれた弾丸が、魔獣の頭を撃ち抜いた。

 兵士の腕を咥えていた魔獣が崩れ落ちる。


 解放された兵士は駆け寄り、俺にすがりついた。


「ありがとうございます!ありがとうございます!!」


 俺は兵士の肩を叩き、左手のハンドガンを手渡す。


「え……?」


「これなら距離を開けたまま戦えます。数が多い、手伝ってください。」


 兵士は驚きながらも、試しに一発撃った。


 ドォンッ!!!


 轟音とともに、 魔獣の頭が吹き飛ぶ。


「これは……!!」


 兵士の表情が変わる。

 怯えていた男が戦士の顔になった。


「……やれます!!」


 兵士はしっかりと銃を構え、俺と共に戦う決意を固めた。


(ルミエラ……!もう少し待っててくれ!!すぐに、そっちへ加勢するから…!)

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