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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第4章 冒険者編 

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138話 王女と少年の覚悟

「お願いします!」


 俺が言葉に詰まり、どう応えるべきか悩んでいると、エレーナ王女は深々と頭を下げた。

 それは、王族としての高貴な姿などどこにもない、ただ一人の少女としての純粋な懇願だった。


「どうか…どうか力を貸してください!」


 その声には震えがありながらも、強い決意が宿っていた。


 俺はその姿に目を奪われたまま、動くことができなかった。


「で、でも…。」


 気の利かない言葉が口を突いて出る。


 そんな俺のためらいを見た王女は、さらに膝を曲げ、汚れた地面にスカートを下ろし、頭を地面に擦りつけた。


「お願いします!」


 震える声で、彼女は涙ながらに言葉を続ける。


「どうか、ノワラ国を…私の故郷を救ってください!お願いします!何度でも頭を下げます!どうか…!」


 土埃が舞い上がるその地面に、彼女は何度も頭を擦りつけるように下げ、涙を落としていた。


 王族が、ただの一般人である俺に、ここまで頭を下げるなんて――。

 その光景はあまりにも衝撃的だった。


 俺は思考を巡らせる。


(どうして…?どうしてそこまでして、あの国を守りたいと思えるんだ?)


 俺の中には、複雑な感情が渦巻いていた。


 ノワラは、俺を否定し、利用しようとし、裏切った国だ。


 国王は傲慢で、己の欲望のために…私利私欲のために他人を簡単に犠牲にするような人物だ。そして、その国王に何も疑問を抱かず、盲目的に従う国民たち。俺は、そんなノワラ国が嫌いだった。


 嫌悪感が沸き起こる。


 しかし、俺の中の冷たい部分が告げる。


(放っておけばいい。あんな国が滅びようが、俺には関係ない。俺は、ノワラ国に借りなんて一つもない。)


 だが――。


 目の前にいるエレーナ王女は、そんな俺の思いとは真逆だった。


 彼女は自分のプライドも、王族としての威厳も投げ捨て、土下座という無様な姿をさらしている。


 それは単なる演技ではない。

 本心からの行動だと分かる。その涙が、震える声が、俺に嘘だと言わせなかった。


 どうして、ここまでできる?


 自分の故郷を守りたいという純粋な願い。自分の家族、国民を救いたいという祈り。それを実現させるために、自らの尊厳すらも捨て去る覚悟。


 こんな人間がいるのか?


 俺はその姿に、ただ圧倒されていた。

 気づけば、俺の心の中で、もう一つの声が囁いていた。


(――お前は、その覚悟を踏みにじるのか?)


 この少女の涙と懇願を、簡単に無視していいのか?


「…どうして、そこまでして…。」


 俺は思わず問いかけた。


 彼女は顔を上げず、地面に額をつけたまま答える。


「私には守りたいものがあります。この国は…私のすべてです。国がなくなれば、私の帰る場所も…生きる意味もなくなります。たとえどんな苦難が待ち受けていても、私は自分の力を尽くします。でも、それでも…私は一人では足りない。」


 震える声で、しかし確固たる意志を持って続ける。


「カイルさん、あなたは私にとっての唯一の希望です。どうか…どうか私の手を取ってください。」


 希望——。


 その言葉が、俺の胸にずしりと重く響いた。


(俺が…希望?)


 俺には分からなかった。どうして俺がそんな大層な存在になれるのか。俺はただの人間だ。ただの、仲間も守れないような力のない人間だ。


 しかし、この少女は俺を信じている。

 自分の未来視の力で視たという確かな可能性を信じ、俺にすがりついている。


 その覚悟に、俺は心を揺さぶられていた。


 俺の中の冷たい部分はまだ囁いている。


(お前はあの国を憎んでいるだろう。あんな国のために命を懸ける理由なんてない。)


 だが――。


 俺の心のどこかで、また新しい声が湧き上がる。


(それでも、誰かを信じてみてもいいんじゃないか?)


 俺の目の前で涙を流し、無様な姿をさらしているエレーナ王女の姿に、俺はどうしても嘘をつけなかった。


「……分かりました。」


 震える声でそう答えた瞬間、エレーナ王女は驚いたように顔を上げた。


「カイルさん…!」


 その瞳には、涙と希望の光が混じっていた。


「…俺にできることがあるなら、協力します。」


 それは俺の意地だった。この世界で憎しみのままに生きてきた俺が、初めて誰かのために動くという決意だった。


 エレーナ王女の頬に涙が伝う。


「ありがとうございます…本当に…ありがとうございます…!」


 その姿を見た俺は、心の中で決意を固めた。


 たとえその道がどんなに険しいものであろうと、俺は王女の覚悟に敬意を表し、必ず王女の悲願を叶える。


「俺が、魔王を倒します――。」

第4章 冒険者編 -終-

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