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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第5章 魔王討伐編

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156話 伝心の加護

 俺は、ルミエラと別れた後、兵士たちの魔力を借りて超遠距離から魔王に致命傷を与えるための武器を作っていた。


 必要なのは、 高精度、高威力、超遠距離攻撃が可能な兵器――そう、スナイパーライフルだ。


 魔力を込め、土元素を操り、前世の記憶を頼りにライフルを形作る。


(よし……順調だ)


 作業を進めながら、今までなぜこれを作らなかったのかを思い返す。


 理由は単純だ。

 この世界では遠距離戦闘の必要がなかったからだ。


 弓矢や槍のような武器は、魔法があれば防げる。

 戦いの主流は剣と魔法による中・近距離戦であり、

 わざわざ弾丸を放つ銃器を作る必要性は皆無だった。


 しかし――


 今、俺にはこれが 必要だ。


 魔王を確実に仕留めるために。


 完成したスナイパーライフルを肩に担ぎ、俺は兵士たちに戦場全体を見渡せる高所へ案内してもらった。


「ここが一番見晴らしのいい場所です!でも……一体、何を!?」


 案内してくれた兵士が戸惑いながら聞く。

 俺は答えず、代わりに出来立てほやほやのライフルを構えた。


「まぁ……見ててください。」


 スコープを覗き込むと、魔王と冒険者たちが激戦を繰り広げていた。

 その時、 ルミエラたちの猛攻で、魔王の一番上の右腕が落とされた。


「やった!攻撃の無効化はもうできない!」


 これで俺の攻撃が確実に通る。

 俺はライフルのトリガーに指を掛ける。


(風速、風向き、障害物……)


 全てを考慮し、最適な狙撃位置を探る。

 その時直感が叫んだ――


「ここだ……!」


 狙いを定めるは魔王の左腕の真ん中。

 神速の加護を持つ腕を撃ち抜く!


 魔王がルミエラたちに向かって腕を振り下ろす瞬間、俺は トリガーを引いた。


 ドンッ――!


 鈍い発射音が響き、 弾丸が魔王の腕に一直線に向かう。


(……懐かしい感覚だ。)


 ライフルの反動が全身に伝わり、俺は僅かに後ろへ揺れる。

 だが、スコープから目を離すことなく、魔王の動向を見届ける。


 そして――


 魔王の腕が吹き飛んだ。


「やった!!」


 思わずガッツポーズを取る。

 兵士は何が起きたのか分からず呆然としていたが、俺は次の攻撃の準備に入った。


 魔王はまだ諦めていない。


 俺はスコープ越しに魔王を捉え、次の標的を定めた。


「今度は……右腕の下!」


 加護の詳細は不明だが、 撃たなければルミエラたちが危険だ。


 再びトリガーを引く。


 ズドン――!!


 弾丸は一直線に飛び、 魔王の一番下の右腕を吹き飛ばした。

 続けて魔王の右足を狙撃。


 一発は外したものの、もう一発は膝を直撃し、 魔王の重心を大きく崩した。


「よしッ!!」


 俺は拳を握りしめ、再度スコープを覗く。

 魔王の動きが鈍り、明らかに戦闘能力を削がれている。


(あともう少しだ……!)



 ※※※



「ぐぬぬ…ッ!」


 魔王は自らの右足を見つめ、焦燥の色を浮かべた。

 太ももに開いた大きな風穴から、 どくどくと 血が流れ続けている。


 いつもの魔王ならこんな傷、受けるはずなかった。


 しかし、今は違う。


 あの子供の勇者が、どこからともなく攻撃してくる。

 超遠距離から、魔法ではない異質な攻撃を受け、何の対処もできないまま己の四肢を削り取られている。


 初めて味わう理解不能な恐怖。


「なぜ……ここまでッ!」


 魔王は戦慄していた。


「アンタがこの国に侵攻したからさ。」


 静かに言い放つルミエラの瞳には、 一片の迷いもなかった。


「つまり、自業自得だね。あんたはここで死ぬ。――勇者に倒されんのさ。」


 その言葉に、 魔王の表情が僅かに歪む。


「我は……幸福を……悲しみを……怒りを求めてきただけだッ……!アイツに言われて!」


「アイツ…?」


 ルミエラが眉をひそめた瞬間、魔王は 何かを言いかけ――。


「ハッハー!!そうだ、ア――」


 しかし、その瞬間、魔王の言葉が途切れた。


「ッ!!?」


 突然、魔王の瞳が見開かれる。


 次の瞬間――魔王の全身が小刻みに震え始めた。


「…?」


 ルミエラが不審そうに魔王を見つめる。


 しかし、彼女はその異常な魔力の波長に気づいた。


(これは……!!)


「伝心の加護…!!」


 ルミエラは直感的に弾丸が飛んできた方向を振り返る。

 そこにはカイルがいると確信していたからだ。


 しかし――


 その行動が、アダとなる。


「なんだァ…?そっちにあの子供がいるのかァ…?」


「く…!?」


 魔王が立ち上がり、ルミエラたちを異常な瞳で見据えた。


 その身体は制御を失ったように痙攣し、口から泡を吹きながら獣のようなうめき声を上げる。


「ががががががががが」

「がばばばっばばばばばがががば」


 突然、魔王の口から漏れる意味不明な言葉。


「おいおい…!魔王の野郎なんか変じゃねぇか!?」


「あぁ…完全にキマッてやがる…!」


 冒険者たちは魔王の異様な変化に戦慄し、一斉に後退を始める。


 しかし――


 間に合わなかった。


 魔王がズッシリと足を踏み込んだ、その瞬間、数人の冒険者が、一瞬で消えた。


 肉片も、血しぶきも残らず――。

 まるで、 最初からそこに存在していなかったかのように。


「なッ……!!?」


 ルミエラが驚愕する。


「うわあぁあああああ!」


「なんだ!?なんだ!?」


 冒険者たちは何が起こったのかすら理解できず、混乱する。


 その中で、ルミエラだけが冷静でいた。


(……何が起きた?)


 ルミエラは魔王を見据え、 その異常に気づく。


 魔王の残る腕3本のうち、唯一の右腕が血まみれのグチャグチャになっていた。


「なんだい…!?その右腕は!?一体何をした?」


 ルミエラの驚きの声に、 魔王が歪な笑いを浮かべる。


「ここここここここ、れは。かかかか加護おおおおぉ。我ェ加護ぉおおおお。圧殺のぉおお加護んぎいいい…。」


 壊れた人形のように呟く魔王。


 その異様さにルミエラは目を細める。


「圧殺の加護……?」


 彼女の脳裏に過去の文献で見た記憶がよみがえる。


(遥か昔に存在していた、最悪の加護の1つ……)


『人生で一度だけ使える、全てを無に還す力』


「人生で一度きりしか使えないが、一瞬で物体を圧縮消滅させることができるという、チート級の加護……!!」


「それを……数人殺すためだけに……!?」


 信じられなかった。


 魔王は自らの右腕を代償にし、数人の冒険者を殺した。


 その行為に意味はあるのか?

 腕を消費してまで殺す価値が?


(いや……)


 ルミエラは、 はっきりと理解した。


(魔王は、もう意思を持っていない。)


 魔王は、伝心の加護を通じて完全に操られている。


 今、戦っている相手は魔王ではない。

 魔王を操っている、何者か――。


 そして、 魔王がゆっくりと歩みを進める。


「ここここころ、こここここここ殺す。ぜええええぜえぜえぜ全員。」


 その異常な声音に、ルミエラは静かに杖を握りしめた。


「そうかい……なら、あたしも抵抗しないとね。」


 魔王の暴走が始まる――。

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