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これで一歩、武家屋敷に近づくかな?



 筆が進んだので、本日2話投稿します。



 夜中、ふと目が覚めた。


「誰か居るの?」


 幼い歳のせいもあってか未だ夢見心地ではあるけど、地球での経験とこの世界での修練のお陰で僕は気配に気がついた。

 間違いなく誰か居るなぁ…。暗殺かな?


「起こしてしまいましたか…」

「ウィー?」

「申し訳ありません」


 何でウィーが?窓から入ってくる月光の感じからして、魑魅魍魎が跋扈する丑二つ時から三つ時の間…午前1時半から2時半の頃合いだと思う。


 ここに住んでから早くも半年が経とうとしてるけど、今まで一度もそんな事はなかった…と思うんだけど。地球の時の身体と感覚が同じになってきたのは最近の話だし、もしかしたらそれ以前にもあったのかも知れない。


 けど、()()はウィーじゃない。僕に使えてくれてるメイド長のウイルンじゃない。


「さて、貴女は誰?」


 貴女じゃなくて貴方かも知れないけどね?


「私はウィーですが?」

「うん、確かに気配は似てるけど…多分違う」

「…ふぅ。まさかバレるとは…」


 すごい、この世界にも変声器ってあるのかな?

 ウィーは、女性の中でも声が高い方だと思うけど、この人は女性としては声が低い方だった。なのにウィーと同じ声が出せるって…本当にすごいなぁ。


 僕も、家伝の変声術仕込まれたけれど、やっぱり変声器には勝てるはずもなかったよ。

 文明の利器、技術の結晶…まあ言い方は何でもいいけれど、最新の科学には古の技術も勝てない。


「お初にお目に掛かる。俺はアンタの護衛を務める者だ」

「護衛…」

「主に夜警とか暗殺とか、裏の害意から護るのが役割だ」


 なるほど。僕は少し特殊な立場に居るから裏の警護を付けてくれたのかな?有難いなぁ。


「と言う事は、わざと姿を見せて…はくれて無いけど、存在を明かしたくれたのかな?」

「はははっ……そうだ。真意を汲み取ってくれて助かる」

「えっと…なんて呼べばいいの?」

「そうだなぁ……うーん…任せる」


 任せる?え?僕が名を付けるの?

 まあ、名前を付けるって言っても、僕が彼?彼女?を呼ぶときに使うだけの名前だろうけど…。

 うーん…。何か妙案があれば良いんだけど…。


 流石に名無しの権兵衛は文化的に合わないし、権兵衛って男性の名前だよね?

 アメリカとかだと身元不明者を、ジョン・ドゥとかジェーン・ドゥって言うらしいし、それからあやかろうかなぁ。


「じゃあ、ドゥね?」

「ドゥ…何でその名をつけたのかは知らないが、コレからよろしく頼む」


 ジョンなのかジェーンなのか分からないから、敢えてドゥだけにしたんだよ。言えないけど。

 性別がわかってれば、男ならひいじいちゃんの名前、女ならひいばあちゃんの…じいちゃんの母親の名前にしようかなって思ってたけど。


 ちなみに、ひいじいちゃんの名前は陽


「うぅーん…よろしく頼む時ってのは良く無い時だよね?出来れば暇してて欲しいなぁ」

「ははっ…確かにな。まあ、護衛対象もなかなかの技量を持ってそうで良かった」


 おお!アサシンに認められた!嬉しい!って喜んで良いのかなぁ…。

 本当に侵入者なら僕は死んでたよなー。

 枕元に武器なんて隠してないし、気がつくのも遅かったから。考えものだね。


「本当は自己紹介する予定じゃなかったけど、気がつかれたなら仕方ない。今はまだ敵勢力といったものは無いから安心して寝ろ」

「そう…。それじゃあおやすみ」


 返事が無い。ただの屍…になるなら僕の方か。



 おはよう、太陽。

 現在、推定午前10時。はい、よく寝ました。


 とは言っても、8時ごろには起きてたんだけれども、なんかゴロゴロしてたい気分だったからダラァーッとしてただけなんだけどね。


 昨夜、僕がドゥに気がついたのは運が良かったんだろうね。日頃の修練のお陰ではあるけど、若干気配を漏らしてくれてた節があったから。

 あの時は半分くらい寝ぼけてたから気が付かなかったけど、今にして思えばアレはご挨拶に来てくれたのかも知れないって思うんだ。


 じゃなきゃ、わざわざ裏の存在が接触を図ってくる筈ないし。僕ならやらない。


「何を描いてるんですか?」

「んーとね、このお屋敷の防犯対策を考えてるんだ」


 本日はウィーがお休みのため、僕のそばにはメイジュさん事メイさんがいます。


「あの、コレは何ですか?」

「コレは廊下の警報装置だよ。この上を歩くと音が鳴る仕組みになってるんだ」

「へぇ…魔法…じゃ無いですよね?」

「うん、違うよ」


 日本人なら知ってる人も多いんじゃ無いかな?

 歩くと鶯の鳴き声の様な音が鳴ることから、鶯張りの廊下…なんて呼ばれる警報装置なんだけど。


 仕組みは至極単純だけど…言葉で説明するのは少し面倒かな。

 誤解覚悟で言うなら、感圧センサーみたいなものだと思うよ。


「こっちのは…」

「コレは、窓とか部屋の扉を開ける時に音が鳴る様な仕掛けをしたいなって思ってるんだけど、コレはまだ考え中」


 廊下だけだと何事もなく通られる事もあるだろうから、部屋に入るには窓にしろドアにしろ、必ず開ける必要があるよね?

 だから、建て付けの悪い家みたいに、ギイギイ音が鳴る様にしておけば流石に目が覚めると思うんだ。


 だけど、こっちは自分で仕掛けを考える必要があるし、音が鳴らない様な開け方も組み込もうと思ってるから…難しいね…。


「天井裏から侵入された場合はどうするのですか?」

「あー…そっちは大丈夫。侵入されないから」


 多分ドゥが防いでくれると思う。うん。


「その様なものなのですか?」

「うんうん」


 まあ、ある意味防犯装置だよね?


「それにしても、なんで急に?」

「うーん、僕思ったんだけどさ、僕のスキルって良くも悪くも便利じゃん?」

「はあ…」


 むむむ、よくわかってなさそうです。


「例えば、我が家では商品の量産をしてた訳なんだけど、それってコストゼロで生産出来るって事だよね?だから、利益が莫大な物になる」

「確かにそうですね。材料費とかロスとか無いわけですからね」

「うん。強いてあげるなら、僕の魔力が消費されるわけだけど…そんなのはコストに入らないし」


 メイさんは材料費って言ったけど、我が家は業者から安く仕入れて定価で売るって事をしてたわけだから、原価の仕入れ値と運送費、それと人件費くらいなものかな。

 我が家で一から作るなんて事は無かったよ。


 魔力の回復速度は人によって違うらしいけど、僕は比較的早い方なんだとか…。

 多分、3歳の頃から毎日スキルを使ってたからだと思うけど、魔力の最大量と回復速度、消費量の少なさと魔力使用時の効率がすごく良いんだって…。教会の人に言われた。


「例えば、どこかの商人が僕の力を利用しようと考えて、僕を攫おうとしたり、他国から見れば軍事利用されたら大変困る訳だから、害そうとしてきたり…なんて事もあり得るでしょ?」

「確かに…」


 他国と戦争になって、助力を請われたら喜んで力を貸すと思う。

 まあ無いとは思うけど、ここ王都まで進軍されたら家族に危害が及ぶかも知れないし。


 それなら、兵糧や武具防具や馬車とか、消耗品の量産をして祖国に勝って貰った方が100倍良いに決まってる。

 食事は士気に直結するし、良い武具防具があればその分武力の底上げにもなる。

 馬車が沢山あれば運搬も楽になるし、消耗品は余るくらいがちょうど良いでしょ?


 流石に馬は量産出来ないから、馬車は馬だけじゃなくて牛とかにも引いてもらわなきゃだけど。


 戦争になったらの話ね?ならないとは思いたいけどね。


 ああそうだ。この際だから土足厳禁エリアも作ろう!

 僕の部屋と縁側のある部屋。出来れば、縁側のある部屋は庭園と合わせたいから畳敷きにしたいなぁ。あるかなぁ…、無いよなぁ。

 い草が有れば作れるんだけど、そもそもい草があるかどうか…。


 え?何で畳の作り方を知ってるのかって?

 だって、畳の業者を装って城内や屋敷内に潜入できるでしょ?

 だから、畳や障子や床板張りもできるんだ!

 蝋燭作ったり大工仕事も基礎ならできるよ。そう仕込まれたからね。

 無論、それらに必要な道具の作り方もね?


「まあ、後は趣味かな」

「趣味…ですか?」

「うん。開発が」

「ああなるほど。そう言えば、近く王家御用達の商人の方が来られるそうですよ?」


 王家御用達の商人さんか…。僕も大変お世話になってる事だし、出来れば何かお返しがしたいところだなぁ。

 やっぱり、商人だから商売に利のある事が喜ばれるだろうけど…何があるかなぁ。


「いつも贔屓にしてくれてるからご挨拶に伺います、との事ですが、正確な日にちはわからないようです」

「王家御用達ともなれば大層忙しいだろうから仕方ないよ。いつもお世話になってるこっちこそお礼を言わなきゃなのに…」


 商人は信用第一だから下手に出てきてくれてるのかも知れないけど、それを逆手に取って上から目線でぞんざいに扱うのは……はっきり言ってバカのする事だから。

 大体、僕の生家も商売人だし。


 異世界物でよくある、スプリングの構造と用途を教えようかな。

 馬車用なら僕も作れるけど。



 次回は1時間後の21時です。

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