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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第5章 魔王討伐編

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154話 最低な作戦

「ぶっ殺してやぁあ!」


 冒険者たちの怒号が戦場に響く。


 彼らは魔王の巨体に飛びかかり、剣や槍、魔法を次々と叩き込んでいた。


 その混戦の隙をつき、俺は地面にへたり込んでいるアルマを抱え上げ、すぐさまルミエラを預けた兵士たちの下へと駆け出した。


「すみません!さっきの人!アルマさんも治癒できますか!?」


 俺の叫びに、ルミエラを任せていた女兵士が駆け寄ってくる。


「はい!ここに…! あっ!」


 女兵士はアルマの傷口を見た瞬間、思わず息を呑み、手で口元を覆った。


 肩の肉が抉れ、骨が露出している――それほどまでに深い傷だった。


「い、急いで治癒します!」


 彼女の声に、俺は一瞬だけ安堵し、次にルミエラの姿を探す。


 ルミエラは近くの岩場に背中を預け、包帯を巻いている最中だった。


「ルミエラさん!?治してもらったんじゃ?」


 俺が声をかけると、ルミエラは軽く手を挙げ、少し苦笑いを浮かべる。


「よっ、と……まぁ治療はしてもらったけどねぇ。筋繊維の損傷が激しくて完全回復は無理なんだと。おかげで、もうさっきみたいに戦えそうにないねぇ。」


 彼女の悔しそうな表情を見て、俺は拳を握る。


「安心してください……俺が絶対に魔王を倒しますから!」


 そう宣言すると、ルミエラはしばし沈黙し、そして――


「……あぁ、分かってる。だって、あんたは『勇者』だもんね~?」


 そう言いながら、いつもの調子で俺の肩を叩く。


 でも、その手には、これまで以上の『期待』が込められている気がした。


 ――俺が、やるしかない。


 そして、俺は自分が立てた仮説をルミエラに説明した。


「実は――」

「――ということです。」


 話を聞いたルミエラは、腕を組みながら思考に沈む。


「意識外からの攻撃か……確かに、あのときあたしが放った魔法は、魔王にとって完全に意識していなかったものだろうね。でも――」


 そう言いながら、彼女の顔に難しい表情が浮かぶ。


「確証はないね……アルマは何て?」


 ルミエラの問いに、俺は申し訳なさそうに首を横に振る。


「アルマさんは負傷して、今は治癒魔法をかけてもらっています……。それに、おそらくもう戦うことはできないと思います。」


「……そうか。」


 俺は言葉を続ける。


「そして……今話したことはおそらく、魔王の加護によるものだと思います。」


 その言葉に、ルミエラの瞳が鋭く光る。


「カイル君もそう思うかい……?」


「はい。」


 魔王が持つ加護で、まだ判明していないものが3つある。


 それがどんな能力なのか、どのタイミングで発動するのか……すべてが未知数だ。


 だが、ひとつだけ確信があった。


『魔王の意識外からの攻撃が通る』――ならば、その盲点を突けばいい。


 俺はルミエラの目を見据え、覚悟を決めて言う。


「ルミエラさん、無茶を承知で言います。」


 俺の真剣な眼差しを見たルミエラは、小さく頷いた。


「……あぁ。」


「俺が絶対に魔王を倒します。そのために……魔王の、攻撃を無効化する加護を持つ腕を、ルミエラさんになんとかしてほしいんです。」


 このとき、俺がルミエラと出会って初めて口にした『お願い』だった。


 その言葉に、ルミエラは目を見開いた。


 無理もない。


 共に冒険してきた弟子が、師匠である自分に対し、「死ね」と言わんばかりの無茶な頼みをしているのだから。


 怒りの拳が飛んできても文句は言えない――そう思った。


 そして、ルミエラは静かに身体を支えながら立ち上がった。


 彼女の表情は前髪に隠れて見えない。


 だが、その視線だけは確かに俺を捉えていることが分かった。


 ゆっくりと、ルミエラの右手が上がる。


(殴られるか……?)


 俺は覚悟を決めた。


 しかし、次の瞬間――


 ルミエラの手は、俺の肩にそっと置かれた。


「……カイル君。」


 ルミエラの声が震えているように聞こえた。


 俺は目の前の彼女をじっと見つめる。


「……いいだろう。」


 その言葉に、俺の全身に鳥肌が立った。


「――やってやろうじゃないか。」


 ルミエラの口元が歪む。それは、苦笑なのか、それとも挑戦者の笑みなのか――俺には分からない。


「カイル君が本気で言うなら、あたしは応えるよ。」


 ルミエラは肩の痛みを無視し、片腕で杖を支える。


「でも、これだけは言わせてもらう。」


「……はい。」


「絶対に無駄死にはしない。」


 ルミエラは俺の肩をぐっと掴む。


「この作戦で、あたしが死んだら絶対に化けて出てやるから。」


「……分かりました。」


 俺は真剣に頷いた。


 ――魔王の攻撃を無効化する加護を持つ腕を、ルミエラが何とかする。


 ――俺は、その隙を突き、魔王に『確実』に攻撃を通す。


 それが、俺たちの作戦だ。


 俺は拳を握り、ルミエラと共に立ち上がる。

 戦場には、未だ魔王の咆哮が響いていた。


「行きましょう。」


「おうよ。」


 師匠と弟子――俺たちは最後の戦いに挑む。

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