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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第5章 魔王討伐編

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150話 ルミエラVS修羅の魔王

 超近接で魔王と対峙するルミエラは、反撃を焦ることなく、冷静に回避に徹していた。


 魔王の6本の腕が、左右から交互に襲いかかる。拳が目まぐるしく振るわれる中、ルミエラはわずかに体を傾け、細やかなステップで最小限の動きで躱し続けた。


「ハッハー!……当たらん!当たらんな!!」


 魔王は楽しげに笑いながら、さらに拳の速度を上げる。


 ルミエラは瞬時に気づいた。


(これが…『神速の加護』か!)


 アルマが解析した魔王の加護の一つ。移動速度、攻撃速度、反応速度、すべてを限界以上に引き上げる力。


 その効果は明らかだった。


 ルミエラの回避が、これまでより格段にギリギリになっている。今までかすりもしなかった拳が、髪を掠り、服を裂き、ついには頬をかすめた。


「ぐっ……!!」


 熱い。いや、それ以上だ。


 頬に手を当てると、かすっただけのはずの皮膚が、まるで焼けるように熱を持ち、煙を上げている。


(まさか……拳圧だけで火傷……!?)


 驚愕と共に、魔王の拳の威力を改めて実感する。速度が増したことで拳の摩擦熱が異常なまでに上昇し、掠るだけでも火傷を負うほどの熱量を生み出しているのだ。


(まずいねぇ……こりゃぁ……)


 ルミエラは内心の焦りを隠し、あえて魔王に笑いかけた。


「ほう……!笑うか!!」


 魔王の眼が輝き、一層攻撃が激しさを増す。


 右、上、左、斜め上、下――まるで無数の拳が降り注ぐかのような猛攻が繰り出される。


 回避のギリギリの間合いが、さらに狭まる。


 ルミエラの髪は次第に焦げ、服は裂け、皮膚は熱気に焼かれた。拳がかすめるたび、焼けるような痛みが走る。


(っ……!!)


 神速の加護による攻撃は、ただの物理的な打撃だけではない。高速の摩擦が生み出す熱と、空間を削るかのような圧力。これがまともに直撃すれば、ただの拳でも致命傷になるだろう。


(でも、これでいい……!)


 ルミエラは笑みを深めた。


(加護を使い続ければ、お前の身体は――)


 魔王の身体に負担が蓄積しているのは確実だ。


 神速の加護は、その加速力ゆえに身体への負担が大きい。使い続ければ、いずれ限界を迎え、魔王の身体は千切れる。


(……もう少し、稼ぐよ!!)


 ルミエラはさらに魔王へと接近する。


「ム!? さらに近づいてくるのか!!」


 魔王は驚愕の声を上げるが、同時に拳を握り込み、楽しげな笑みを浮かべた。


「だが!! 面白い!!!」


 その宣言とともに、魔王は迷うことなく拳を振り下ろす。


「ムンッッ!!!」


 魔王の拳が空を裂き、轟音と共に地面を叩きつける。大地がひしゃげ、衝撃で岩の破片が四方へ飛び散る。


 しかし――そこにルミエラの姿はない。


 魔王の視界から消えたルミエラは、拳の直撃の寸前、魔王の足元へと滑り込んでいた。

 勢いそのままに魔王の股下をくぐり抜け、背後へと回る。


「ほぅ……!!?」


 魔王は驚きに目を見開く。


(今の攻撃、間違いなく我は『神速の加護』の恩恵を受けた一撃だった。それを……避けた……!?)


 味方側の誰もこの瞬間を目撃できていない。歓声は上がらない。しかし、ただ一人、魔王だけが確かに目撃した。


 自らの加護をもってしても、捉えられなかった敵の姿を。


「ほぅ……!我の一撃を軽々と……!」


 魔王は感嘆の声を漏らし、ルミエラを振り返る。


「先ほどまでは……手を抜いていたのかぁ!!?」


「魔王様にそこまで言われるとは、光栄だねぇ……」


 ルミエラはニヤリと笑い、しかし荒い息を吐きながら続ける。


「でも、残念ながら……さっきも今も変わらず本気さ。」


「ほう……?」


「ただ……あんたの『神速の加護』に似たようなことを……あたしもしてるだけさ。」


 魔王の笑いが止まる。


「貴様……!我の加護を見破っていたのか!!!」


「あぁ……とっくにね!」


 ルミエラの自信に満ちた言葉に、魔王は一瞬の沈黙の後、再び笑い出す。


「面白い……! まさかこんなところに我を楽しませてくれる者がいるとはァ!!」


 その笑いは歓喜に満ちていた。


「それにしても……我の『神速の加護』について来られるとは……!一体どんなカラクリだァ!!?」


 自らの問いに、魔王はふと何かを思い出したかのように目を見開く。


「まさか……!!」


 そして、ルミエラの姿を再び見つめると、今日一番の笑みを浮かべた。


「ハーーッハッハッハ!!なんて狂者だ!!!」


 魔王の笑い声が、戦場に響き渡る。


 ルミエラは魔王の動きを見切ったわけではない。


 彼女は 『魔王の動きに合わせて、風元素魔法で自らの身体を加速させていた』 のだ。


 魔王の『神速の加護』と同じ速度域に自らの動きを持ち込み、加護を持たぬまま、それを疑似的に再現している。


 生身の身体で。


 常人ならば絶対に追いつけない世界で、彼女は魔王と並び立とうとしている。


 魔王は、その事実に気づいた。


 狂気とも呼べる領域に踏み込みながら、それでもなお笑うルミエラ。


 この戦いは、もはや技術でも、戦略でもない――純粋な戦闘狂の闘争本能のぶつかり合いだった。

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