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Hi daddy 少し痩せたかい?


 今日は家族と別れてから初めての面会日。なんだかこう言うと、僕が収容されてるみたい。


 違うからね?決して違うから。


「やあ息子よ。元気そうだな」

「やあダディー、僕は元気だよ」


 むむむ、少し痩せた気がするな。やっぱり3ヶ月間の営業停止処分が効いてるのかな?

 多分、お店は潰れないと思うし、食事とかだってそれまでに稼いでる分からすれば、余裕で買えるはず…。


「実はな、今まで仕事一筋でやってなかったことをやってみたんだ」

「何を?」

「テニスだ」


 ……ん?テニス?


「お父さんのおでこにあざがあるでしょ?あれ、初日に張り切りすぎて強く打ったボールが跳ね返って当たった痕なの」

「マミィもやってるの?」

「私はやってないわよ?私はお料理教室に通ってるの」


 なるほどね。

 だからダディは痩せてるし、マミィとブラザーは少し太ったような感じがするのか…。

 まあ、陰鬱としてるよりは良いのかも。健康にも良いし、趣味にもなるし…営業停止処分をうまく使って休暇を過ごしてるんだね。


「それにな、パパもママも、それぞれの場所で新しい人脈を築いて商売の輪を広げているんだぞ」

「俺は剣術道場に通ってるんだ。行商とか仕入れで街を出ることもあるかもしれないから、少しでも自衛のためにと思ってな!」


 お兄、剣術を習うのは良いけど、我が家の跡取りはお兄しか居ないんだよ?

 僕は継ぐことは出来ないから、お兄に何かあったらどうすんのさ…。

 弟としては街の外に行くことは反対です!


 と言うか、転んでもタダでは起きない強かなところ、僕は好きです。商人らしくて良い。

 さすがマイファミリー。略してマイファミ。

 なんか、いろんなのと間違えられそう。

 アメリカのマイアなんとかって所とか、コンビニとか、コンシューマーゲーム機とか…。

 それに、略すならさすファミかな?


「おおそうだ。手土産として話題のお菓子を持ってきてやったぞ」

「わあい、ありがとう」

「…全然喜んでないな」

「メイド副長の実家がそのお店なんだ。だから時々送られてくるのを分けてくれてるんだ」


 それに、ちょくちょくやってくるお姫様からも手土産として貰ってるんだ。ごめんね、ダディ。


 まあ、いくら食べても飽きないし、女性が多いから直ぐに食べきれちゃうんだけど。

 話題って言ってもそれなりに前だと思うし…。


「お、おおそうか」


 僕が情報に疎いと思ったの?そんなわけないでしょ…。

 此処には、若いお姉さんたちが15人も居るんだよ?貴女たちはクノイチですか?ってくらいにいろんな情報を耳にするけど?


 最近流行りの洋服店はどこどこで、こんな服が流行ってる…とか、誰と誰が付き合ってたけど浮気が発覚した…とか。

 お貴族様のあんな話やこんな話から、あそこの国のなんとかって街のどこどこ通りにはこんな猫が居るらしいよー…って話まで。


 情報屋を営めば、きっと国1番になれるね。

 まあそんなバカな話は置いといて…。


「それより、あと1ヶ月で再開するんでしょ?営業準備とかしなくて良いの?」

「もともと、日持ちしない物は営業停止になった後も捌けるまで売っていいと言われてたからな。在庫としては食料品の仕入れ程度だ」


 なるほど、確かに。だとしたら営業再開の1週間前に発注すれば余裕で間に合うのか。

 流行が変わってなければだけど。


「そういえば、何やら新しい玩具を開発したと聞いたぞ?」

「あー、うん。だけどそれは教えられないよ?」


 至極簡単な物だし、一目見れば作れちゃう。

 ルールも簡単だし。


「………」

「宰相様よりご伝言を承っております。『此処で見たり聞いたりした新たな物を、商売として使用する事を禁ずる。市場に出回ってから模倣するのなら構わない』と」


 それって要するに、僕が新しく商会を立ち上げることを許してくれてるって事なのかな?

 それとも、案を出す事を求められてるのかな?

 スキルの使用をしなければ良いってことかな?

 今度確認してもらお。


「う、うむ。分かっておりますよ」


 親父…商人が動揺しちゃあきまへんて…。


「まあ何にせよ、マイサンの元気な姿が見れただけでも良かった。何か欲しいものがあったら遠慮なくウチを頼るんだぞ?」

「ダディ…」

「もちろんお金は払ってもらうけどな。親しき仲にも礼儀あり…だ」

「…分かったよ。でも、王族御用達の商人さんから仕入れてくれるから、今後もウチは使わないと思うよ?」


 てっきり、息子と離れ離れになる代わりに不自由なくしてあげようってことかと思ったけど、全然そんなことなかったなぁ。

 そうだとしても、僕が実家を頼ることはなかったと思うけど。さっき言った理由で。


「うむ。それなら仕方なし。いつか無罪放免となるその日まで、自分の審美眼を鍛えておくんだ」

「いや、収容されてないよ?お供の人と一緒になら街にも行けるからね?」


 それに、無罪ってことはあり得ないから…。僕たちのやってたことは事実なんだし、それは知ってるでしょうに。


「またいつか来るぞ。元気でな」

「次来る時は手料理も持ってくるわね!」

「俺の剣技でバッタバッタと魔物を倒した土産話を持ってくるぞ!」

「いや、元気で居てくれれば良いからね?無理して変なことしないようにしてね?」


 特にお兄。

 剣技でバッタバッタするより、二号店を開いたと言う話の方が嬉しいのですけど?商家の御嫡男様。

 あと、マミィの手料理がダークマターじゃない事を祈るだけかなぁ…。

 作れる料理は作れるのに、作れない料理は全部ダークマターになっちゃう不思議技法だから。


「お父上もお母上も…何と言うか」

「変わってる?」

「………」

「我が家は変わってる家系なんだと思うよ。3年前に死んじゃったお爺も、僕が産まれる前に死んじゃったお婆も、変わり者だって話だし」


 と言うか、ダディとマミィが変わってるって言うぐらいなんだから、グランマとグランファがどれだけ変わってた人なのか想像もつかないや。


「ふう」


 すっかり冷めちゃった紅茶を飲んで口を潤す。


 冷めてても美味しいや。


「おかわりは?」

「お願い」

「わかりました」


 でもやっぱり熱いお茶の方が好きかな。


「何にせよ、ご家族がご健勝なのは喜ばしい事ですね」

「そうだね。みんなの両親とか親族とかはどうなの?」

「私の両親は遠い所にいますので、もう10年近く会ってません」


 うわあー、やっちゃったぁ。

 少し踏み込みすぎちゃった…。


「ごめんなさい…配慮に欠けてた」

「え?ああ、違いますよ!私の言い方が悪かったですね……。両親は生きてますよ?遠い所と言うのは他国って意味です」

「な、なんだぁ〜。よかったぁ…。遠い目をして少し悲しそうな顔してたから、てっきり亡くなってるのかと思っちゃったよ」


 ほんとに良かった!いや、寂しそうにしてたからそこは良くないんだけど、地雷を踏まなくて良かったよぉ。


 でも、他国に居るんだ…。


「私の両親は自由が好きな人で…要するに冒険者として活動してるんです」

「へぇ!冒険者!」


 僕も転生した時に一度は憧れた職業だよ!

 でも僕のスキルは『量産』だから、魔法も使えないし武技も無いから諦めたんだ。


 今更だけど、この世界のスキルはその人の人生に大きく影響するんだ。当たり前だけどね?

 例えば、『剣技』『槍技』『弓技』とかの武器のスキルは、冒険者とか騎士とか…武力が必要な仕事に役立つ。

 『火魔法』『水魔法』『風魔法』とかも、冒険者とかには役に立つけど、それ以外にも魔道具の作成とか研究者とかになる人も多い。


 基本的には今言ったスキルとかが多いけど、もちろんそれ以外のスキルもある。

 『料理』『大工』『手入れ師』とか。


 メイドさんたちに多いのは、意外にも武術系のスキルなんだって。その次が『奉仕』ってスキルらしい。

 このお屋敷に居るメイドさんは、奉仕と武術系が半々だった。ウィーは『小物技』ってスキルを持ってるんだって。

 小物…要するに、簪とかネックレスとか…更にはヘアゴムとかを武器にして戦うスキルなんだって。護衛にはピッタリですねって言ってたけど、そんな状況には陥ってほしく無いや。


 それと、別にスキルを持ってなくても剣は使えるし料理もできる。スキルってのは言わば、補助的なものなんだろうなぁ。

 スキルを使えば、威力が増したり仕上がりが綺麗だったりって言う恩恵があるらしい。逆に言えばそれだけって事。


 だから僕のスキルは異質なんだよね。他と比べるとよくよく分かる。

 まあ、国王様の『統治』ってスキルも異質なんだけど、こっちは代々継がれていくらしい。

 世襲制なのかな?って思ったけど、そうじゃなくて…教会で儀式を行えば次代に継がれるんだとさ。


 話がそれちゃったなぁ。


「よく両親から手紙が届くのですが、手紙というより生存確認みたいなもので…母のキスマークと父の乱雑な元気か?の一文字だけですが。こちらからの返書は、居場所がコロコロ変わる為に意味がなかったのでやめました」


 お、おう。なんかすごいご家族だなぁ。うちの家族よりもすごい。

 放任主義なのかな?それで立派に育ってるんだから、何も言えないや。

 僕は誰目線でモノを言ってるんだろう。


「そうなんだ…。じゃあ…僕のことは弟と思ってくれていいよ?プライベートな時は、僕もウィーお姉ちゃんって呼ぶことにするからさ」

「……んぉ」


 絶対に女性がしちゃいけない顔してる。女性が出しちゃいけない声出してる。


「んん…。流石にそれは恐れ多いです」

「お姉ちゃん?」


 ふふふっ。この角度、この声色、この表情、完璧な年上キラーだろう?


「私の人生22年はこの為にあったのね。さらば、私の寿命。初めまして、神様…いえ、天使様」

「あっ」


 僕の笑顔は金貨100枚って、ファミリーによく言われてたけど…まさか気絶するとは思わなかったよ。

 これは禁止にしよう。禁忌の技だった。

 多分これはスキルだね。間違いない。うん。


 取り敢えず、誰か呼んで頭打ってないか調べてもらわなきゃ。

 むしろ、頭打って正気に戻ってくれてれば良いんだけど。


 未婚の女性が傷物になったら、その責任は僕には負いきれないけど…事故だし、僕以外は誰も見てないからセーフって事で。


「大きな物音がしましたが平気ですか!?」

「あ、メイさん。うん平気…では無いね。ウィーが気絶しちゃって頭を打ったかもしれないから、お医者さんを呼んでもらえる?」

「わ、わかりました」


 このお屋敷にもお医者さんを雇ってもらおうかなぁ。緊急の時になかなか捕まらなかったとしたら、考えたく無い事態に陥るかもしれないし…。

 それに、お医者さんの大半が、学者や研究者としての側面も持ってるらしいから、此処に住んでくれるならばそれのお手伝いもできるはず。


 許可は取らなくちゃいけないだろうけど、研究に使う貴重な材料の『量産』をすれば、この世界の医療技術や知識の発展に繋がると思う。

 その為ならこの力を使っても良いんじゃ無いのかな?



 次回は、6日の23時です。

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