表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/51

枯山水って難しい



 今日は、前々からやりたかった事をやってみようと思います。

 とは言っても、僕がやるんじゃなくてやってもらうんだけどね?


「岩で囲った範囲に石を敷き詰めましたよ。この後はどうするんですか?」

「この熊手で、均した石に線をつけて欲しいんだ。水の流れを表現する目的だから…ユックのセンスに任せるよ」

「それが1番困るんですよね…。まあ何とかやってみます!気に入らなければ均せば良いだけですし」


 庭師として働いてくれているユックは、もともと植物学者をしていたんだって。その知識とか目利きとか技術を買われて、王城に勤務するようになったんだって。

 だけど、本人としては研究とかもやりたいとかで僕の元に来たんだ。王城の方は彼の弟子が後任として働いてるから問題ないらしい。


 それに、同じ敷地内だし。


 そんなわけで、彼の元にはしょっちゅう休日のお弟子さんが替わる替わるやって来ては、ユックと一緒に植物の研究とか育成とか改良とかやってるみたい。


「それにしても、石を均衡にして線をつける事で流水を表現するなんて、考えもしなかったです」

「あはは。自分で言うのも何だけど、僕は変わってるからね」

「それは日々実感しております」


 枯山水と違って、鹿威しは特別複雑な造りでもセンスが問われるわけでもないから、材料を用意してもらって自分で作ったんだ。

 少し工夫を凝らして、サイフォンの原理を利用した半永久的な仕組みを組み込んだけど、完成した時には……感動したね!


 みんなは色々驚いてたなぁ。

 鹿威しの原理は簡単だし、川とか泉とかがなくてもこの世界には魔法がある。水魔法がね。

 だからどこでも作れる。


 鹿威しの効果と言うか役割は、その名前の通りに鹿を脅す害獣避けとしての道具なんだ。

 筒に水が入るようにして、重さで筒が傾いて中の水を排出する。元の位置に戻る時に、石とかにカコンと当たる音で追い払うんだって。


 カラスは、人間の7歳児くらいの知能を持ってるって聞いたことがあるから…いずれ虚仮脅しだと気付かれるかも。

 近代地球と違って、センサーなんて便利なものはないから仕方ないね。


「お茶をお持ちしました」

「わぁ!緑茶だ!ありがとう!」


 詳しいことは分からないけど、紅茶も緑茶も茶葉は一緒だったはずだから頼んでみたんだよ。

 確か、茶葉を摘んだ時から酸化酵素が働いて、その進み具合でお茶の種類が決まるらしいんだ。

 日本人の常飲してる緑茶は、摘んでから直ぐの時に蒸したりして酵素の活性を止めるんだった気がする…。


 まあ要するに、紅茶があるなら緑茶が作れない道理はないよね?って事で、商人さんとかサックスにお願いしてみたんだ。


「それ、美味しいのですか?」

「ウィーのその疑いの目、珍しいね。…んく…」

「そのような緑色をした飲み物を見たことがないので…」


 ううむ。確かに、この世界の飲み物といえば、果物を絞ったジュースとか紅茶コーヒー、後はお酒とお水とか…緑色の飲み物は見たことがない。

 緑って色は、苦そうとか青臭そうって印象があるよね。ゴーヤもピーマンも、その最もたる代表的な食べ物だし。瓜系も独特の瓜臭さがある。


「飲む?」

「……美味しいので?」

「もちろん!」


 よくは知らないけど、体にも良かったはず。


「…どう?」

「…美味しいです!」

「良かった!口に合わなかったらどうしようって思っちゃったよ!」


 まだ付き合いが浅いから、もしかしたら僕に気を遣って美味しいっていってくれてるかもしれないけど、それはそれで嬉しさもあるかな。


 枯山水は造ってもらってる途中だけど、鹿威しがあって縁側でまったりする。僕の理想的な日本庭園が実現するのはもうすぐだね!

 後は抹茶を飲んでみたいなぁ…。前々から興味はあったけど、茶道をやってた訳でも高級な懐石料理のお店に行った事もなかったから、本格的な抹茶を飲む機会は無かったんだ。


 抹茶オレとかなら飲んだことあるけど、苦ぁいお抹茶はのんだことがない。


「シヴィ様、こんな感じですか?」

「すごい!絵を見せたわけでもないのに、僕の拙い説明だけで完成させるなんて!完璧だよ!」

「ははっ!これは楽しいですね!地面に絵を描いてるような気持ちになりましたよ!」


 おお!確かにそう言う見方もできるのか!

 そうなると、自分でもやってみたくなって来たから不思議だなぁ。

 模型みたいなのを作って、ミニチュアサイズでやってみようかな。


「お疲れ様。これ、冷えてるお茶なんだけど…」

「ありがとうございます!…美味しいですね!私の知ってるお茶は紅茶なんですが…これは何と言うお茶なんですか?」

「緑茶…緑のお茶で緑茶って言うんだけど、これは紅茶と同じ茶葉なんだ」


 そう言うと、ユックは鼻の穴を膨らませてこっちに詰め寄って来た。

 やめて?怖いんです。


 僕の知ってる知識なんて殆どないようなモノだけど、それを教えてあげると一言『用ができたので失礼します』と言って走り去っていっちゃった。

 多分…いや、絶対に、研究室に向かったね。


「知識に対する探究がすごいね…」

「申し訳ありません」

「何でウィーが謝るのさ。それに、悪い事を研究してるわけじゃないんだから気にしないよ」


 僕が実際に会ったことのある研究者ってのは、元の世界も含めても彼しか知らないから何ともいえないけど、物語とかでも研究者は変人として扱われがちだし、だからこそ普通の人には気付きえない事を発見できるんだろうけど。

 何をもってして普通って言うかはわからないけどね?


 ああ、お茶が美味しい。


カコン…


 鹿威しの音が心地いい。心が安らぐよ。


「この空間は落ち着きますね…。確かに、ここで飲むなら紅茶やコーヒーではなく、緑茶が合うのも頷けます」

「ふふっ。でしょ?」


 僕のスローライフは、更なる発展を遂げた!


「うまうま」

「姫様!?」

「はへ!?」


 それも直ぐに壊された!無口系お姫様に!

 と言うか、何でここに?お城のお目付役の人たちはどうしたんだろ…。


 でも、ロイヤルなお姫様のお口にも緑茶が合って良かったよ。


「これ何?」

「緑茶って言う飲み物だよ」

「緑茶…。ねえメイド長」

「はい」

「私にもこれちょうだい」


 おお!ロイヤルが愛飲してくれるなんて!僕が商人なら飛び上がって喜んだね!

 残念なことに、僕は商人じゃないから飛び上がって喜んだりしないけど、それでも嬉しいことには変わりない。


「では、ルー様の侍女と商人に話を通しておきますね?」

「ん、よろしく。この庭は何?」


 ふっふっふ。枯山水の布教をする時が来たようですなぁ!

 日本の独特文化と発想力、庭園を作る上での水の重要性とその代用案を考えついた柔軟なものの見方を教えてしんぜよう!!


「へえ、あの線が川の流れを表してるんだ。そう言われると、確かにそう見えてくる」


 でしょ?京都で初めてみてから枯山水のファンなんですよ。なんて言うか…和を感じる?

 惜しむべくは、このお屋敷が日本の武家屋敷ではないって言う点かな?

 西洋屋敷に枯山水とかは不釣り合いな気もするけど、それは気にしないことにするよ。


 茶室も造って欲しいところなんだけど、構造はよく知らないし茶道のお作法も知らないからやらないけどね?

 茶器もないし茶筅もないし、知識もない中でやろうとするなんてのは、一種の侮辱に当たるって僕は思う。

 あくまでも、僕の個人的な意見ね?


「何でシヴィは不思議な事をいっぱい知ってるの?」

「え?あー…」


 どうしよう。なんて言おうかなぁ…。

 本で知ったとか答えたら、どんな本か聞かれそうだし。

 王城にある書庫は国1番の蔵書を誇るって聞いたことがあるから、本で知ったって言うのは悪手だね。


「僕の実家は商売をしててさ、よく行商の人とか配達の人がやってくるんだ。その土産話で聞いたことがあっただけだよ」


 と言うことにしておこう。あながち間違いじゃない所もあるし。


「へえ…。おかわりちょうだい」

「はい」


 お気に召したようで何よりでございます。


 そうそう、この世界には冷蔵庫が存在したんだよ!

 冷蔵庫というよりは氷室に近い形だけど、氷魔法を使える人が冷蔵庫に氷をセットして、風魔法を使える人が扇風機に魔力を込めて完成する冷蔵庫。持続期間は、氷が1週間で送風が1ヶ月。

 それが近くなる度に、再度魔法を使ってもらう必要は有るけど、便利なのには変わりないね。


 風魔法を使える人はそれなりにいるらしいけど、氷魔法は水魔法の派生で数が少ないらしいんだ。そうなると、必然的に費用も高くなるってわけで、一般庶民には普及しなかったんだって。


 冷蔵庫が一般にも普及出来るようなものが開発されたら、開発者は一生豪遊できるだろうね。

 2世代で使いきれない量のお金が手に入るだろうさ。


「そういえば、お付きの人は?」

「巻いた。この間教えてくれた方法で」

「うーんと…教えた時に言ったと思うけど、あれは自分の身を守る時に使って欲しい方法だったんだけど?」


 教えた事はなんて事のない物なんだけどね。

 手品師が良くやる手法で、自分にとって都合が良い場所に視線を集める…所謂ミスディレクションって呼ばれるもの。


 それの、少し、本当に少ぉ〜しアレンジが効いた方法の、1番簡単なやつを伝授したんだ。


「やはりこちらにいましたか」

「早かったね、ルミル」

「最近のお気に入りですから」


 彼女はルミシェリアル・ハーマンさんで、クール系お転婆姫様の近衛メイドを務める1人。

 近衛メイドって言うのは、身辺警護も担うメイドさんの役職名で、彼女が着てるのはメイド服の形をした鎧だとか…。


 なんて言うんだっけ…ビキニアーマー?いやいや違う!そんな破廉恥なものじゃないって!

 露出部は頭だけの、エロティシズムとは正反対と言える服装なんだ!

 あ、思い出した。ドレスアーマーの一種だって教えてくれたんだった。


「これでも飲んで落ち着いて」

「ありがとうございます。って、何ですか?これは……。薬草の搾り汁を薄めたみたいな飲み物に見えますけど」


 ある意味正解です。

 お茶にはいろんな良い作用があるから、あながち薬草といっても問題ないでしょう。僕が認めます。


「それはお茶だよ。紅茶と同じ、お茶」

「これが…ですか?」

「製法が違うからね」

「…では……美味しい」

「でしょ?」


 何で、私が見つけました!みたいなドヤ顔ができるのか知らないけど、2人の口にあってよかったよ。



 次回は8日の22時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ